見出し画像

ケツリーーーチ

 以前このnoteでも書いたが、私は生来的に胃が弱いためコーヒーとかのカフェイン含有飲料を飲むとたちまち肛門がダムのような濁流放出装置と化してしまう。

 なので外出先ではコーヒーなどの刺激物を飲まないように細心の注意を払わなければならぬのであるが、ついうっかり中華チェーン店でニンニクがたっぷり入った餃子とかを頼んでしまうことがある。

 そんなことをしてしまった時には、まあ当然地獄のような腹痛に襲われる。

 そしてこれがよくある最悪のケースなのだが、その店にあるトイレの個室が埋まっていてすぐに用を足せない場合、地獄のような腹痛、便意を耐え忍ぶしかなくなってしまう。

 これは本当に辛い。そんなら最初から餃子とか食うなよ、と言いたくなるだろうが『ぎょうざの満州』で餃子をオーダーしない人間がこの世にいるだろうか?
 もし仮に私が『ぎょうざの満州』で炒飯だけしかオーダーしなかったとしたならば、そこはもう『ぎょうざの満州』ではなく『ちゃ~はんの満州』になってしまう。
 店名を勝手に変更させてしまうのは良くない、という支離滅裂な思考によって私の腹は否応なしに悲鳴を上げるしかないのである。
 しかし自分で書いておいてなんだがこれは流石に屁理屈にしてもギャグにしてもキレがなさすぎる。どこの誰でも思いつきそうな言い訳しか考えられなくなったらもう終わりである。

 まあとにかく、便意がMAX状態なのにも関わらず個室のトイレが埋まっているという状況は、とんでもなく切迫感と緊張感を伴っている。

 しかし便意が強ければ強いほど、何の因果か知らないが個室からなかなか人が退出してこない。

 こっちは一刻も早く用を足したいってのにどうせアレだろ、個室の中でスマホ弄ってヤフコメでも見てんだろという疑心暗鬼が働いてしまう。

 もし仮に個室の中に入っている人間のスマホと自分のスマホをAirdrop的な何かで接続できるのだとしたら、個室の中に十分以上こもってる相手に直接メッセージを送れるのだとしたらビッグモーターの如く「便意便意便意便意便意便意………………強烈強烈強烈強烈強烈強烈……………便意便意便意便意便意便意……………脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞脱糞………」という催促の文言を送り付けているであろう。

 しかし当然そんなことは出来ないので、ノックでコンコンとするという合法的に許された催促の手段を選択せねばならない。

 ここで気を付けなければいけないのが、今までの経験則から、コンコンと叩くときに強くしてはいけない。
 強くたたくと個室にこもっている側の人間は「うわオイ外にスゲェ激昂している状態の人間いんじゃん、あ~こわ、どっか別のトイレ探しに行くまで待ってよ」という思考になりやすく、逆に個室からなかなか出てこなくなる。

 反対に優しく、もっと言えば弱弱しくコン、コンと叩けば個室の中にいる人間は「あっ、申し訳なさそうな顔をして出てけば普通に許してくれそうな人間の叩き方だ」と思い早く出てきてくれる傾向にある。

 問題なのは優しくコンコン叩いた時に個室側の人間にナメられて「コイツならもっと粘っても大丈夫そうだな」と思われる場合である。
 これに関してはもう意地と根性で便意を我慢して、個室の人間がやっと出てきた瞬間に全力で睥睨するしかない。それか優しくコンコン叩いた後15~20分以上反応がなければドアを思いっきり蹴り上げて安否確認をした方が良いだろう。

 そんな故、私はいつも便意が限界状態にあり、近辺にそれ以外のトイレが見つからずに個室が埋まっている時は優しくコンコン、とノックすることにしている。

 しかしこのノック戦法でもどうしようもない時、我慢を強いられなければならない時は何か別のことを考えて気を紛らわすしかない(それか漏らしてすべてを終わらせるか)。

 何か楽しいことを考えようとする。楽しいこと、楽しいこと、お祭りの屋台に売ってるわたあめ、年末ジャンボ、フィリピンパブ、この前王様のブランチかなんかで見た最近都内に出来たらしい斧を投げまくってストレス発散する施設……でもやっぱりどうしても私の脳内には、あの某転職サイトのCMで起用されている女性が人差し指を突き立てながら謎の笑みを浮かべて「ケツリーーーチ」と宣言する情景が浮かんでしまうのである。

 便意が極限にあり、もうこれ以上耐えられない、すべての終了まであと一歩であるという状態を俯瞰的に捉えた瞬間、それはもう「ケツリーーーチ」としか表現できない。

 前述したようにコーヒーとか餃子とか、激辛カレーとかを食べて腹痛が起こるのは当然の事象だからいいんだけど、何の刺激物も摂取してないニュートラルな状態で謎の便意が襲来してきたら、元ネタの転職サイトが「登録をしたら企業から逆オファーが来る」という性質を持っている以上「うわぁウンコの方から逆オファー来ちゃったよケツリーーーチ」と人差し指を突き立てざるを得なくなってしまうのである。

 最終的に滅茶苦茶汚い話になってしまったが(最初から汚い)、そんなわけで皆さん用を済ませたら即座に個室は出ましょうね、というお話。



おしまい


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?