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卵から育てたニワトリがラーメンの具材になるまで① 【0からラーメン】

ラーメンと言えば、出汁が命ですね。

醤油ラーメンにせよ、豚骨ラーメンにせよ、それぞれ麺の太さなど細やかな相違点はあれど一番の大きな違いは出汁にある、そう思いませんか?

「世界で一番ウマいラーメン屋を開こう!」

そんなロマンのある夢の為に日夜寸胴の前で汗水たらして究極のスープを追求し続ける……思わず感涙しそうなエピソードではないですか。

スープ作りにおいて出汁が重要なのは言うまでもありません。

要するに出汁は作り手の努力と情熱そのものです。

そんなことも知らずに「出汁のないラーメン」を平然と口にするのは世の中のラーメン職人やラーメンオタクに対する冒涜以外の何物でもないでしょう。

そのようなものは、お湯にどんぶらこ中華麺とでも呼んでおけばいいのです。

……さて、前置きが長くなりましたが、ここでは、私達 FR0M SCRATCH が企画しているラーメン作りの一環として、卵から孵したニワトリが出汁の具材になるまでの過程を三回に分けて紹介していきたいと思います。

(FR0M SCRATCHとは何か?をこちらの記事で紹介していますので、ぜひ見てみてくださいね。)

卵を孵化させる

まず、ニワトリの卵を孵します。

「卵ってどこで買うの?スーパー?コンビニ?」

違うんですねこれが。

ウズラの卵であれば、スーパーに売っているものでも低確率で孵化するそうなのですが、ニワトリに関しては市販の卵は殆どが無精卵です。

また、有精卵であっても食用のものは消毒の過程で孵化率がかなり下がるそうなので、孵す用途には適しません。

なので、孵化用の有精卵を生産、もしくは販売している場所から仕入れる必要があるのです。

今回、有精卵を入手した過程は、下のリンクで詳しく説明していますので、ご興味のある方はぜひお読みください。

話を戻しましょう。

鳥類の卵は基本的に適度な温度と湿度に数週間ほど置かれることで孵化します。

ニワトリの場合、温度は38℃湿度50-70%を三週間維持することが望ましいみたいですね。

通常は親鳥のメスに卵をあたためてもらうのですが、あいにく成鳥がいないため、今回は機械的に温度と湿度を調整する「孵卵器」を用いました。

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孵卵器の大まかな作りとしては、蓋の黒い部分に内部ヒーターの温度調節ボタンがついていて(画像上)、卵を置く場所の中央に水受け皿があり(画像下)、蓋の内部についたファンが下向きに送風することで水受け皿から蒸発した水が装置内部に広がるように出来ています。

この孵卵器の場合、基本的に水を補充すればそれで問題ないですが、画像下のように、内部に別売りの温湿度計を入れることで常に孵化に最適な状態を維持できているか確認できると尚いいでしょう。

一通りの準備が終わったら、卵を入れていきます。

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出汁に最低限必要なニワトリの羽数に加え、卵が孵化しなかったり、成長途中でヒヨコが死んでしまう可能性を考慮して、合計5つの有精卵を孵すことに決めました。

卵を入れ終わったら、水受け皿に水を張って、蓋をして、装置付属のプラグをコンセントに差し込めば孵卵器がオンになりますので、あとは温度を38℃に設定して三週間あたためます。

ここで忘れてはならないのが、定期的に卵を少し回転させる「転卵」という作業で、これを怠ると胚が死んだり、ヒヨコが奇形になる可能性が高まります。

本来なら一時間に一回、卵を90℃縦軸に沿って転卵するのが望ましいそうですが、年中無休の自宅警備員でもない限り中々厳しい作業内容ですよね。

ですので、一日の中で起床時(午前7時)、帰宅時(午後6-7時)、そして就寝前(午前1時)の計三回転卵を行いました。

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こんな感じで、卵を縦軸に90度回転させたときに番号を書いておくと転卵したのが分かるので楽ですよ。

そんなこんなで、孵卵器に卵を入れて三週間が経過し……

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ついに、ついにヒヨコが誕生しました!

