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パラグライダーは何故ここまで楽しい?-スキーヤーの夏アクティビティにパラグライダーを推す!-

 フリースキーヤーの河野祥伍です。
 私は2021年5月にパラグライダースクールへ入校し、10月にJPA(Japan  Paraglider Association)のパイロット証を取得しました。民間資格ではありますが、パラグライダーというアクティビティをする上で管理区域内において自己判断で安全にフライトするための技能を身につけたということになります。

パラグライダーの始め方はこちら

パラグライダーのパイロット証取得までの費用と覚書はこちら

 その上でどうやら5ヶ月でパイロット証を取得するのは極めて異例らしく、スクール内ではパイロット証取得までの最短日数であったそうです。全ては冬にスキー×パラグライダーがしたかったので全力でスクールへ通ったというのもありますが、1番はパラグライダーというアクティビティがスキーで感じる面白さと共通点が多く、僕がゾッコンになってしまったというのが大きいです。
 今日はそのことについてお話ししていきたいと思います。

パラグライダーは特別感がすごい

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 言わずもがな、空を飛べるというのはあまりにも強烈な特別感があります。「I can fly」という言葉を本当の意味で使うことができます。スキーをしている人をスキーヤーと言いますが、パラグライダーをしている人はパイロットです。もうその時点で格好いい

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 スキーヤーは特別感に人一倍敏感だと思います。というのも、ピーカン、ノートラ、ドパウ、そんな言葉を聞いただけでゾクゾクしちゃう人は多いはず。どれも気持ち良さを与えてくれる要素ではありますが、それにプラスして特別感がより強いエクスタシーを感じさせるはずです。

 特別感は癖になる為、地元民よりも遠方からスキーをしに来ている人の方が依存性が強くなる印象です。金曜の夕方に仕事を何とか終わらせて、夜中走って当てたシーズンに一度あるかないかの最高のピーカン、ノートラ、ドパウを滑った話は春になっても、夏になっても酒の席で出てきます。

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 空を飛ぶのはまさにそんなレベルの特別感を毎回感じることができます。テイクオフの場所にもよりますが、毎回ギャラリーが大勢出来ます。子供はもちろん、大人たちも目をキラキラさせて見ています。まさにテイクオフの時、キャノピー(翼)が頭上に持ち上がると「おぉ!」と歓声が上がり、走り出して空に飛び立つと皆が手を振ってくれます。

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 職場では上司からは叱責され、いうことを聞かない部下がまた面倒ことを起こしています。なにから片付けるかをまず整理しなければいけないような煩雑な仕事が机の上に山積みになっており、“至急”“緊急”などと嫌な題名がついたメールが次々に送られてきています。そんなストレスフルな状況も「ま、俺空飛べるしな」の一言で心が少し安らぐような気はしませんか?状況によりますか。そうですね。

パラグライダーは最初からフルマックスの興奮度

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 スキーではアドレナリンを大量に分泌させようとすると危険性が比例して上がってきます。より速く、より斜度のきつい、荒れた斜面をと考えれば怪我のリスクが付き物だという事です。

 この辺は薬物中毒と同じです。適量で満足できなくなると、より強い刺激を求めて過剰摂取を始めます。際限なく刺激を求めていくとあるところでオーバードーズ。怪我をして退場となります。

 パラグライダーは非常に安全性の高い乗り物です。しかし、空を飛ぶので、刺激は最初からフルマックスです。ゲレンデでリフトを降りた初心者がいきなり空飛んでったら目が飛び出ますよね。それくらいの刺激を初っ端から得ることができます。

 つまりこうも言い換えられます。パラグライダー的にやってることは大したことのない事でも「あいつは空を飛べる凄いやつだ」という印象を一般人に与える事が出来るのです。

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 パラグライダーって落ちそう。。。そんなイメージが付きまといますよね。確かに対地高度で言えば落ちたら確実に死ぬ高さを飛んでいます。しかし、パラグライダーは翼が一時的に潰れても自然回復する特性を持っていますし、本当の万が一に備えてレスキューパラシュートと言うものを備えています。安全性の高いパラグライダーを使っているのであれば、ほぼ間違いなくと言う確率で落ちることはありません

