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【地方紹介9】フランシュ・コンテ地方

<地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:フランシュ・コンテ地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
フランシュ・コンテ地方(Franche-Comté)/ブザンソン(Besançon)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地方(Bourgogne-Franche-Comté)/ディジョン(Dijon)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●ドゥー県(Doubs /25)県庁所在地:ブザンソン(Besançon)
●オート・ソーヌ県(Haute-Saône /70)県庁所在地:ヴズール(Vesoul)
●ジュラ県(Jura /39)県庁所在地:ロン・ル・ソーニエ(Lons-le-Saunier)
●テリトワール・ドゥ・ベルフォール県(Territoire de Belfort /90)県庁所在地:ベルフォール(Belfort)
 
 
★地方概要★
フランシュ・コンテ地方は、北にロレーヌ(一部アルザスとシャンパーニュ)、西にブルゴーニュ、南にローヌ・アルプと接するフランス東端の地方で、東はスイスとの国境となります。地形は大きく2つに分類され、主に西部は深い森と広大な草原の緑が広がり、美しい清流の数々がこの地方を流れます。しかし、スイス国境などでは、1500m級の山々が連なります。
 
北部にはアルザスに続くヴォージュ山脈、南部にはジュラ山脈がそびえ、のどかな田舎の雰囲気が残ります。しかし、歴史的にフランスの東端を担ってきたこの地方は、古くから軍事的に重要な防衛線を成し、なかでも、中心都市ブザンソンにある要塞は見事な姿のまま残っています。

高台からドゥー川を望むブザンソンの要塞

この地方の牛乳で作るコンテチーズやヴァン・ジョーヌや藁ワインなど、ユニークな名産品を生み出し、スイス西部にも近いため、時計産業も盛んです
 
フランシュ・コンテ(Franche-Comte)とは、「自由な伯爵領」という意味で、どこの支配下にもおかれていない自由な地であったことが、この地方名の由来となっています。しかし、実際には中世の時代より、ブルゴーニュ公国とドイツの諸連邦の間で貴族が行き来し、神聖ローマ帝国、ハプスブルク家の治下に置かれることもありましたが、1678年にオランダを巡って、ハプスブルク家と対立していたフランスとの戦いの結果、フランス領に併合されます。
 
その後も、フランシュ・コンテの人々は自由や独立に対しての思い入れが強く、フランス革命以降も、たびたび支配者への反骨精神を見せることがありました。隣国と接するこの地方の防衛のためにルイ14世の時代には、要塞建築士ヴォーバンが多くの要塞を築き、現在は世界遺産にも登録されています。
 
 
★町や村★
 
ドゥー川に囲まれ、フランシュ・コンテ地方の中央に位置するブザンソンと、ブルゴーニュ地方のほど近くに位置するドールが中心となります。
 
川に囲まれたブザンソンは、高台に雄々しくヴォーバンの要塞が佇み、湾曲したドゥー川の内側に16~18世紀のお屋敷や宮殿が残っている美しい旧市街が広がります。旧市街の中心、9月8日広場が町の中心で、カフェやレストランでにぎわっています。メイン・ストリートのグランド・リュを進むと、神聖ローマ帝国の大法官であったグランヴェルの宮殿、ローマ時代の遺構であるノワール門、次いでサン・ジャン大聖堂へと歴史的な建造物が続きます。道なりに坂道を上るとヴォーバン要塞(シタデル)に辿り着きます。17世紀に作られた要塞はちょうどブザンソンの町の付け根のようで、周囲を川に囲まれ、侵入できる陸地にはこの要塞があるわけですから、強固な軍事都市であったと感じられるでしょう。

ドゥー川に囲まれたブザンソンの旧市街

また天然痘を予防する種痘法(ワクチン)を発明し、細菌学の父と呼ばれるルイ・パストゥールゆかりの地ドールやアルボワの町もフランシュ・コンテ地方に属します。町中にはパストゥール記念館が建てられています。町の周囲にはブドウ畑が広がりますが、パストゥールもブドウの実を使って、発酵の実験を行ったといいます。はサン・ジュスト教会やリベルテ広場を中心にのどかな街並みが広がっています。

