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ヘアスタイル

 ヘアスタイルは、その人の印象を決定づける、かなりの要素をもっている。だから、美容院に行くたびに、どんな注文を出そうか、いつも悩む。
クシュクシュとした感じ、とか、自然な感じとか、前髪は少しおろして
あとは横に流して、とか、シャギーはあんまりいれないで、とか。でも
ゴチャゴチャ頼むよりも、写真をみせて、こんな感じ、というのが一番
わかってもらいやすい。だからといって、20歳くらいの可愛いモデルの写真を見せて、
「こんなふうにお願いします」
と頼んでみても、その通りにはならない。ヘアスタイルは、それに近くなっていても、そこに自分の顔が入る、というきびしい現実があるからだ。
「顔もこんなふうにね」と言うとけっこううけるけれど、美容師さんを楽しませてもしかたがない。
 上手だ、という評判の美容院にいけばいい、というわけでもない。
学生時代、友達から上手だからと紹介されて、某デパートの某有名美容院にいったら、ひろ~~いカウンターに通され、受け付けのお姉さんから
「ご指名は?」
と、聞かれ、自分の名前を言って大恥をかいた。そのあとはもう恥ずかしくて、注文をつけるどころか、すっかりかたまってしまった。美容師さんは、男性だったが、助手(男性)と女言葉でいろいろ雑談ばかり。最後に
「お嬢様、またいらしてくださいね」としなをつくって言ったので、もういやだ、二度と来たくない、と思った。
 家の近所にもおしゃれで、カットが上手という美容院があるが、
そこにこりもせず、黒木瞳そっくりの?モデルの写真を見せて、
「こんなふうにお願いします」
とたのんでみたら、なんと、その写真は撮影用で実際そういうヘアスタイルは無理だとか。え?プロがそんなこと言う?と思ったけれど、しかたないのである程度希望をいってまかせてみたら、思ってもみないスタイルができあがった。袴田吉彦そっくりの美容師さんが、得意げに、
「最新のヘアスタイルなんですよぉ。髪を四角にカットして
あるんです。だから短くても女らしさが充分でてる」
と、鏡を覗き込みながら解説してくれたが、パーマはかかりすぎているし、横の髪が顎の部分だけ長くて、ラーメンなんか食べるとき、しっかり汁につかりそう……家に帰ってあわててそこを切って、一息ついた。
 ソバージュが流行ったころは、髪を伸ばして、カールさせ、ベルサイユの薔薇のオスカルのようだと、けっこう気にいっていたのに、ご年配の方からは評判が悪かった。不真面目に見える、とのこと。
 ストレートパーマ、というのも試してみた。その完璧なストレートは実に
見事で、シャンプーしたまま寝てしまっても、翌朝は寝癖どころか、ゆでる前のソーメンのようにまっすぐのまま!あまりのストレートさに、少しだけやわらかさをだそうとホットカーラーで外巻きにしてみたら、毛先だけ外はねして河童そっくりになった。
今は、ゆるくパーマをかけ、肩にとどく位の長さ、という平凡なスタイルにしている。皆と同じ、ということで落ち着いた気分でいられるわたしは、やっぱり日本人だなぁ、とつくづく思う。

                 おわり


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