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バランス感覚とは時間【比べない体育 No.11】

船橋インターナショナルスクールで、『古武術で遊ぼう』のクラスを担当してくださっている身体思想家の方条遼雨さんと共に、比べず、体を育んでいくための場について学びを深めるため、『比べない体育』という講座を開いています。詳しくは、こちらのnote記事へ。

この記事は、2021年5月開催分の講義ノート、~『松聲館』の在り方 【比べない体育 No.10】~のつづきです。◆は方条さんのお話、◇は参加者の方のお話です。


◆重力バランスを均等均一にする

場を作る理論の一つの例に、この会を主催している船橋インターナショナルスクールでは、子ども向けの「古武術で遊ぼう」のクラスをご紹介します。

このクラスで、一番大きな惑星は私で、武術の特殊技能を持っている人としても重力が大きい。活発な子も大きめの重力、横でポツンと砂遊びしている子は小さい重力、スタッフやアシスタントは中くらいの重力だったりします。

その時に私はがどう行動するかというと、活発な子同士は集合して砂を掛け合って暴れて遊んでいたりするので、それでも体育だとそのままにしておきます。そして、端で一人ポツンとしている子のところに行って寄り添います。すると、その子と私の重力が合わさった重力がそこに生まれるんです。

一方、スタッフは全体の重力バランスを見ながら、自主的に動いていきます。今暴れている子たちがちょっとエキサイティングし過ぎて危ないと思えばそちらへ、あるいは私と小さい重力の子が気になるから見てみようと近づいていったりします。スタッフと子どもが関わり合い始めて、盛り上がりはじめたら、私はその場から離脱して、また他の小さい重力のところに移る。そうやって重力バランスを均等均一にする、均しているんです。場を作るうえで以前からお伝えしている大事なポイントの一つです。

重力バランスというものは、その瞬間瞬間に変転して留まる瞬間は厳密にはないので、常にその場を観察しながら全体も同時に観察し把握します。

把握能力が場における熟練の一つの基準になるんです。把握能力が高い人ほど適切に動けるし、結果的にその人の重力も大きくなってきたりする。それが成長だったりもします。場を見極める能力です。


◆バランス感覚とは何か

バランスとは色々ありますが、片足で立つこともバランスですね。バランス感覚とは何かというと「時間」であり、その人が持ってる「速度」のことなんです。どういうことかと言うと、例えば大きい地震が起こった時に、立っていたら大きくバランスを崩す人と、すぐに持ち直す人がいる。ここで何が違うかというと自分の安定状態から揺れたという変化をとらえる速度と、変化から修正する速度が違うんです。

場におけるバランス感覚も同じで、重力バランスの変化を捉える速度と修正する速度が、その人の場におけるバランス感覚になる。それは経験を積むほど上がるんです、心がけだから。

心のバランス感覚も同じ。自分の心になにか異変が起きた時にヤバいぞと思ったらすぐに会社を休めるような人は、バランス感覚がいい人。頑張れてしまうのは、なかなかヤバい事です。自分をどこか麻痺させていることが多いから。頑張れちゃうということは、自分の微細な変化をシャットアウトして、ある意味鈍感にしてしまっているということと同じなんです。その変化を捉えるバランス感覚がある意味鈍っている状態で、行き過ぎると鬱まで行ってからようやくヤバいとわかって治療をすることになる。もっと手前の手前で気づけて修正ができれば、そうならなくて済むんです。これが心のバランス感覚だったりする。

体調のバランス感覚もそう。身体の故障は積み重なってくるものがほとんどだから、年取って腰が痛いとか膝が痛いなどの不調は長年の蓄積だったりする。その蓄積がある一定を越えたら壊れはじめる。けれど、もっと早いうちに違和感に気づいて何か自身の立ち方、歩き方、ふるまいに問題があると気づいて変えようと思えば、修正できるものです。これが体調のバランス感覚です。

他にも関係性のバランス感覚もそうですね。

バランス感覚は本質的に時間だと私は考えています。

講師 / 方条遼雨
文責・写真 / あおいえりか

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