のどかなフランスの田舎町の雰囲気があるアルボワ

アスク・エ・スナンにはブザンソンから気軽に訪ねられる世界遺産の王立製塩所があります。内陸に位置するフランシュ・コンテでなぜ製塩所が、と思うところですが、この地は太古の昔は海であったため、地下には岩塩鉱脈が形成されています。人が生きていくために必須の塩は、8世紀ごろから鉱脈が通っていたサラン・レ・バンという町で製塩がはじめられたといいます。アルク・エ・スナンに製塩所が作られたのは18世紀になってから。ルイ15世治下の時代です。アルク・エ・スナンの地下には鉱脈がなかったため、約21km離れたサラン・レ・バンから塩水をパイプで引き込み、製塩を行いました。

美しい佇まいノアルク・エ・スナン王立製塩所

設計を命じられた建築家、クロード・ニコラ・ルドゥーは、この製塩所を軸に、教会、住宅、共同浴場、娯楽施設なども建てての理想都市計画を建てますが、パイプの故障やボイラーの煙害などの問題が頻発。1857年には鉄道が敷かれ、材料の輸送によるメリットがありそうですが、鉄道の普及により、岩塩ではなく、海水から作られる良質な塩が流通することになり、1895年に閉鎖されます。しかしながら、製塩所とは思えないほど美しく立派な建物群は、その後修復され、現在では博物館として生まれ変わっています。
 
★名産品と郷土料理★
 
広大な大地、豊かな自然と森が広がるフランシュ・コンテ地方では、チーズ産業が盛んで、フランスでも人気のあるチーズが多く作られます。また、ワインも生産していますが、サヴァニャンというブドウから作り、長期熟成させるヴァン・ジョーヌ(黄ワイン)や、甘口の藁ワインなどは、他の地域では見られないフランシュ・コンテ地方の特産です。ヴァン・ジョーヌを使った料理なども現地で味わいたいものです。

名産のヴァン・ジョーヌ

ヴァン・ジョーヌは黄色いワインという意味で、シェリー酒に似た独特の風味がありますが、酒精強化ワインではありません。サヴァニャンという白ブドウからワインを作り、最低6年以上の熟成、クラヴランという独特のボトルにいれられて出荷されます。このボトルは通常の750mlのボトルに比べ、一回り小さく、620mlのボトルです。通常の白ワインといは一線を画する独特の特徴を持つフランシュ・コンテの辛口白ワイン。地方での料理にも利用されます。
 
藁ワインは、その名の通り、収穫したブドウを最低6週間、藁の上で、陰干しし、糖度を高めた後に醸造するという行程をとる甘口ワイン。白ブドウでも、黒ブドウでも生産されています。ローヌ地方のエルミタージュでも極少数の藁ワインが作られますが、ほとんどはこのフランシュ・コンテ地方で生産されます。

独特の風味を持つ甘口の藁ワイン

地方内では、アルボワがジュラワインの中心地となっていて、通常のジュラ・ワインはもちろん、独特の風味を持つヴァン・ジョーヌや藁ワインなど、この地方の名産ワインが作られており、町中にはジュラ・ワイン博物館もあります。
 
チーズでは、フランス国内のみならず、世界的に有名なチーズが2つあります。一つ目はコンテ(Comte)。フランシュ・コンテ地方を代表する、牛乳から作られるセミ・ハードタイプのチーズ。熟成することで味わいに深みがでてきますが、チーズに〇〇か月熟成などが記載されて、様々な種類で販売されており、フランシュ・コンテ地方のみならず、フランス全土で非常に高い人気を博するチーズです。

世界的に有名なセミハード・タイプのチーズ「コンテ」

フランスではAOC(原産地呼称統制法)認定チーズの中で最も生産量が多く、コクがあり、ほくほくした口当たりで非常に食べやすいチーズです。様々な料理にも疲れますが、そのまま食べても十分に楽しめるチーズです。
 
そして、もう一つは、モン・ドール(Mont d'or)。世界的に知られる期間限定チーズです。牛乳から作られるウォッシュ・タイプのチーズで、モン・ドールとは「金の山」を意味します。フランシュ・コンテ地方のスイス国境近くにある山の名前からつけれています。表面は少し硬いのですが、内部は水分が多く、ペースト状のとろとろのチーズになっています。 円筒形のエピセアの木の箱にいれて出荷されますが、その箱にいれたまま中をスプーンですくって食べます。

冬の味覚としてチーズ・ファンに愛される「モン・ドール」

生産時期が8月15日~3月15日、販売期間は9月10日~5月10日までと限定されていますので、期間限定のチーズとして知られています。濃厚なミルクの味にほのかな木の香りを感じられ、チーズ好きの方々に非常に高い人気があるチーズです。

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