見出し画像

知られざるコート・ダジュールのワイン

こちらのマガジンでは、フランスのワインやチーズについて記載をしていきます。日本でもワイン愛好家の方やチーズ愛好家の方も増えているような印象を受けますが、やはりよく知られているのは、ボルドーやブルゴーニュなど有名な産地のワインが良く知られています。
 
また、ワイン好きな方になればなるほど、より具体的な名称や格付けなどをご存じの方も多いでしょう。ボルドー・メドック地区の第一級格付けワインであったり、ブルゴーニュ地方のグラン・クリュのワインなどは、名称や作り手などをご存じの方も多いかと思います。
 
フランスでは、そのほか、アルザス、シャンパーニュ、ロワール、ローヌ、プロヴァンス、ラングドック・ルシヨン、南西部、サヴォワ、など多数のワインの産地があります。
 
今回、紹介するのは、ワイン生産の地域分類で、「プロヴァンス」と呼ばれる地方のワインです。ワイン産地の地方分類で、「プロヴァンス地方のワイン」と呼ぶ場合、その地域は、西は、「レ・ボー・ドゥ・プロヴァンス(アルルの北部)」から東は、サン・ラファエルやフレジュスの近郊あたりまで広がる「コート・ドゥ・プロヴァンス」となります。
 
この地方では、赤ワイン、白ワイン、ロゼワインを作っていますが、この中でも地方東部にあたる「コート・ドゥ・プロヴァンス」というワインが、地方全体の総栽培面積の80%ほどを占め、特にロゼ・ワインの生産で知られています。フランスのA.O.P(原産地呼称統制制度)で認められているロゼ・ワインの約4割がこの地方で作られており、全世界のロゼワインの約8%がこの地方で作られています。

コート・ドゥ・プロヴァンスのブドウ畑。

さて、私もプロヴァンス地方のワインとなると、まずはロゼワインが思い浮かびます。この地方では、高品質の赤ワインや白ワインも生産されていますが、とにかくロゼのイメージが強く、やはり「プロヴァンス地方のワイン」と聞くと、ロゼワインを思い浮かべてしまうのです。皆さんもフランスで、スーパーマーケットなどに行く機会があれば、ワイン売り場を覗いてみてください。フランス各地方のワインが並んでいますが、ロゼ・ワインのコーナーにある「コート・ドゥ・プロヴァンス」のロゼは非常に多種のワインが並んでいます。
 
さて、前置きが長くなりましたが、今回紹介するのは、このロゼワインではありません。一般的には、先ほど記載した地方東端までで大規模なワイン生産が行われていますが、実は、さらに東に、ごく小規模ですが、ワインを生産している地域が2つあります。
 
1つは、フランス屈指の地中海リゾート、コート・ダジュールの中心地ニースの西にある小規模なA.O.P.であるベレ(Bellet)。そして、もう一つは、A.O.P.としては、「コート・ドゥ・プロヴァンス」なのですが、Belletのあるニース西部を流れるヴァール河を北上した村、ヴィラール・シュル・ヴァール(Villars sur Var)で作られているワインです。このヴィラール・シュル・ヴァールのA.O.Pは、コート・ドゥ・プロヴァンスの飛び地とも言える地域で、ここだけポツンと離れた地域となっています。この2つのワインは、ともに、ワインのイメージがほとんどないアルプ・マリティム県(Alpes Maritimes)で作られているワインなのです。
 
さて、まずはBelletですが、このA.O.Pはフランス・ワイン好きなら、垂涎の高級ワイン。ニースやパリの高級レストランでも、提供されていますが、栽培地が少なく、生産本数も限られているので、ほとんどのワインがフランス国内で消費されています。そのため、他の地方ではなかなか目にすることが難しいワインです。
 
地域は、ニースの西部で、海岸リゾートのイメージの強いニースですが、すぐ近くまでアルプスの支脈が降りてきています。そのため、町を少し離れるとどんどん標高が挙がっていきますが、標高約200~300mほどの斜面でブドウ栽培がおこなわれています。

