つや

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繁殖人間モスモス

なんでお姉ちゃんを喰べるん? お姉ちゃん、生活を守るために必死だったんよ? ねえお母さん。 ウチらって繁殖人間やんかぁ。 やけんな、お母さんももっと子どもを作った方がいいと思うんよ。 お姉ちゃんおらんくなったやんかぁ。 ウチ1人じゃ寂しいしさぁ。 でも、お母さんを独り占めできないのは嫌かも。 ウチさぁ、お父さんと繁殖しよるねん。 なあお父さん? ウチももう高校生やんかぁ。 そろそろ繁殖の時期だと思うんよ。 ウチ、いい事思いついたんやけど、 父さんとウチで繁殖すんの! 楽

    • ゴアミ先生の集中講義

      初めまして。〇〇〇脳神経外科の心理師を しています。御網レイと申します。 よろしくお願いします。 まず私の自己紹介からですね。 私は1999年2月20日生まれ、 34歳になる年の、33歳です。 私は24歳で広島にある大学院を修了しました。 そのあと新卒で精神科病院へ勤務し、 3ヶ月で辞めて、 海田町にある放デイで8ヶ月働きました。 その後、地元の製造工場で3年働き、 結婚してから福山へ移住しました。 福山の療育センターで3年働き、 31の時に今の脳神経外科にきました。

      • ていうか毎日-恭子編

        はーぁ、今日もだるいな〜。 あたしは恭子。 適当に毎日を生きてる。 定職にも就かず、彼氏も取っ替え引っ替え、 友達に養ってもらってテキトーに生きてる。 っていうか、死んでんのかもしんない。 ていうか、聞いた? またアヤぴとトモハルくん喧嘩したんだって。 理由は知らないし本人も知らないっぽい。 急に絶縁されたんだってさ〜。 ほんっと、いつまでやってんだろ。 アヤぴには 「また帰ってくるだろうから、ほっときな」 って言っといた。 だっていつもそうだもん。 トモハルくんは不器用

        • ていうか毎日-アヤマ編

          僕の名前は綾間松太。 アヤマ ショウタ という。 みんなからはアヤマとかアヤぴとかって呼ばれている。 大学院に進学したため、 同期からは社会人生活が遅れた。 今年で社会人2年目の25歳だ。 僕にはトモハルという友人がいた。 でも、先日、「縁を切りたい」と言われた。 僕は「わかった。さよなら」と言った。 僕はトモにうんざりしていた。 彼は自分の都合で友人を蔑ろにする。 僕はモノじゃないのに。 僕が彼女と別れた時、 「マジ?!大丈夫?どした??」 と、ノータイムで連絡がきた

        繁殖人間モスモス

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          3本

        記事

          ていうか毎日-トモハル編

          俺の名前は吉原智春。 現在社会人4年目の25歳、神戸在住だ。 大学から仲のいいアヤマという男の話をしたい。 アヤマは大学の軽音楽サークルで出会った友人だ。 一緒にバンドを組んだりもした。 何度も喧嘩したけど、雨降って地固まる、だ。 俺は大学を卒業して就職し、 アヤマは大学院に進学した。 アヤマは大学院生活にとても苦労していたが、 俺と遊ぶ時間をとってくれた。 でも、やっぱりお互い人間だ。 長い付き合いだとしても、許せないところはある。 俺は不器用だった。 許せないなら許せ

          ていうか毎日-トモハル編

          ねえ、先生

          ねえ、先生、 私が卒業してから、7年になるね。 私のこと、覚えてる? 覚えてなんかないよね。 捨て駒の1人にしか過ぎなかったんでしょ。 私は駒なんかじゃない。 貴重なプレイヤーだったのに。 私はこの高校でトランペットが吹きたくて入学した。 なのに入学3ヶ月後にはホルンパートへ異動だ。 あーあ、私も一応強豪中学校の卒業生なのに。 同級生の2人に負けた。 人望のある内部生と期待の新生。 私は影の薄い、内気な新生。 そりゃ輝いてる2人には劣っちゃうでしょ。 それはいいとしてさ

          ねえ、先生

          あなたになりたかった私

          今日も無駄な動きの一切ない工程を積み重ね、 車のライトを作る作業をしている。 これが私の仕事だ。 いつもは妄想を繰り広げたり、 歌を歌ったり、 30分までに何個ライトを作れるかゲームをしたり、 考えているようで考えてない脳みそが そこにある。 しかし、今日は違った。 親愛なるあなたへ 私は、朝からあなたの連絡を待ち侘びていた。 連絡が来ることに気付けるように バイブレーション機能も追加した。 その設定も虚しく、 ポッケで携帯が震えることはなかった。 私は自我を出してみ

          あなたになりたかった私

          あなたになりたかった

          誰しも、1人では生きていけない。 そういう風に、世の中はなっている。 しかし、女性は違う。 女性は精神的にも、1人で生きていけないぐらい 弱いところがあるんだ。 私は紛れもなく女だ。 1人で生きていけない動物であり、 感情を持った人間であり、 精神的にも1人で生きるのが難しい女という性。 だから女は嫌なんだ。 なにが社会的弱者だ。 そう思うなら、もっと寄り添ってよ。 社会的弱者なんて言葉、私は大嫌い。 私は1人でも生きていけるんだ。 いや、1人でも生きていきたい。 誰に

