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「楽しむ」てなんだっけ?|アニメーション映画「音楽」の感想

TEXT by MOMOKA YAMAGUCHI

「音楽」あらすじ

「音楽」は2019年に制作された日本のアニメーション映画です。原作は大橋裕之の漫画「音楽と漫画」、「音楽 完全版」。岩井澤健治さんが、監督、脚本、絵コンテ、キャラクターデザイン、作画・美術監督、編集をされています。

あらすじは、楽器にも触ったことがない不良学生たちがちょっとしたことをきっかけに音楽を始めるというお話です。

アニメーション映画「音楽」公式サイト
https://on-gaku.info

制作年数は7年以上、作画枚数は4万枚

このアニメは実際の人の動きを一枚一枚トレースしてアニメにする「ロトスコープ」という技法で制作されています。4万枚にも及ぶ作画を数名のスタッフで7年以上かけて作ったというのだから驚きです。大学の授業でロトスコープをやってみたことがありますが、数分作るだけでもかなりの枚数と気力がいります。しかも人の動きだけでなくカメラワークにもこだわっており、終盤の主人公が町中を駆け抜けて行くシーンはカメラマンも一緒に走りながら撮影しているみたいなぶれっぶれの勢いのあるカメラワークで、これを描きおわったあとは魂抜けてそうだなと思いながら見てました。

ロトスコープについて
https://www.adobe.com/jp/creativecloud/video/discover/rotoscoping-animation.html

「楽しむ」ってなんだっけ?

ストーリーも面白かったです。素人がバンドを組んでフェスにでるというストーリーは王道ですが、「音楽」というシンプルなタイトルの通り、「音楽とは本来なにをあらわすのか」と考えさせられました。この映画を見ていた前半の私は、主人公たちの演奏している音楽を聞いても「音を鳴らしているだけ」としか思ってなくてこの映画の何を楽しめばいいのかもよく分かりませんでした。でも、フェス前に主人公たちが自分たちの音を初めて録音して聞いたあと「良い」て言っていて。私はその姿を見て「この人たちは周りの人(この場合観客である私たち?)がどう思っていたとしても、自分たちの音を楽しんでいるんだ。これが音楽なのかもな」と思うようになりました。

同時に、お絵描きをしていたころの子供の自分を思い出しました。
子供の頃の私は線を丸なり直線なり引くだけでも楽しく、真っ白な紙に色がつく瞬間がどきどきで、描きたいものが特別あるわけではなく、描くという行為そのものが楽しかったのを覚えています。

ですが気がつけばあの人のほうが上手く描いてるとか、誰かに見てもらえないとしんどいとか、こんなの絵じゃないとか、他人や自分の評価みたいなのを気にし始めてだんだんしんどくなり、絵を描けなくなっていきました。自分が枠にはまった物の見方をしているなというのに気付かされたすごく良い映画でした。


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