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ていうか毎日-トモハル編

俺の名前は吉原智春。
現在社会人4年目の25歳、神戸在住だ。
大学から仲のいいアヤマという男の話をしたい。


アヤマは大学の軽音楽サークルで出会った友人だ。
一緒にバンドを組んだりもした。
何度も喧嘩したけど、雨降って地固まる、だ。
俺は大学を卒業して就職し、
アヤマは大学院に進学した。
アヤマは大学院生活にとても苦労していたが、
俺と遊ぶ時間をとってくれた。
でも、やっぱりお互い人間だ。
長い付き合いだとしても、許せないところはある。


俺は不器用だった。
許せないなら許せないで、普通の人なら放っておけることも、清算しないとだめだった。
心に石ころが引っかかって、うまく息ができなかった。
俺はアヤマと絶縁することにした。


「俺、お前と縁を切りたいから、
一生連絡してこないでくれ」

真面目なアヤマのことだから、
「何があったの?」「なんか悪いことした?」
「一旦話そう」と、言うはずだ。
は〜、めんどくせっ


アヤマからの返事はこうだった。
「わかった。さよなら」



は?
え?アヤマ?
いつものアヤマはどこいった?
まあいい、物分かりがいいな。
話し合わなくて済む。
アヤマ、さようなら。




それから数ヶ月が経った。
俺は当時付き合っていた彼女と
3ヶ月で別れた。
せっかくできた彼女だったのに。

アヤマ、何してるかな?
あの時は言い過ぎたような気がする。
俺っていつもそうだ。
相手の気持ちを考えずに、すぐに自分の主張をする。
あんなこと、言わなきゃよかった。
ちょっと連絡してみよう。

「アヤマ、元気か?」

「あの時はごめん。
またアヤマと話ができればと思って」

「俺、彼女と別れたんだ〜」

.......


連絡の早いアヤマから返事がこない。
まあ、待ってみるか。



気付けば1ヶ月が経っていた。
アヤマは俺と違って、連絡を放棄するやつではなかった。
....どうしたんだ...?

アヤマと仲がいい恭子ちゃんに連絡をしてみる。
「恭子ちゃん久しぶり。
突然なんだけど、アヤマと連絡とれる?」

即レスの恭子ちゃん。ありがたい。
「とれるよ〜。なんなら今LINEで喋ってる」

え?
「あのさ、俺、アヤマに連絡して
1ヶ月無視されてるんだけど、なんでだろ」

「え〜?アヤぴに限ってそれはないでしょ。
だってアヤぴって即レスしてくれるじゃん」

だよな?なんでなんだよ。

「ちょっとアヤぴに聞いてみるね」

「ありがたい」

恭子ちゃんと連絡は取れて俺とは取れない。
なんなら話に聞いたけど、
リュウもハヤシもサトシも連絡してるらしい。
俺、もしかして、ブロックされてる...?

「おまた〜。アヤぴ、連絡届いてないって〜」

こっちからは送れてるのに!
電波障害かなにかか?

「ていうかさ、アヤぴと縁切ったんじゃないの?」

「は?なんで恭子ちゃんが知ってんだよ」

「アヤぴと私とリュウのグルチャあるんだけど、
縁切られた直後?ぐらいにアヤぴがそう言ってた。
ワンチャン、ブロックされてんじゃない?」

「俺、ブロックされるようなことした?!」

「縁切りたいって言ったのトモハルくんでしょ。
今更何言ってんの?」



やってしまった。
俺は大学生の頃から、何一つ変わってなかった。
アヤマに言われたことがある。
「問題から逃げるな。
そうやって逃げ続けていると、
トモにいつか大事な人ができた時に
その大事な人を逃してしまう」
と。

俺にとってアヤマは大事な人だった。
でも、アヤマは自分のことを
“トモにとって大事な人”とは言わなかった。
アヤマはいつだって謙虚だった。
いや、自己否定的の方が正しいかも。

俺はアヤマを失った。
大事な人を失った。
大学の頃はアヤマ自身が俺を救い上げてくれた。
でも今は違う。
アヤマは大人になったんだ。
大人の付き合いというものをしているんだ。
もうお互い学生時代の体力は残っていない。
喧嘩すらできないことが、
こんなにもつらいことなのか。

俺はアヤマの真意や近況を知らないまま、
大人になっていくんだな。


後日、友人のインスタのストーリーで
アヤマが彼女と結婚したことがわかった。
俺のいない結婚式。
なんでお前が呼ばれてるの?ってヤツの
ストーリーから知る、親友だった人の結婚。
俺が呼ばれるはずだった席があるはず。
俺は過去の俺の行動に、酷く後悔した。



【ていうか毎日 が聞ける曲】

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