超掌編社会派ミステリー小説『陥穽』~立ち読み~
こんにちは、Frankです。
拙作の超掌編社会派ミステリー小説『陥穽』の梗概と立ち読みをご紹介します。ご一読いただければ幸いです。
【梗概】
舞台となるのは表面実装技術関連機器メーカーである日本の中小企業とその納入先である隣国の大手家電メーカー。出張の前日、社長と打ち合わせを済ませた海外営業部主任の主人公「私」が、翌日、機械の設置のため隣国へ飛ぶ。数日後、機械的トラブルに遭遇し、やむなくエンジニアを日本に帰らせる。現地の生産ラインを統括する日本人の顧問に相談を持ちかけた「私」は、ある晩、彼からある秘話を聞かされる――。『ちょっぴりミステリアスなアンソロジー』の第6作目。総文字数約4504字の超掌編。社会派ミステリーが好きな方にはお薦めの作品です。
【立ち読み】
落雷で消えていた蛍光灯が、突然、パッと室内を明るくしました。
出発の前日でした。夕方になっても、外は湿気でじとっとしていました。 五時頃まで会議室でエンジニアと打ち合わせをし、彼らを退勤させた後は、八時前まで社長と緊急時の対応策について話をしていました。
出張先で私がやる仕事は、そう難しいことではありません。只、職場環境が変わってすぐでしたので、正直「お任せください」と単純に返事できる状況ではありませんでした。それでも社長を安心させるために、その時は「了解です」とだけは言ったと思います。
窓外の電灯には餓が群がっていました。
訝し気な顔でそれを見ていた社長は、〝これで打ち合わせ終わり〟の合図なんでしょう。テーブルの上に置いてあったリモコンを取り上げ、クーラーのスイッチを勢いよく切りました。
「明日は朝の便でしたね。頼んます」
典型的な中小企業の社長の物言いでした。
「時差はないから、何かあったらいつでも電話ください」
私は黙って頷きました。
ソファーから立ち上がって、社長室を出ました。
それからすぐだったと思います。
「よっしゃ」
社長が背後で、そう言ったのが聞こえました。
(つづく)
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▶『陥穽』~ちょっぴりミステリアスなアンソロジー~
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