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キンセンカ 《心情⑪》

歳をかさねて気づいてく

人間の感情は喜怒哀楽の4つだけなんかじゃないこと
潤んだ瞳のような宝石が人によれば錆びれたガラクタであること
いくら真摯に望んだって都合よく環境は変わってくれやしないこと

所詮誰もが他人であること

すれ違う人、ぶつかる人、出会わない人にも思考だとか、
これまで続いてきた、そしてこれから続いていく人生があること

凡人にすらなれないこと
この人生は自分のものらしいこと

正解ばかり探し求めて
もっと大切なものを取りこぼしてきてしまったこと
爪先でちょんちょん蹴った石ころを見つめていたら
七色の橋を見逃してしまったこと
でも、そのかわり誰も気に留めない花を愛でることができたこと
本棚の上の方に手が届くようになると
階段の上り下りが大変だった頃のことを忘れてしまうこと

大人も特段偉いわけではないこと

自分と違うものを許容するのは容易ではないこと
青空ばかりが綺麗な空ではないこと
愛することに隔たるものはなくても障害物はありすぎること
家族だからってなにもかもうまくいくわけではないこと
自由には責任がともなうこと
世界は広く世間は狭いこと
人と関わるのは難しいこと
自分に優しくなくとも他人に優しい振りはできること
短所は長所に裏返らないこと
全員平等に不平等であること

生まれた時点で終身刑であること


紡ぐ

理性が急所に刺さったフォークを押し込める

ポケットの中でつないだ手
火花が散るのは傷が化膿するまでの流れ

堕天していく胡粉色の瞳
引っ掻いてつねって溜まっていくSOS

君と心重ねて一つになってしまえれば

足元にはらりと落ちる彼岸花

屈託ない笑顔に×がつく
喉元に爪をたてる手に罰がつく

開いた傷口をさすった
癒えない痛みだけは言えない
どうにもならない
空を仰いで捨てたい
空洞が埋まる前に
これ以上を。逃避をどうか。

欠片なんてなかったようだ

無機質な音階がこれほど感情的に聞こえるとは

短い刃先でなにと戦う気だ
何と闘える気だ

天国は凍てつく春
ブランコから放り出されたような浮遊感

つまさきに血が滑る
蜘蛛の糸で首を吊る

忘却でなにか変わる
愛憎でなにか終わる

頬を乾いた笑いが濡らす

数え間違えられた千羽鶴
天国への過信は血の海に落ちた
地獄への安寧は天使に頭をなでられた

音にすらならないリップノイズを聞き逃したりしないよう

事実とアルバムが導線でつながった線香花火
音をたて華やいで音をたて枯れていく

唸り声に寄せた心

死にたいとのた打ち回り血を循環させる君の思考と体温の保たれた
その身体が堪らなく愛おしい
エピローグを望んで舌を噛む君だけがこの世の全てで
唯一無二の本物の嘘

奇麗なものを綺麗事と握りつぶし払い落とすそれを透明な血液を
垂らしながら掬い上げる


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