          あなたになりたかった

          Duo Dance

          私は、誰かと踊るのが苦手だ。 というのも、まだ1人としか踊ったことがない。 その人は、自分勝手な踊りをする人だった。 私はいつも気を遣っていた。 気を遣って、声を出して、 手足を動かして、表情を作った。 そんな自分が気持ち悪くて、 次第にその人と踊ることはなくなった。 最近、一緒に踊ってみたいなって 思える人ができた。 彼はまだ、誰かと一緒に踊ったことがないみたい。 でも、私は一切不安がなかった。 踊りは2人で作っていくものだから。 彼の不安を払拭できるように、 経験が活

          口下手な人

          3月30日 彼の演奏するオルガンを聴いた日。 彼の春コートから伸びるワイドパンツが ふんわりと動く。 赤ちゃんの乗っている車を運転している時 優しいブレーキを踏むように、 ゆっくりとペダルを踏んで風を送る。 エッヂのない、どこか不安定な、 それでいて包まれるような音が響く。 対角線上に座る観客の女性が 目を閉じて聴いている。 私も同じようにしてみる。 目を閉じる。 マインドフルネス療法をしてみよう。 心理学専攻の大学院卒である私は 院生時代を思い返す。 地面に足がつ

          口下手な人

          別れ時

          今思えば、別れ時だった。 相手の気持ちを考えて、謙虚でいるには、 難しくなっていた。 付き合ってすぐは、 かわいいかわいい後輩を 傷つけないために、 恋人の誠意として、 異性の友人が多い私は 安易に異性に近付くことをやめた。 趣味を受け入れるために、 特に興味があるわけでもない beat box を嗜んだ。 彼のファッションを肯定するために、 ファッションセンス皆無の彼に 無関心で居るように努めた。 そういう努力ができたのは3年ぐらいだったと、 今は思う。 4年目、

          ルート

          親愛なる少年、ルートへ贈る。 お前はルートになるべきだ。 ルートという記号は、 誰でも、どんな人でも、 包み込むことができる。 例えば1、5、6、8といった男性。 彼らも、ルートの優しさで包み込むことができる。 2、3、4、7、9といった女性。 彼女らもまた、 ルートの優しさで包み込むことができる。 悲しみを抱えた人。 少年ルートにはハードルが高いかな? でも、大丈夫。 君は、数学記号のルートなのだから。 ルートは愛情深く、包み込むことができる。 たとえ、悲しみを

          まっすぐ

          憂鬱な仕事も、 君に会える週末を思ってやり過ごす。 どんな服着ようかな、 どんな髪型にしようかな、 どんな自分で居ようかな。 プレゼントは持っていこうかな、 何したら喜ぶかな。 君が私に「可愛いね」って 言ってもらえることを想像しながら、 作戦を立てる。 恩師が言っていた。 「恋愛のすべてはタイミングだ」と。 当時付き合っていた、年上の彼女と別れて5年、 いろんな人と付き合ってきたけど、 たまたま5年越しに出会った年上の元カノが 今の妻だ、と先生は言う。 譲れないとこ

          まっすぐ

          小さな泡

          あれ....私、どうなったんだっけ...? 辺りを見渡すと、色鮮やかな景色。 鱗が泳いで、石がキラキラ。 ここは、海...? 私は故郷が嫌いで外に出たはず。 いつのまにか、連れ戻されていたようだ。 私の姿は、どうなってる? イワシの大群の反射を利用して、 自分の姿を探す。 どこにも見えない。 いや、稚魚にも満たない、小さな、泡...? 私、泡になったんだ........ 泡なんて、いつしか消える。 私は、消えてしまうんだ。 ないはずの鼻がツンとして、 ないはずの目から

          小さな泡

          とある勇者の冒険譚

          私は村でもわりかし有名な勇者をやっている。 今日は、誰も入ったことがない、 入ったら戻れないという秘境に 足を踏み入れようと試みている。 「忘れ物はない?」 心配そうに母親が訊ねる。 私の母はいつだって心配性だ。 「うん。ちゃんと持ったよ」 入り組んだ草を切り取るハサミ、 獲物を誘き寄せるための蜜、 秘境を傷つけないための安全靴、 そして、怖がらない心である。 戻って来れないと有名な秘境に行くもんだから、 村人総出で送り出してもらった。 「いってきます」 生きて帰ってこれ

          とある勇者の冒険譚

          アラサー女子のこじらせ日記【第100話!】

          みなさんこんにちは。 アラサーのこじらせ女子だよ。 今日でなんとこの日記も100話目! なんとめでたいことでしょう! ということで、今日書く内容は、 ちょっとディープな話題にしようかな! 苦手な人はブラウザバックしてね。 私は恋愛経験が少ないから 当分トキメキを摂取できてないんだけど、 今日は初ホテルのトキメキを書いてみようかな! 私は、いわゆる、“そういう”ホテルに 行ったことがなかったから、 まず初めに部屋の広さにびっくりしたの!! “そういう”ホテルって、 普通のビ

          アラサー女子のこじらせ日記【第100話!】