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【地方紹介4】ブルゴーニュ地方

<地方データ>
■【francerでの地方名呼称】:ブルゴーニュ地方
■【旧地方圏区分/地方庁所在地】:
ブルゴーニュ地方(Bourgogne)/ディジョン(Dijon)
■【現地方圏区分/地方庁所在地】:
ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ地方(Bourgogne-Franche-Comté)
   /ディジョン(Dijon)
■【旧地方圏区分における所属県と県庁所在地】
●コート・ドール県(Côte d’Or /21)県庁所在地:ディジョン(Dijon)
●ニエーヴル県(Nièvre /58)県庁所在地:ヌヴェール(Nevers)
●ソーヌ・エ・ロワール県(Saône-et-Loire /71)県庁所在地:マコン(Mâcon)
●ヨンヌ県(Yonne/89)県庁所在地:オーセール(Auxerre)
 
★地方概要★
ブルゴーニュはフランスの数ある地方の中でも、最も名前が知られている地方の一つかと思います。その理由はいくつもあるでしょうが、やはりブルゴーニュ・ワインの知名度が非常に高いということは否めません。ブルゴーニュ・ワインで有名なブルゴーニュ地方。しかし、それ以外で言えば、一般的にブルゴーニュ地方は意外と知られていません。しかし、ブルゴーニュ地方はワイン以外にも魅力に満ちた地方です。ワインが好きならば言うまでもなく、フランス好きな方には是非とも訪れてほしい地方です。
 
ブルゴーニュ地方は、パリから南東に位置します。TGVに乗ってしばらく走ると車窓にはなだらかな丘陵地帯が広がり、ディジョンへと向かいます。このディジョンの南から南北300kmに渡って続くのが、ブルゴーニュのブドウ畑。世界的に有名な多数のワインが生み出されています。また、ワインの生産地でいうと離れ小島のような位置ですが、白ワインで有名なシャブリやオーセールなどもブルゴーニュ地方のワインです。

ブドウ畑に囲まれたシャブリ村

さて、ワインでワクワクしてしまうブルゴーニュ地方ですが、パリのエッフェル塔やモン・サン・ミッシェルの修道院といったようなインパクトのある訪問地がないのです。だからといって、ブルゴーニュ地方は見どころがない地方というわけではありません。むしろブルゴーニュは多様な観光要素が多くあり、色々な楽しみ方ができる地方といえるでしょう。この地方の原型は当時のブルゴーニュ公国、その中心がディジョンでした。現在でもブルゴーニュ地方はディジョンが中心となっていますが、それでも人口は15万人ほどの中規模都市です。つまり、ブルゴーニュ地方には、そもそも大都市といえるような町が存在しないのです。これに続くのがボーヌ。ワイン好きな方にはお馴染の町ですが、ブルゴーニュ・ワイン街道の中心に位置する町です。

この2つだけですと、ワインとちょっとした町の観光だけになってしまうのですが、ブルゴーニュの魅力はまだまだこれからです。西の方に目を向ければ、フランスの代表的巡礼地であるヴェズレーや素晴らしいロマネスク教会が残るオータン、そして修道院運動の遺産もブルゴーニュの大切な観光要素。910年にはクリュニー修道院が、1098年には、シトー派修道会が創設され、中世のブルゴーニュは修道院運動の中枢となります。その中で、フォントネー修道院が特に有名です。そして最後に、大都市がないブルゴーニュ地方は、言いかえればイメージ通りのフランスの田舎に出会える地方でもあります。フランスの美しい村に登録された村も多く、いくつもの川沿いに佇む絵になる村が点在しています。そして、その昔は主要な交通路であった川と川を結ぶ運河も点在しており、牧歌的なフランスの田舎が感じられます。

