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【日記】人が死ぬなんて都市伝説さ

月曜、諸用のため在宅勤務の日。10時前にいそいそと起きて、シャワーを浴び、豆乳を買いに出る。週明けからオフィスにいないことへの後ろめたさが少しだけあったものの、それ以上に仕事が忙しくて疲弊。メールの返信だけで午前中潰れる。きなこ味の豆乳を飲みながら作業。週末に買った高級な方を飲む気分ではなく。夕方、手が空いたのでふとThreadsに以下の投稿をしたら、翌朝にかけてぽつぽつとリアクションがあり、Xに投下してたらフォロワー減ってたなと思う。フォロワー至上主義ではないけども。

「いくらでも使い回しの利く陳腐なワードで感想を書くような人間になりたくない」というのは、自分が文字媒体の仕事に携わる前から思っていたことで、そうならないように色々な人の文章を日々読みながら語彙を蓄えている(にしてはあまりにもスローペースすぎるけれど)。自分の感性の価値が安くならないように維持しておかないとすぐに腐敗し、鈍ってしまう。書籍から離れがちになってしまっているのもあって、明らかに学生の頃よりも感じたことを言葉にする精度が落ちた、というのは重々自覚しているので、どこかで食い止めないとキャリアとしてこの先がない。それに、音楽然りビール然り、好きならばそれなりでありたい、というのは自分の中での趣味にかける大切な矜恃なのだ。来年はビール関係の資格も一つ取っておこうかな。19時に終業して参宮橋へ。

親友のすなくじらと駅で待ち合わせ。急行トラップで遅刻してきてかわいいね。かねてから気になっていた「寄(yose)」に行く。混んでいるかと思いきや、月曜でまだ時間も早いせいか、自分たちとコの字カウンターの向かいに男性が一人座っているだけだった。食べログで事前に情報をチェックしていて、立ち飲みかあ、とそこだけネックだったけれど、実際入ると丸椅子が用意されていて安心。変わったのだろうか。席に案内してくれた店員の方、声含め容姿含め、中性的でとても優しく温和な人だった。予想通り、店員の方々もお客さんも代々木公園周辺界隈のイケイケな印象の方が多かったものの、ショーケースからビールを選んでいる時に話しかけてくれた自分より若そうな女性の店員さん然り、実際に話すと親近感のある暖かい雰囲気の方が多かった。

料理、ライムのだし巻き玉子と鶏胸肉の梅肉味噌ソース。届いた瞬間、「筋肉飯じゃん」と二人して笑った。ライムにだし巻き、どうなんだろうと疑心暗鬼になりつつ頼んだけれど、ほどよく白だしの効いたじゅわじゅわのだし巻きにライムの爽やかさと果肉感が絡んで美味しい!革新的。こういういわゆる「ネオ系」の店、一度失敗したことがある(料理が全部過剰に塩辛い)ので懐疑的だったけれど、当たりを引いて安心した。ビールはフェンネルの香りが豊かでなおかつエチケットとその名前が抜群にかわいい、ひみつビールの「かわうそぷかぷか」をはじめ、奈良醸造、UDON BREWINGと350缶×3本飲んだ。どれも全くスタイルが違うので飲んでいて飽きない。

先日誕生日を迎えたすなくじらにささやかながらプレゼントを渡す。ブラックベリーとベルガモットの芳醇な香りのするアロマキャンドル。よくあるムスクやリリィよりかは少し甘くて豪華な印象のある香りの方が、ゴシックやオカルト文化に傾倒していて、かつ博識な彼女らしいと思った。添えられたテスターシートの香りで「これ好き!」と喜んでくれて安心。自分の彼氏のこと、同棲生活のこと、仕事のことなど縦横に話す。この日記も読まれているし、自分も読んでいるし(シクロさんが書かれていた通り、自分も彼女には日記を綴ってほしいと思っているけど、伝えるのを忘れた)、同じ業種で切磋琢磨しているのもあって、なんでも話せる関係。どれだけ多忙を極めてすり減らしても稼げる時期にしっかり稼いでおかないと後が不安、という話。あくせく働いてひいこら言っているうちが華。2時間ほど滞在しただろうか。会計して、二軒目に移動する。