斜面に沿ってブドウの木が植えられるベレ地区

同じ南東部のプロヴァンスワインやローヌワインと異なるのは利用品種で、黒ブドウとしては、ブラケ(Braquet)やフエラ・ネラ(Fuella Nera)といった土着品種が主要品種として使われています。白ブドウでは、ヴェルメンティーノが主要品種なのですが、この地方では、主にロル(Rolle)と呼ばれています。具体的には下記となっているようです。
 
赤ワイン:主要品種はブラケ(Braquet)とフエラ・ネラ(Fuella Nera)で、60%以上使用
補助品種として、サンソー(cinsaut)(15%以内) やグルナッシュ(Grenache)が利用可
 
白ワイン;主要品種はロル(Rolle)、つまりヴェルメンティーノ(Vermentino)で60%以上使用
補助品種としては、ブランケイロン(Blanqueiron)、ブールブーロン(Bourboulenc)、マヨルカン(Mayorquin)、ルーサンヌ(Roussanne)、以上4種類で、5%まで。およびシャルドネ(Chardonnay)、クレレット(Clairette)、ミュスカ・ア・プティ・グラン(Muscat a petit grains)が認められています。
 
ロゼワイン:主要品種はブラケ(Braquet)とフエラ・ネラ(Fuella Nera)で、60%以上使用
補助品種として、サンソー(cinsaut)(15%以内) クレレット(Clairette)とロル(Rolle)(以上2種類で10%まで)ブランケイロン(Blanqueiron)、ブールブーロン(Bourboulenc)、マヨルカン(Mayorquin)、ルーサンヌ(Roussanne)、以上4種類で、5%まで、加えてグルナッシュ(Grenache)が利用可となっています。
 
赤ワインはタンニンがしっかりしている比較的しっかりとしたワイン、白はヴェルメンティーノらしい華やかで白い花のような優雅なワイン。個人的にはベレの白ワインが非常に好きなのですが、土着品種を使った赤ワインも非常に興味深いワインです。どちらも、高級ワインですが、正直なかなか手に入らないので、現地へ行ったら是非お勧めしたいワインです。
 
私は、一度、ベレのワイナリーの見学に訪れたことがありますが、路線バスでは、近くまでしか行けず、そこからワイナリーまでは徒歩で向かう必要があるため、専用車やタクシーをりようするのが無難です。ただし、歩いて向かうとどんどんと坂道を登っていきますので、山の斜面でブドウ栽培をしている様子がよくわかりました。
 
そして、もう一つがヴィラール・シュル・ヴァール(Villars sur Var)のワイン。こちらは、他にも種類があるのかもしれませんが、下記の銘柄しか私は知らないのです。ただし、このワイン、個人的に非常に好きで、高品質だと思っております。また、ニースなどコート・ダジュールの高級レストランでも、このワインを置いているところは多いです。

ヴィラール・シュル・ヴァール、クロ・サン・ジョゼフのエチケット

ヴィラール・シュル・ヴァール クロ・サン・ジョゼフ
(Villers sur Var , Clos Saint Joseph) 赤、白、ロゼを生産しています。
 
赤ワインとロゼワイン:南仏の主要品種であるシラー(Syrah)グルナッシュ(Grenache) ムールヴェードル(Mourvedre)を使って作られます。特に赤ワインは非常にレベルが高く、芳香よく力強いワインです。
 
白ワイン:ユニ・ブラン(Ugni-blanc)、クレレット(Clairette)、ロル(Rolle)、セミヨン(Semillon)から作られていて、粘性と少々の甘味を感じるワイン
 
この赤ワインは、私も現地へいくと、お土産に必ず購入しているワインで、アルプ・マリティムの高品質ワインとして、非常におすすめできるワインです。あまりワインが作られていない地域でのワインという希少性もありますが、味わいや品質も高いレベルのものですので、現地などで見つけたら是非、試してみてください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?