フォントネー修道院の回廊

★町や村★
 
前述の通り、大都市があるわけではないブルゴーニュ地方ですが、やはり地方の中心となるのは、ディジョン。東西南北の交通の要所で、地方庁所在地ともなっています。
ディジョンは、11世紀初頭からブルゴーニュ公国の首都として栄えた街であり、現在でも残るブルゴーニュ公宮殿は、当時の栄華を今に伝える立派な建物です。その建築的な価値は高く、現在では、美術館と市庁舎として利用されています。メイン・ストリートのリベルテ通りは歩行者天国地区となっており、多くの商店が立ち並び大変にぎやかです。旧市街には、ブルゴーニュ公宮殿のほか、ノートル・ダム教会やサン・ベニーニュ大聖堂などの歴史を感じさせる建造物も多く残っています。また、近年では、町のはずれに、シテ・ドゥ・ラ・ガストロノミーという食をテーマにした商業施設がオープンし、ワインはもちろん、ブルゴーニュ地方の食に関する展示やショップが集まっています。

ディジョン、ブルゴーニュ公宮殿前は開けた広場となっています。

ディジョンの南に位置するのが、ブルゴーニュ・ワイン街道の中心地であるボーヌ。ブルゴーニュ観光においては、ディジョンの次に名前が挙がる街です。街の規模はディジョンに比べさらに小さくなりますが、ブルゴーニュ・ワインによって、その知名度は世界的に知られている街と言えるでしょう。ディジョンからボーヌへの一般道を走るとマルサネ、フィサンの村を越え、ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニーという世界有数のワインを生み出す葡萄畑の風景に出会えます。それはブルゴーニュを代表する景色の一つ、2015年にはブルゴーニュの葡萄畑はシャンパーニュのそれとともに、ユネスコの世界遺産にも登録されました。さらに南には、ヴォーヌ・ロマネやピュリニー・モンラッシェなど、垂涎のワインを生み出すブドウ畑が続きます。ブルゴーニュ最高峰のワイン作るのが、この地域。ワインの世界では、この地域をコート・ドール(Cote d’or)、つまりは「黄金の丘」と呼び、ボーヌはその中心にあたります。ボーヌよりも北をコート・ド・ニュイ地区、南をコート・ド・ボーヌ地区と呼びます。

どこまでも続くブドウ畑は非常にフランス的な風景

ボーヌの代名詞ともいうべきものがオテル・デューですが、この「神の館」という名の施療院も、ワインの町ボーヌにふさわしく、ワインと深いかかわりをもっています。施療院自身が57ヘクタールの広大なぶどう畑を所有しており、そこで作られたワインが毎年11月の第3日曜日に世界中のワイン業者が集まる中でオークションにかけられます。通りに面したゴシック様式の正面外観はどちらかといえば重々しさと冷ややかさをもった雰囲気があります。ところが、入場料を払ってひとたび中庭に足を踏み入れるやいなや、不意に建物の外観からはおよそ想像することができない、華麗で優美な情景に出合うことになります。
急な傾斜でそそりたつような屋根前面が、赤、黄、緑、オレンジの色付けをした瓦で幾何学的な鉤形模様を描いていて、目にも鮮やかに大きな驚きとともに飛び込んできます。雰囲気の良い旧市街は散策にも適しており、是非ゆっくりと訪ねていただきたい町の一つです。

屋根の模様が鮮やかなボーヌのシンボル、オテル・デュー

牧歌的なイメージのブルゴーニュ地方には、都市部ではなく、美しい村々も数多く点在していますが、その中でもヴェズレーは人気のある村となるでしょう。コート・ドールのブドウ畑は確かにブルゴーニュらしい絶景ですが、ブドウ畑の風景だけでいえば、それはブルゴーニュ以外でも見られます。では、ブルゴーニュらしい風景とは何か、それをご覧いただけるのがヴェズレーだと、私は思うのです。
 
ブルゴーニュらしい風景とは何か?何が見られるのか?モン・サン・ミッシェルのような歴史的遺産があるわけではありません。エッフェル塔のようなシンボル的な建造物があるわけでもありません。ブルゴーニュを代表する一面の葡萄畑もここでは見られません。ここには何もないのです。何もない場所、そこにあるのはヴェズレーの村。ただ、それだけなのに、「これぞブルゴーニュ!私たちが思っていたブルゴーニュ!やっと出会えた!この景色を探していた!」そう思わせてくれるのがヴェズレーです。
 
