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『葬送のフリーレン』12巻の破壊力がすごすぎて頭を抱えている

今さらながら、『葬送のフリーレン』を読んだ。最新刊12巻(2024年3月時点)まで読んだ。そしてタイトルの通りである。

素晴らしい作品に出会って、頭を抱えた経験はあるだろうか。私は何度かある。最近では映画『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』を観てそうなった。あの映画は、人の心をどろりとかき乱しては、行き場のない思いを植え付けてくるとんでもねぇ作品だった。

一方、『葬送のフリーレン』12巻は大谷翔平の163.2キロなみの剛速球で、僕の心のやわらかいところにダイレクトアタックしてきた。

この気持ちをどうすればよい。私は、魔の月曜日が顔を出しつつあるこんな時間にパソコンに向かっている。一度頭を抱えてしまったからには、気持ちの整理をつけないと眠れない。

スマホを見れば、ポケモンスリープのカビゴンが私が眠りにつくのを待っている。でも、ごめん。今夜は眠れそうにありません。眠らないと、明日の仕事がつらいことは分かっているけれど、でも、今は知らないふりをします。

本noteは、今さらながら『葬送のフリーレン』を読み、その破壊力に語彙を失い、ブツブツつぶやきながら頭を抱えている様子を綴った、どうしようもない文章である。

核心にせまるネタバレはないので、少しでも多くの『葬送のフリーレン』未読の方に届いてほしい(いまこのタイミングで、この人気作を未読の人がいるのかどうかは分からないが……)。そして、同じく頭を抱えて、眠れない夜を過ごす人が増えればいいと思う。


「知る」をつきつめた作品

何の気もなくふらりと寄った「TSUTAYA」の、最近ではめっきり絶命危惧種となっているマンガレンタルを利用して、『葬送のフリーレン』を10巻まで借りて読んだ。つい2日前のことである。

キャッチコピーは「今は亡き勇者たちに捧ぐ“後日譚”ファンタジー」。魔王を倒した偉大な勇者・ヒンメルの仲間のひとり、長命なエルフ族で魔法使いでもあるフリーレンが、魔王討伐後、そして勇者の死後、かつての旅を辿りながら新たな冒険を紡いでいくファンタジー作品である。

X(旧twitter)からのいくつか前知識を得ていたが、読んでみるとイメージと違う部分が結構あった。フリーレンは「勇者ヒンメルならそうした」というセリフをそこまで言わないし(1巻につき1回くらいは言うのかと思っていた)、その代わり思いのほか、宝箱そっくりの魔物・ミミックに頭をつっこむし(ものすごい頻度でつっこんでいる)、「断頭台のアウラ」は”魔力量”の説明を兼ねた序盤のチュートリアル的なキャラクターで、あっけなく退場していた(あっけなさすぎてびっくりした)。

10巻まで読んだ感想は、「知る」ことをつきつめた作品だということ。

例えば主人公・フリーレンは、自分に芽生えた感情を知りたいから、人間のことを、人間の想いまで含めて知ろうとしている。それだけではなく、魔族を倒すために、討伐対象として魔族そのものを徹底的に知ろうともする。

逆に魔族は人間を欺き殺すために人間を知ろうとする。一方で、共存の道を探すために(たとえそれがかなわないとしても)、お互いを知ろうとする者もいる。

「知る」ということはとても大切なことだと思う。知識をためることで見える世界は広がるし、人とコミュニケーションをとるときだって、相手のことを知ろうとすれば、自分にはない視点から物事を考えるきっかけを得るときもある。

そんな「知る」ことにフォーカスを当てて、様々な人々の考えや想いを、フリーレンの旅を通して紐解いていく。物語の世界はファンタジーだし、私たちは魔法がつかえないけれども、その根底にある考え方は共感するところがたくさんある。そうやって、フリーレンが様々な人とつながっていく様子が純粋に胸が刺さる。とても良い作品だと思っている。

そう、とてもいい作品だと今も思っているのだが、12巻がすべてをもっていった。

12巻の破壊力がやばい

そもそも、なぜ2日前に10巻で止まったかというと、TSUTAYAで10冊借りるとお得だったからである。そして今日、自分のご褒美のために立ち寄った本屋さんで11巻と12巻を購入した。10巻の続きがあまりにも気になるので、後日1~10巻を買うつもりで、続刊を買った次第である。

ただ、購入したときに気になったことがひとつだけあった。それは12巻の帯に書かれていた「今は亡き勇者たちの過去と生き様を物語る”前日譚”ファンタジー」という一文である。私の知っているキャッチコピーと違う。

あらかじめ想像していたのは、「過去編が入るのかな〜」ということくらいだ。寝る前の布団のお供に、何の気なしに読み始めた11巻。ひとつの戦いが終わり、次の旅路へ……。だが、カラーページで綴られた次の旅路の冒頭が、とんでもねぇものだった。

上記にも記載したように、「知る」ことがこの漫画のテーマだと思っているが、ひとつ問題点がある。それは「過去」のことを知ろうとしたときに、想い出や記録の中から見出していくしかないことだ。

実際に、この作品には回想シーンが多々描かれており、記憶を辿って新たな発見をしたり、今の行動につなげていく。それを10巻もかけてやってきたのに、次の旅路がこんな展開だとは。そして12巻まるまるそれを描いていくのは、ずるすぎやしないか。

そして、その旅路を終わらせるために導き出した答えが、それがまた時をかけるすばらしいものであり……。これを見るために本作を読んできたのではないかと思う感すらある。すごい。「勇者ヒンメルならそうする」のか……。

そして怒涛の巻末の展開である。君の気持ちは薄々わかってはいたが、なんなんだ。ここまでこんなに淡々と進んできたのに、直接的すぎるぜその願望は(いや、分かりやすくていいけれども)。

ここでそんな想いを改めて知ってしまったら、私はどうすればよい。どうしようもない。だってこれ過去のことだもん。どんなに気持ちを理解しても、あなたの視点でそんな想いを知ってしまっても、もう、過去のことでしかないのが、とてもつらい。

「知る」ことで、今度はこんな想いをしなきゃいけないなんて。そんなこんなで、頭を抱えている次第である。

とにかく12巻の破壊力がやばい(何度でも言っていくスタイル)

後半にかけて、ネタバレ回避のためにめちゃくちゃぼかした表現をしているが、既読の方たちはどこかでそっと、頷いてくれるのではないか。

そして、未読の方たちは、まじで12巻まで絶対に読んでほしい。指切りげんまんして、読んでくれるまで絶対にはなさない。そんなホラーめいた気持ちを抱いてしまうほどに、破壊力がすごかった。

ひとまず明日、1巻から10巻まで全部購入してもう1回読みなおして、改めて12巻の威力を享受したいと思う。こうして、私のもう本が入らない本棚に、新たな漫画が増えていくのである。

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