 一概に安全面だけを語るのではなく、危険な状況も教えておきましょう。まず本当に危険なのは高高度からの落下ではなく、低高度での墜落です。つまりテイクオフ直後とランディング直前です。特にランディングの直前は危険性をはらんでいます。

 テイクオフでは飛び立つ前に危険な予兆(強すぎる風や気流の乱れ)を感知すればフライトの取りやめができます。何を言ったってアクティビティなんてしないが1番安全なんです。飛ばなければカフェでコーヒーを飲んで、逃がした魚は大きい理論で「今日飛んでたら3000mまで行っちゃってたな」と笑い合えば良いのです。

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 ただ、飛んでしまったらそうはいきません。現在はスーパーコンピューターが天気予報をしているため、大きく天候を外すことはありませんが、土地特有の風や急激な気流の乱れを空の上で感じてしまうととても危険です。

 空を飛んでいるときに落ちてしまえば落下傘でふわふわ地上に辿り着きますが(地面に何があるかは別として)、レスキューパラシュートが機能しない低高度(50m以下)まで来てしまうともう自力で着陸するしかありません。しかも地表は木や家屋などの障害物で気流が乱れています。地面にバウンドした風に思い切り煽られ、ストール(失速)状態で20m程度から地面に叩きつけられる映像などは“Paraglider Fail”でYoutubeで検索していただくと山のように出てきます。

 もちろんこういった状況に対応するためにハーネスというパラグライダーで座る部分には対衝撃のクッションが備え付けられており、ある程度のダメージ軽減にはなりますが、まぁホント一つ言えるのは「なんか危なそうなら飛ばない」と言う事ですね。

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 パラグライダーは気象条件における危険性以外にも、機材のセットアップミスで死亡事故が良く起きます。安全ベルトの締め忘れはテイクオフ直後即座に重大事故を引き起こします

 また、自分の技量に合っていないキャノピー(翼)の選択も重大事故のよくある例ですが、その辺はぶっちゃけ僕も良くわからないので安全に安心に飛びましょう。何事も行き過ぎ厳禁です。

 じゃあ怖いんじゃないの?と言う方。はい、怖いです。なのでスキーヤーにおすすめしたいんです。スキーヤーの皆さんはある程度この怖さに対して耐性を持っているはずです。でないと原付や自動車の速度をほぼ生身で滑走することなんてできないと思います。良いですが、これを読んでいるあなた、あなたのスキーができるのであればあなたにはパラグライダーが飛べます。

パラグライダーは空のコスパが高い

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 パラグライダーを始める費用は高い。確かにその通りだと思います。しかしあえて言わせていただくのであればパラグライダーは空のコストパフォーマンスがとても高い

 空を飛ぶと言えばでお馴染みのスカイダイビングでイメージしましょう。スカイダイビングは上昇することがないので、落下し開傘し着陸するまで3〜5分が良いところでしょう。しかし、スクール費用や道具を揃える費用はパラグライダーとほぼ変わりません。また、一回あたりの航空機搭乗費用を考えると、なかなか費用的に高額になってしまいます。

 また飛ぶまでの事を考えてもなかなか大変です。航空機を使う事が前提ですし、クリフダイブという崖からのダイビングや人工物からのダイブもありますが上級者向けですし、そもそもなかなかできる所はありません。

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 またハンググライダーと言うのもあります。これはパラグライダーよりも滑空比が高い(飛んでる時間が長い)と言う利点はありますが、機体が高額でコンパクトにならないと言うデメリットがあります。機材の大容量化は輸送専用の車両の必要や保管場所なども考えなくてはいけません。これもなかなコストがかさんでしまう事が想定できますね。

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※私はスカイダイビングやハンググライダーの専門知識を持ち合わせていない為、WEBで調べたりインストラクターさんから聞いた知識で書いております。大きく間違ってはいないと思いますが、より詳細な情報をお持ちの方から訂正をいただきましたら随時修正を入れます。

