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数学のミレニアム問題~Navier-Stokes方程式~


ミレニアム問題とは

2000年にClay財団が7つの未解決問題の事であり、それぞれの未解決問題に100万ドルの懸賞金がかけられているというものである。
私は大学院の頃にNavier-Stokes方程式周りをやっていたのだが、何も専門知識がない人が見てこのミレニアム問題に近いと言えば近い(※ちょこっと触った人から見れば全く違う)所をやっていたので、この問題だけは知っている。
また2日前に実に10年ぶりにNavier-Stokesの本を買ってきてかいつまむ程度に読んで面白かったので紹介したいと思う。
大体は下記の本の2章に書かれていることである。

方程式の適切性とは?

方程式の解くという事はどういう事だろうか?恐らく数学科以外の殆どの人は厳密解を言い当てることだと思っている。即ち何らかの方程式$${f(x) = 0}$$がある時に陽に$${x}$$が何であるかを書き下すことを思い浮かべているのではないだろうか?
実際に先ほど無数にある物理学の分野をまとめて何をしたいのかざっくり紹介したnoteのバズり記事を偶然見たのだが、物理学院卒の方が書いていたそれは流体力学に関して「Navier-Stokesの解析解は知られておらずミレニアム問題として知られている」という典型的な勘違いが書いてあった。
相当鍛錬を積んでいるであろう物理専門の方も間違えるとは如何に数学が敷居の高い分野かと思ったが、まあしょうがないと思う。
本来は偏微分方程式の解を陽に出すことが一番なのであるが、残念ながらその見込みが無い、故にある意味もっと低いレベルの事を問題にしているのである。
微分方程式の適切性とは
①解の存在
②解の一意性
③解の初期値に対する連続依存性
この3つである。
ここでNavier-Stokesのミレニアム問題は「3次元Navier-Stokesにおいて、任意初期値において適切性が言えるかどうかをはっきりさせよ」というものである。何を言っているのかを誤解を恐れずに言うと、ある意味経験や観測に基づいて作られた方程式はややもすれば$${x^2 = -1, x \in \mathbb{R}}$$という意味のないものになっている可能性がある。ちゃんと方程式として適切であり意味を持っているのか?という問題なのである。

問題の本質

注:ここから先は超絶難しいです。まとめだけ読んで良いです。。
「問題の本質は非線形項$${(u \cdot \nabla)u}$$を線形化方程式からの摂動としてではなく上手くその特徴を活かした解析にある」的な事を大学院時代流体方程式をリードする研究者から聞いた気がする。そして現段階でそれが出来ていないという事だ。

アプローチ法

微分方程式なら何でもそうだが、Fourier解析は有効な手法として広く使われている。また関数解析的な手法もある。即ち半群を使うのだが、Navier-Stokesの場合はStokes Operator$${-P\Delta}$$に対する半群(※全空間の場合は熱半群と同じ)なので、解析半群として取り扱う。(※だったはず・・・。何せ10年以上前にやったことなので、ここら辺はHermann Sohrに詳しく書いてます。10年ぶりに本を開いたらベリベリ言ってました(笑))

Fourier解析

今回の本はFourier解析によるアプローチであるが、Fourier解析を使う場合は全空間における解析であることは本質的である。何故ならばFourier変換の定義が全空間に対する積分であり、周波数を可能性的に全部使わないと再現不能はFourier級数論から類推出来る要件である。即ち周期関数は周期に対する整数倍の周波数があれば原信号を再現するが、非周期ならば任意の周波数は非周期を適当に区切った周期の整数倍であろうからその全てを考慮することは本質的に必要であるが、それで十分を表す反転公式という原始的だがノントリビアルな結果が存在するから有用なのである。
故にカットオフを用いるとて空間が$${\Omega \subsetneq \mathbb{R}^d}$$ならばその部分の問題は本質的として残る問題である。

本の内容ざっくり

あまり(長くて面倒なので)数式も書きたくないし、そろそろ(疲れてきて)終わりたいので色々断念してざっくりだけ紹介しようと思う。
まずミレニアム問題の本質は3次元の大きな初期値に対する時間大域解の存在とその一意性を示す事であるが、2次元の場合はこれが言えている。何故かと言うと、2次元の場合にはvortex stretching termが無く、渦度のエネルギー型評価式が成立するからである。二次元は以下のような戦略で解ける。
⓪まず方程式をFourier級数としての方程式に直す(※微分作用素が多項式の掛け算になるのが良いところである)
①同等な積分方程式表現に直す
②ミレニアム問題には影響ない初期値の滑らかさを仮定(※Fourier Representationサイドでは多項式の減衰を示す)
②'初期値に関して複素共役の関係$${u_n(0) = u^{*}_{-n}(0)}$$を仮定(※実関数としての解を得るのが目的なのでミレニアム問題に対して寧ろ厳密)
③渦度$${w_n}$$を定義し、渦度方程式を導く
④渦度のノルムは$${|n||u_n|}$$と同値である。(※即ち周波数空間は原信号の空間と違い一様な重みではなく、基本的に減衰するのでそれを持ち上げることになって直感的に・・・(※これは私が言葉にし辛いが思った確証を得ない感覚!))
⑤渦度のエネルギー型評価式を導く
3次元の場合には渦の引き延ばしにおいて渦度を強めるtermが出てくるのでこの解析法は本質的に使えない。

職を下さい

何か書いててこれを読める人は専門的によく知っている人のような気がしてきました。
もしここまで残っている人は私に数学塾的な良い職を下さい。年収300万台なのです。

今までで一番専門職の強い記事でしたね。。
ではまた!!!


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