道を戻り、一軒家のような建物の螺旋階段を上って二階にあるダイニングバー「Bar Shanks」さんに。ご夫婦で経営されていて、肉と麦のオーナーと仲が良く、何度も肉麦のストーリーに映っているのを見たし、周年イベントにも来られていたので念願の初訪問。肉麦の常連なんですと伝えると、「あそこから流れてくる人なんてほとんどいないから嬉しい〜!」と喜んでくれた。そうなのか。フライドポテトと、鶏肉の味の濃いタレが塗された異国の何か(忘れた)を頼んで二回目の乾杯。自分は志賀高原ビールで彼女はキウイのスムージーカクテル。フライドポテト、どこ行っても頼んでしまう。今年一番食べた野菜は間違いなく芋。ビールが好きだから。シャンクスのポテトはくし切りのガリガリとしたワイルドな食感。こんがりとした焦げ目を眺めるだけで酒が飲める。

カウンターの中にいる奥さんの方を交えながら、同棲の話を延々とする。気がついたら閉店間際になっていて、後ろ髪を引かれつつお開き。まだまだ月曜なのでさすがにコントロールしていたけれど、次回は一人で週末に来てもいいかも。すなくじらが「私たちって絶対喧嘩しないよね」と言っていて、帰路を辿るタクシーの中でその言葉を反芻する。自分は彼女の器の大きさや鷹揚な姿勢にかなり漬け入ってしまっている節があるので、彼女がそういう風に自分との関係を形容してくれてホッとした。最寄り駅の前で下ろしてもらい、雨の中を早足で歩く。シャワー浴びたいけど面倒臭いけど寒いけど…の葛藤がしばらく続き、3分で済ませて早々に寝た。

火曜、二日酔いはなくとも低気圧由来の偏頭痛がひどく、昼に出社する。電車の中で皆さんの12/10の日記を読み、自分の名前、フォローしている人の名前、色々出てきてその場に居合わせたことが嬉しくなる。人の視点で書かれた日記祭の様子、自分がいない前後の時間で起きたことが書かれているというのも含め、想像力が風船のように膨らんで愛おしい。

夜、会社を出ると雨。傘を忘れてしまい、あー終わったなと思いながら会社付近のATMに立ち寄ると、隣の機体の荷物掛けにマリメッコみたいな柄の洒落た傘。自分の理性とこのままそこそこ強めの雨に濡れながら竹下通りをくぐり抜けて帰るリスクとを天秤にかけ、拝借して帰ることに。すみません。明日の朝、内側に千円札でも貼り付けて元あった場所へ戻したい。

深夜、彼氏から「声が聞きたくて」と電話がかかってくる。年末年始、彼は家族旅行で松山に行くらしい。自分の父親は生まれた時から中学生頃まで半月ごとに出張へ出るような仕事人間だったので、家族旅行というのは本当に微かにしか記憶に残っていない。幼い頃のディズニーランドと、軽井沢のたった二回だけだ。しかも、ディズニーランドの時はミラコスタの2台のベッドの間に夜中ずり落ちて痛くて泣いたし、軽井沢では熟睡していて朝食バイキングへ間に合わず、取り残された恐怖で号泣、というなかなかにショッキングな思い出しか残っていない。もう父も母も還暦すぎだし、体力がなく腰痛持ちなので旅行らしい旅行はしないだろう。二月に予定している兄の結婚式会場だって、ただでさえ真冬の寒い時期なのに、実家から片道2時間かかるので心配なくらいだ。自分も三ヶ日のどこかで帰省して、昭島や立川のビアバーで目星を付けている店があるので寄ることにしようか。調べると昭島のイサナブルーイングは正月営業をしているみたいだった。1時半におやすみと言って電話を切るも、なかなか寝付けず結局3時半に寝た。

水曜、快晴の中出社。日記祭のことを延々と思い出している。日記。さん、自分の勧めたうちゅうのGEISHAを買ってくれていたようで嬉しい。相手に何かを勧める時や贈り物をする時、自分主体で考えるよりもその人の雰囲気やバックグラウンド主体でレコメンドする姿勢が確立していて良かったと思う。日記本を作ること、BREWDOGで界隈の方々と話してた時点では毛頭考えになかったが、あの空間で出店する側の人々の明るい表情を見て悪くないかもと思った。要検討。

もうSNS上でしか繋がりのなくなってしまった同性の友人が、いわゆるプチ整形に手を出し始めている。彼女のことを特別顔が悪いとは思わないけれど、彼女にとっては自分の顔自体が致命傷と言わんばかりに劣って見えているそうだ。客観的に見て、醜形恐怖症に片足を突っ込んでいると思う。それとは違うけれど、自分も拒食症のピーク期にはどれだけ痩せて骨と皮になろうがまだ太っている、もっと痩せないと人権がない、と思い込んでいたので気持ちはわからなくもない。が、反面で自分を満足のいくようにアップグレードすることは基本的には悪いことではないと考えているので、今の段階で止めるべきだとは思わない。頻繁に施術を繰り返して破産寸前になったり、そのための資金作りとして夜職に手を出し始めたりしたら止めるだろうけど。

