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ハス《心情㉒》

泣いても誰も助けてくれない。
誰にも見られないところで泣くから。
嗚咽が漏れてしまわないように両手で口を覆うから。

泣いてた。泣いた。泣いてる。苦しい。助けて。
全部文字列だから、誰も気にかけないし
誰も助けてくれない。

しかたない。

脳味噌が、漆黒と純白と青鈍で支配されている。
斑だった三色が、だんだんゆっくりとろりどろり搔き混ぜられて
マーブル柄になっていく。
純白は青鈍に引っ張られ、青鈍は漆黒に引っ張られ、
消し炭色で脳味噌がまけまけいっぱいになる。

ところどころにある柔らかめな突起を不定期に定期的に刺激しながら
ゆったりと、棒状の嫌なことやトラウマが掻き混ぜていく。
吐き気がする。

あぁ苦しいものが棒から溶け出していく。

安心感を握りしめたと手のひらを見れば掴んであったのは虚無感で。
舌に残りそうな辛さを、目をぎゅむっと瞑って必死に追っ払ったら、
心に残りそうな優しさが割れて転がっていたり。
もうなんだっていいと胸の前に抱きしめたものがジリジリゾクゾク
僕を蝕んで寄生して、でも手離せなかったり。

もうぐるぐるのぐちゃぐちゃです。

幼子の僕が、親が僕の目の前で喧嘩するの怖いんだ。悲しいんだ。
責任を背負ったときの僕が、もうやめていいって言って欲しい。
嫌な習い事をしていた時の僕が、赤信号に飛び出して行っても怒らないでくれ。あわよくば後悔してくれ。
いじめられていた時の僕が、負けたくない。でも勝てない。
大多数と同じことが出来なくなった時の僕が、ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。

そんなような、それらよりもっともっと多く強い過去の気持ちが
今の僕の隙を見計らって押し寄せる。

人間の感情なんて一過性のもので、一番ピークの感情を
一週間、一か月続けるなんてことはとても困難だし疲弊する。

過去の僕たちは一番ピークの感情をそれぞれが持っている。
僕たちは苦しんだ時間から脱することができないから、
いつだって今の僕にピークの感情を集中放射することが可能だ。

だから涙が止まらないのだ。
あの時、受け止めなかったから。
あの時、のしかかった重さに気が付けなかったから。
あの時、頼り方を知らなかったから。
僕は、お風呂で、布団で、お手洗いで、両手で口元を覆って泣くのだ。

あの時も悲しかったし、今も辛い。

したいことと、やらなければなことと、やったほうがいいことで
押しつぶされそうなんてことはないけれど。
やらなければいけないことがしっかり出来なければ、
したいことをする資格なんてない気がする。

やらなければいけないことがしっかりと達成できなければ、
成功体験をなくして、したいことをする切り替えすらできなくて
悔しくて、全て無駄になる気がして怖くて。

なら上手くいかなくてももう一度挑戦する気になれそうな、
したいことがしたくて。
でも結局ここまでやってきたんだからって、やめられなくて。
また自分に我慢を強いた。
僕が一番僕が我慢強いことを知ってるから、軽々しく我慢を強いる。

僕は今こうやって文字列だから、さっきまで泣いてたことも
今泣きそうで深呼吸しながら書いていることも
あなたは知らない。
気にしてくれない。
他の人にはよく話しかけに行くのに。
しんどそうだったら傍に座りに行くのに。

気にしてないです。気にしてるってこと気にしてないです。
僕の言葉であなたの傷が癒えないのと同じくらい
あなたの言葉で僕の傷は癒えない。

ひどいですよ。あなた。
ずるいです。あなた。
あなたがどうしたらいいかわからないくらい大好きです。


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