 ではパラグライダーはどうでしょう。スクール費用や機材費用などはこちらに詳細に書いておいたためご覧いただければと思いますが、リュックに収まる機材、頑張れば2時間以上のフライト時間、3000mに手が届く高度獲得、テイクオフまではリフトやゴンドラや車でいける、と言うパラグライダーは圧倒的に空のコストパフォーマンスが高いのです。

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 最初のうちは曇天で上昇気流のないタイミングでの練習となりますが、僕は1日に8本程度飛んでいました。ほぼ休みなく朝から晩までとんゴンドラの夏シーズンパスだけなので2万円+一回のゴンドラまでの輸送費200円です。上昇気流を捕まえず、翼の挙動上達させるトレーニングなどもほぼぶっ飛び(上昇なし)なので、一回あたりのフライト費用が安いと言うのはとても嬉しいです。

無動力飛行は自然とひとつになれる究極のソロアクティビティ

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 パラグライダーは究極のお一人様スポーツです。スキーで初めてBCに行ったとき、こんなにも1人になれる空間が世界に存在したのか、と驚いた経験がありますが、空の上はそれよりもさらに1人になれます。寂しければ無線やヘッドセットなどで仲間達と情報を共有しながら飛ぶこともできますし、その辺は上手いこと調整することができます。

 またパラグライダー(ハンググライダーやグライダーも)のすごいところは無動力であると言うことです。エンジンが無いため風切り音しか基本聞こえません。風の音に耳を澄まし、目と耳と肌の感覚を研ぎ澄まし翼を操作します。これはとても珍しい飛行手段だと言うことができるでしょう

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 面白い経験をしたことが何度かあります。トンビに上昇気流を案内してもらったり、対地高度300m近い所に蝶が飛んでいて、なんだろうと近づいていくと上昇気流にヒットしたり。全てはこの地球で行われている自然の営みで、その中に1人ぽつんと飛んでいるとなんだか不思議な気分になります。

 パラグライダーはまさに自然との一体化を感じれるスポーツだと言えるでしょう。

パラグライダーは旅や他のスポーツとの組み合わせが豊富

 パラグライダーは旅と相性がいいです。旅は常に地面に足をつけてする必要はありません。ドローンが普及した瞬間から旅の映像に空撮が入らなかった試しはないですし、訪れた場所を空から俯瞰してみて気づくことは少なくありません。これは僕もまだまだできていないことなので、どんな旅先で翼を広げようか楽しみでしかたがありません。

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 また他のスポーツと組み合わせも無数に考えられます。登山と、スキーと、クライミングと。ソーシャルフライングという名前を使って現在ではこの組み合わせフライトがヨーロッパで広く普及してきているそうです。高く、長く飛ぶという競技性を突き詰めていった上で、「そうじゃなくても楽しいことあるよね」という発想の転換が起こっています。まさにフリースキーの黎明のような事が起こってきているのです。

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 自分の好きなこと+自分の好きなこと+特別感。これはまさに奇跡です。僕がやりたかったのがスキー×パラグライダーがこれです。本当に達成した時は「This is Outdoor!」という言葉が自然と口から出ていました。

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 映像はこちら

最後に

 まだまだパラグライダーの世界には情報が足りていません。こんなに素晴らしい世界なのになぜ?と思わずにはいられないのです。まずは僕が情報を出すことで、少しでも仲間が増えたらいいな、と思っています。

 そして一番その仲間になってくれる可能性を秘めているのがスキーヤーです。そう、あなたです。今スキーに行き詰っている方、スキーでは怪我の心配もあり攻めれなくなってきた方、より大きなアドレナリン分泌物を探している方、さあ、一歩を踏み出しましょう。

 まだパラグライダー歴一年未満の初心者ではありますが、他にも色々なアクティビティを経験した僕が太鼓判を押します。パラグライダーはすごい。

 一度空を飛べるようになったあなたを想像してみてはいかがでしょう。

今回は試験的に500円での販売をしてみました。ご購入していただきました方、本当にありがとうございました。

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