ちょっとクネクネした田舎道。周囲には小高い丘が連なり、草をはむ牛が自然と放牧されていて、小さな小さな村が点々と連なります。心洗われるような田舎風景を楽しんでいると、突然、小高い丘に寝そべる様に家々が連なり、そのてっぺんに荘厳な大聖堂を有する村が姿を現します。これがヴェズレー。その佇まいは緑の中に浮かぶ聖地として十分な貫禄があります。

丘上に佇む巡礼の村、ヴェズレーは世界遺産に登録されている

特に素晴らしいロマネスク様式の彫刻が残る大聖堂はとてもよく知られていて、世界遺産に登録されています。マグダラのマリアを祭っているこの教会の見ごたえも相当のものがありますが、教会に向かって右手(南側)のテラスからはブルゴーニュの丘陵地帯が見下ろせます。緑の小さな丘が折り重なり、小さな村々が点在している。この場所でいつまでもその景色を見ていたいと思わせるような風景です。
 

★名産品と郷土料理★
 
ブルゴーニュの名産品と言えば、ワインは言うまでもありません。屈指の知名度を誇る辛口白ワインであるシャブリ、世界で最も高級なワインの一つに数えられるロマネ・コンティ、白ワインの王様と称されるモンラッシェ、すべてブルゴーニュ地方で産出されています。もちろん、超高級なワインだけではなく、お手頃なワインまで幅広く生産されていますので、是非本場でも味わいたいです。

ブルゴーニュに来たなら、ワインは何度でも試したい

また、食前酒として、有名なキールもブルゴーニュが本場。本来はブルゴーニュの白ワイン(アリゴテ種を使った白ワイン)で作ることとなっています。ただし、これに関しては、現在、他の辛口白ワインに代用されている例も多くなっています。
 
ワインに続いては、食に対してのイメージも強いブルゴーニュ地方。知名度ではワインに及ばずとも、名物料理が多数あります。代表格としては、やはりエスカルゴ、つまり(食用)カタツムリです。日本ではなかなか目にする機会はありませんが、ニンニクとパセリで味付けしたバターソースで食べるのがブルゴーニュ風。なかなか歯ごたえがあり、ちょっと貝の様な食感です。

日本では、なかなか食べられないエスカルゴ

畜産も盛んなブルゴーニュは、フランスでは有名なブランド牛「シャロレー牛」の産地としても有名です。牛肉を使った料理では、ブッフ・ブルギニヨン(ブルゴーニュ風・牛肉の赤ワイン煮)が特に有名ですが、ワインを使った鶏肉料理で、コック・オ・ヴァン(鶏肉の赤ワイン煮)なども郷土料理と言えるでしょう。前菜では、ハムとパセリを使ったジャンボン・ペルシエをよく目にします。

日本でいうならビーフ・シチューにあたるブッフ・ブルギニヨン

チーズも多く生産されていますが、ウォッシュ・タイプのチーズに有名なものが多く、その筆頭が「エポワス」です。フランスのウォッシュタイプのチーズを代表するチーズで、ウォッシュタイプのチーズは、塩水などで、表面を洗いながら作るチーズですが、エポワスは塩水にマール酒を混ぜてウォッシュしています。特有のコクと香りを持つウォッシュタイプのチーズの中でも、強い匂いと個性を持つワインですが、お酒のおつまみとしても合うことからバーやレストランのおつまみとしても好んで使われます。

ブルゴーニュのチーズの代表格、エポワス

また、このエポワスを真似て作られた「ラミ・デュ・シャンベルタン」という名のチーズがあります。意味は「シャンベルタンの友人」で、ナポレオンが愛したワイン「シャンベルタン」を楽しむために作られました。クリーミーな舌触りと力強い旨味、その名の通り、是非ブルゴーニュの銘酒シャンベルタンとともに楽しみたいチーズです。
 
忘れてはいけない世界的に有名な名産品がマスタード。これはブルゴーニュ地方の中心地、ディジョンの名産品ですが、マイユ(MAILLE)に代表されるマスタードはフランスを代表する名産品の一つと言えます。

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