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「表現活動をする人が生きやすい社会なら、もっとみんな幸せかもしれない」 芸術のキャリア支援 ひよこアーツさんのお話

 卒業生の半分が行方不明…とか言われる東京芸大。 
 東京芸大に限らず芸術系大学を卒業した後のキャリア形成の難しさは、もはや一種のあるあるだと思います。

「絵を続けたい⇒食えない⇒無職」「とりあえず20代は頑張ってみよう⇒フリーター」みたいな流れがあるわけで、新卒カードも捨てがち…ではある。

 ところで私遠藤は「その後の藝大生」というインタビュー活動をやってます。東京芸大を卒業した後のキャリアや挫折感とかに興味があるわけです。

 それである日、新たなインタビュー対象者を探そうと思い、ネットをウロウロしていたところ

「夢と愚痴を吐き出してほしい。ここは吐き出し喫茶。」
若手表現者のキャリアや生き方について考える企画団体ひよこアーツが、「吐き出し喫茶」を開催します。

えっ?なにこれ面白そう。…あ、でもすでにイベント終わってる。でもこのひよこアーツさんって面白そうだな、と思いホームページを見たら

げいじゅつ職レポ隊ぴよぴよ
美術大学・芸術大学・音楽大学の学生は卒業後、どんな生き方をしているのでしょうか?

「うおー、めっちゃ面白そう」と思い、主催のひよこアーツさんに即メール。そしたらなんと返信があり、共同代表の戸島由浦とじまゆら さんという方とお話する機会を頂きました。

 いやもうそれが、めちゃくちゃ勉強になったんです。

(以下、インタビュー記事になります)

——— 今日はありがとうございます。早速なんですが、どうして芸術系大学の学生や卒業生の生き方に注目したのですか?

戸島さん 私も遠藤さんと同じく東京芸大で勉強していたのですが、やっぱり周囲にはアーティストを目指す人が多かったんです。でも話を聞くと多くの人が、「卒業したらどうしよう」とか「表現の技術は教えてくれるけど、表現を仕事にする方法は教えてくれないんだよな」っていう不安を持っていたんですね。

——— なるほど

戸島さん 例えば音楽や美術の才能があっても、その才能を社会でどう生かすか、つまり「自分をどう売りたいか」とか「活躍できる場所をどうやって見つけるのか」などというのはまた別の技術です。そういう体験談を集めたらヒントになるのではないかと思ったのが始まりです。

——— 戸島さんは現在20代前半で、大学を卒業して間もないと思います。未だに東京芸大では就活やキャリアの話とかしないんでしょうか?

戸島さん 今現在も就活をやる人は少ないんじゃないかなと思います。一方で、最近は東京芸大のアートキャリア・オフィスも活動しているようです。就職に限らず、アーティストとして活動する道でも、実践的なキャリア支援をしているようですね。

——— それはとても有効なキャリア支援ですね。

戸島さん 卒業したら企業や団体とも、それまで以上にやりとりが必要になりますし、プロになると社会や人が必要とするものを提供しないといけないという部分も少なからず出てくるのでしょうね。

——— ひよこアーツさんは学生や卒業生が少しでも芸術活動をしやすいように支援をしたいという気持ちがあるのでしょうか?

戸島さん そうですね。誰かが表現活動をやろうとしていること自体がそもそも面白いし、その行為自体に社会的な価値があるんじゃないかなって考えています。そして、しばしばマイノリティな立場に置かれる表現者が生きやすい社会になったら、もっとみんな幸せになるんじゃないかなって。

——— めちゃくちゃいい考えですね。ホームページを拝見すると「げいじゅつ職レポ隊ぴよぴよ」という、現役の美大生や音大生が見ても参考になる職業インタビューが載っています。これはとても意義がある活動ですよね。

戸島さん ありがとうございます。 元々ひよこアーツは、2021年に職業レポートインタビューから始めたんです。職レポでよく伺うのは「なんでその道に入ったの?」とか「なんでそれを続けてるの?」といったことです。活動を続けること自体がすごいことだと思ってるので。まあ実際は、皆さん独自すぎて参考になるかどうか分からない部分もあるんですけど(笑)

——— (笑)いえいえ、現役の学生にとってはとても参考になると思います。だってリアルな姿ですから。個人的には今年6月に開催された「吐き出し喫茶」に参加したかったのですが、これはどういったイベントだったんですか?

戸島さん 始めは相談支援みたいなことを考えていたんです。でも「相談窓口」ってなった途端に、何かとても具体的なことを相談して解決しなきゃいけない感じになるなって思って。吐き出すぐらいがちょうどいいんじゃないかっていうことになり「吐き出し喫茶」という形にしました。

——— なるほど

戸島さん 「吐き出し喫茶」では、アーティストの相談にも乗りますが、アーティストじゃない人も参加OKです。例えば日常の中で「最近折り紙を折るのが楽しい」とか「じゃがいもの皮むきにはまってる」とか、そういう小さな表現欲求っていうのがあると思っていて。そういうこだわりをもったら自慢したくなったりするじゃないですか。その話を聞いたり、愚痴を聞いたりすることが面白いと思っています。「吐き出し喫茶」はシリーズ化を目論んでいて、10月にも2回目を開催しました。

——— 小さな表現欲求、めちゃくちゃ大事ですよね。これからもひよこアーツさんは、アーティストへのサポートやキャリア支援の活動を続けるんですよね。

戸島さん そうですね。先日、「箏のおうちにいらっしゃい!~楽器作りから演奏まで~」という、演奏だけでなく楽器職人の方も巻き込んでの公演を開催しました。演奏家の方から楽器や業界への思いを伺ううちに企画になった形です。こんな風に、話を聞いたり聞かれたりしながら、多様な方法でアートに関わって生きていける環境作りを目指して、今後も活動していけたらと思っています。

——— 素晴らしいと思います。今日は貴重なお話をありがとうございました。

戸島さん ありがとうございました。

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 というわけで、お忙しい中お話を聞かせて頂きました。

 いや、ほんとに勉強になったし、面白い活動だなと思いました。  
 たぶんひよこアーツさんの中にあるのは、単純に「食べられればいい」とか「生活できればいい」じゃないんですよね。アーティストそれぞれが大切にしている価値観であったり、問題意識だったり、現実の悩みだったり、そういったことを大切にしたうえでのサポートであり、インタビュー活動だったりするんだろうなって思いました。

 そして、別に芸術系大学を出てようが出てまいが関係なく「表現したい」っていう気持ちを大切にする姿勢にはほんと共感しかなかったです。

 そんなひよこアーツさんなんだから、これもう面白いに決まってるわけです。ぜひ下のリンクからHPを見てみて下さい。


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