モコモコでフワフワなイメージとは違い、生まれたてのヒナは羽毛がぬれていて、意外にスマートな顔つきをしているのが分かると思います。

それに、よく見ると嘴の付け根に小さなトサカがついていて、やはりニワトリの子はニワトリなんだという事を実感させてくれます。

一羽が卵から孵ると他のヒヨコたちもそれを察知するのか、次々と殻を割って出てくるのですが、その様子はまるでボコボコはじけるポップコーンのようで見ていて飽きません。

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結果的に、5つあった卵の内、孵ったのは4羽でした。

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孵化して一日経つと、濡れていた羽毛がすっかり乾きおなじみのヒヨコの姿に。

孵卵器の中は窮屈なので、30㎝四方の段ボール箱にキッチンペーパーを敷き、後述のヒヨコ電球を置いた飼育ケースにお引っ越しさせました。

ヒヨコの成長過程

卵が孵ったら、次はヒヨコたちがすくすくと育つ環境を整えましょう。

ヒヨコたちは成長がとても早いです。

特に、今回育てるブロイラーという品種は通常のニワトリに比べ短期間でより多くの肉が取れる様に改良されているので、二か月ほどで食用サイズにまで達してしまうのです。

多くの肉を付けるということは、多くのエネルギーを外部から取り入れることを意味しますから、エサを常に切らさないように与え続なければなりません。

ホームセンターなどで、ヒヨコの餌なる商品が売っているので、それを使うようにします。

また、沢山エサを摂取するのと同時に、それらを飲み込んだり、効率よく吸収するのに水分も欠かせませんので、そちらも常に新鮮なものを用意しましょう。

一見とてもパワフルな印象を受けるヒヨコたちの成長過程ですが、繊細な面も持ち合わせています。

彼らは、生まれて一か月前後は寒さにとても弱いのです。

そんなバイタルでもありデリケートでもあるヒヨコちゃん達の為に、飼育ケースにはヒヨコ電球と呼ばれるヒーターを入れてあげるとよいでしょう。

さらに、晩秋など冬が近い時期には、私達のように室内で飼育するのが無難だと思います。

飼育ケースは密閉性がありつつも内部スペースに余裕があるものを使うと、ヒヨコたちは快適な温度の場所に勝手に移動してくれるので楽ですね。

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誕生三日目のヒヨコたちと、段ボール箱の中に、ヒヨコ電球(左)、エサ入れ(中央)、水入れ(右)を入れたものを撮ってみました。

床に転がる茶色い塊はフンで、よく食べ、よく飲むヒヨコたちは、摂取したものが出るスピードも目まぐるしいです。

日本の大食い代表ギャル曽〇は一日六回ほどトイレを使っていたと聞いたことがありますが、食べ盛りのヒナたちの排便量と回数はより凄まじく、一日で文字通り床が糞塊で埋め尽くされますので、掃除もぬかりなく行うのが定石でしょう。

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生後一週間ちょいの段階ですが、三日目よりも顔つきがシャープになったり、少しづつ大人の羽が生えてきてるのが分かりますか?

足も体に比べ格段に太くなっていて、その様子はさながらティラノサウルスのようです。

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生後二週間と少しでさらに急成長しましたね。

写真右のヒヨコがヒヨコ電球と同じか少し大きいサイズになっていますが、生後三日時点のものと見比べるとその成長スピードが伝わるのではないでしょうか。

お分かりになると思いますが、彼らの成長と共に飼育容器もより余裕のあるものに変えました。

この辺りまで来ると、強い脚力で床材をボロボロに引き裂いてしまうことに加え、盲腸便という液状の糞を噴出するようになります。

穀物メインの餌を食べるニワトリの糞は通常はほぼ無臭で、臭っても穀物そのものの事が多いですが、この盲腸便は納豆に生魚をぶち込んだような凶悪な生臭さを放ち、一時期飼育部屋とその周辺にまで臭いが染みついて取れなくなりました。

長くなりましたので、今回はここで切り上げようと思います。

しかし、最後に一つ言わせてもらいたいのは、ラーメンの具材の為のニワトリ飼育は初期段階で想像以上に大変だったという事です。

食用であろうとそうでなかろうと、ニワトリの飼育に興味のある方は覚悟してかかってくださいね。

実は、ニワトリの孵化から具材になるまでの過程はすでに動画としてYouTubeに上がっていますので、ネタバレ上等な方は宜しければどうぞ。


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