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【表現研】「記号論と現代文化におけるイメージ」の観点から見た,バーチャルYoutuberの有意性

今日,「Youtuber」と呼ばれる,オンライン動画配信サイトYoutubeにて自主制作動画を配信し,そこから利益を得ている人々が世界的にも大きく注目されている.その多くの人々はリアルな自らの肉体を晒して動画を制作し,配信しているのだが,ある人々はコンピュータグラフィックスで作られたアバターを用いて動画を制作,配信している.これがいわゆる「バーチャルYoutuber」である.本論説では,そのような「バーチャルYoutuber」のどこに有意性があるのか,主に「記号論と現代文化におけるイメージ」に関する内容から分析を試みる. 

 まず,「記号論と現代文化におけるイメージ」に関する内容を利用するために,「バーチャルYoutuber」が行う動画制作,配信などの活動を改めて定義してみよう.さて,ロングマン英英辞典で「advertise」の意味を引けば, 

"advertise : to tell the public about a product or service in order to persuade them to buy it"

とあり,ここでは,「buy」を「製作者のコンテンツを消費する」と解釈しそのような行為を「自らが思い描いた通りに自分の人間性を視聴者に向けて発信し,視聴者がさらに自分が製作したコンテンツを消費するよう指向させる」という一種の「宣伝行為」と定義する.例えば,一般成人男性が巫女姿で狐耳を付けた美少女のアバターを使い,Youtube上で活動していた「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」は,「自らが思い描いた理想の外見 = 巫女姿で狐耳を付けた美少女のアバターを用いつつ,自己の生声で自己のバイト生活の辛さを語るによって視聴者に深く印象づけさせ,視聴者にさらに自分が製作したコンテンツを消費するようにさせている」というようになるだろう.また,企業などが自らの製品を直接視聴者に宣伝するために「バーチャルYoutuber」を導入した事例もある.   

さて,「バーチャルYoutuber」の活動が「一種の宣伝行為」と定義されたので,その分析に「記号論と現代文化におけるイメージ」に関する内容,主にロラン・バルトが提案した広告における「デノテーション(表示的意味)」と「コノテーション(暗示的意味)」の観点を用いて「バーチャルYoutuber」の活動を分析していきたいと思う.「バーチャルYoutuber」の有意性は,この「デノテーション(表示的意味)」と「コノテーション(暗示的意味)」とをコンピュータグラフィクスを用いたアバター,センサを用いたモーショントラッキング,ボイスチェンジャーなど各種技術を用い製作者が思い描く通りにコントロールできる点にあると私は考える.「Youtuber」や,テレビ,ラジオなど既存のメディアでは,リアルな肉体をその媒介とすることがほとんどである.リアルな肉体には当然,顔の造作,体型など外見や声,その人物が醸し出す雰囲気などの要素が付随しており,また文化的要因により外見,声などといった要素は,例えば「背が高くて筋肉質な男性は健康,頑健に見える」といったように「デノテーション(表示的意味)」と「コノテーション(暗示的意味)」に結び付けられてしまうことがほとんどである.また,このリアルな肉体と「デノテーション(表示的意味)」と「コノテーション(暗示的意味)」の結びつきはその対象となる人物とは関係なく行われてしまうことが多く,服装や化粧などである程度操作可能であるとはいえ性別や体型,年齢に基づく要素など個人ではほぼ操作不可能であることが多い.故に,「Youtuber」や,テレビ,ラジオなど既存のメディアでは「自らが思い描いた通りに自分の人間性を視聴者に向けて発信し,視聴者がさらに自分が製作したコンテンツを消費するよう指向させる」のはほぼ不可能だと言える.

しかしながら,アバターなど情報技術を用いた「バーチャルYoutuber」では,外見,声,体型などの要素を自らの好きなように設定でき,自らが思い描いた通りに自分の人間性をインターネットで発信することができる.例えば,前述の「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」の例で言えば自己の外見を,自分の思い描いた理想である巫女姿で狐耳を付けた美少女のアバターとし発信している. 私は,この「外見,声,体型などの要素を自らの好きなように設定でき,自らが思い描いた通りに自分の人間性をインターネットで発信することができる」という点こそが「Youtuber」や既存メディアなどリアルな肉体を用いた発信と比べ「バーチャルYoutuber」が有意である点であると考える.人間は誰しも,「ロリータファッションが似合ってしまうような可愛い美少女になりたい」とか,「気高い,ややもすると儚い印象を抱いてしまうような,凛とした女性になりたい」とか自分の思い描く理想があるものであるが,残念ながらリアルの世界では肉体に縛られてしまいその要望が叶うことはかなり少ない.

けれども,情報技術を用いれば例えバーチャルの世界でもその要望を叶えることができ,またその姿で自らの人間性を発信することができる.私はそれを行ったことがないため想像でしかないのだが,その際に感じる自由度,解放感は相当高いものと思われるし,現在「バーチャルYoutuber」とされる人物の数が右肩上がりなのもその自由度,解放感からだと考えられる. また,5Gなど各種通信インフラ,アバターの精度やモーションキャプチャ,ボイスチェンジャー技術などがこれから先更なる発展が見込まれているので,「外見,声,体型などの要素を自らの好きなように設定でき,自らが思い描いた通りに自分の人間性をインターネットで発信することができる」という点で有意な「バーチャルYoutuber」は更なる拡大を遂げるであろう. 

 参考文献

  https://create-vt.jp/vtubertoha https://www.ldoceonline.com/jp/dictionary/advertise https://dic.nicovideo.jp/a/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%81%AE%E3%81%98%E3%82%83%E3%83%AD%E3%83%AA%E7%8B%90%E5%A8%98youtuber%E3%81%8A%E3%81%98%E3%81%95%E3%82%93 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%90%E3%83%BC%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%ABYouTuber

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