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誕生日

誕生日
冬陽を浴びて
窓を拭く
初めて私の顔を見て
微笑んだ母の顔想いながら


ヘルパーをやっているころ書いた詩だ。
私の生まれたのは1月19日、静岡では珍しく雪の降る明け方だったと聞く。
ロマンチストの母は「雪湖ゆきこ」という名前を考えたそうだが、
「静岡生まれで雪湖は変だろう」と父に反対されたらしかった。

その母は20年前、父は昨年旅立った。
数年前、兄が建て替えた新しい墓石を見に、静岡まで姉と出かけた。
丘の上の黒曜石で作られた今風の墓石は、冬陽を浴びて輝き、なにか薄型
テレビの画面のようにも見えた。「ありがとう」と刻まれた文字の後ろに、父母の顔がふっと浮かんだように感じた。

町の名前も消え
父母もない
それでも
故郷の丘に立てば
頬に心に故郷の風


            おわり


小牧さんの企画に参加させていただきます。
小牧さんお世話をおかけしますがよろしくお願いいたします

#シロクマ文芸部

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