正直、自分の顔(外に出るために作る顔)は良い方だという自負がある。時々自撮りをして、インスタやXにアップしたがるのは自分にそれなりの魅力があることを自覚しているからだ。だけど、そういった承認欲求を晒せるようになったのは、前提として別人級に体型が変わったからだし、化粧を落とした素の自分は減量に成功した今でも受け入れ難いものがある。痩せたからといって突然二重になったり毛穴がなくなったりするわけではないから。高校生の頃から毎朝瞼に貼り付けているアイテープを外した姿だけは墓場まで持っていきたいと切に思う。

詰まるところ、自分が自分に平均以上の点数を与えられる状態でないと窒息してしまうのだと思う。モデルにはなれなくてもどこか突出した存在でありたい。学生時代の劣等感が生んだクソデカ承認欲求だ。「メイク落としても変わんなくない?」と度々言われるけれど、それはあなたがたが「メイクを落としていない姿」でしか自分を認識していないからで、実際にまだ化粧のいろはを知らなかった(今も大してわかっていないけど)頃は顔の作りが悪い上に社交的ではないという理由だけで友人を作れず、毎日教室の角で寂しく隠れるようにしながら弁当を食べていたのだ。

夜、andropの「Image Word」の再録版を聴きながら歩く。オリジナルは15年前の楽曲なのに音や声が全く変わっていなくて、彼らの再現性の高さに心底驚いた。再録版って「今のバンドの音」に加工してしまうパターンが圧倒的に多いのに。彼らのことは中学生の頃、スクールオブロックで流れていたのをきっかけに好きになった。代官山UNITのワンマンに行きたいと父にせがんで、当たったらねと了承してもらえたが結局外れた。初めて観たのは閃光ライオットのゲストステージだっただろうか。

上の話は意図して書いたわけではないけど、プチ整形の彼女と知り合ったのもandropがきっかけだった。透明感のある歌声と文学的なソングライティング、澄み切った青に優しく抱かれる感覚。自分はandropのアルファベットシリーズ最後の作品『period』を最後に聴くのをやめてしまい、その後は似た感触を持つバンドとしてペリカンファンクラブの虜になった。ドリームポップの質感が自然とそうさせたのか、andropからペリカンへとシームレスに移行したのはなんだか必然のことだったように思う。デビュー時が違うので、並列して挙げられることはほとんどないけれども。明日はそんなペリカンファンクラブの今年最後のライブ。

深夜2時すぎにサラダチキンのケイジャン風味と「がんもバー」なるものを食べる。出汁が効いていてみっちりした食感が美味しい。一年前は豆腐バーばかり食べていた。なんだかずいぶん遠くまで来てしまったなと夜な夜な考えて眠れない。帰りたいのにもうどこにも帰る場所がないような気がする。そんなことを考えて、結局4時を過ぎてから眠った。

木曜、8時前に起きて出社。日が眩しく、コートを脇に抱えられるほどには暖かい。早めに着く予定だったから、ドトールにでも寄ろうかなと考えていたのに、寝不足が祟ってか山手線の反対方面に乗車してしまっていたことを池袋に停車した時点で気づいて飛び降りる。昨夜、彼氏に「ちょっと抜けてるよね」とLINEで指摘されたけど、本当に自分はこういう節がかなりある。

夜、少し早めに事務所を出て一旦スリーフィートへ。アマクサソナーのミードスムージーが飲みたくて。店内は珍しく混んでいて、アパレル関係っぽい男性が数人いた。ミードスムージー、結構肝試し的な感覚ではいたけれど、未だに思い出すと舌の上が苦くなるほどの甘さでこれはさすがに一回きりでいいやと思った。ミードの蜂蜜の香りと大量に投入されたベリーが絡んで、アメリカのビスケットを食べているかのような纏わり付く甘さ。店主の多田さんにも「これは人とシェアして飲むべきですよ」と言われた。先に言ってくれ。スムージーサワー、色々飲んできたけれどベストオブはやっぱりうちゅうブルーイングのMUONかな。あれなら2本3本と飲めてしまう。店内には途中から子連れのパパが来ていて、娘さんの一挙一動をその場にいた全員で見守り微笑していた。小さいお子さんの発言、面白いのでつい聞き入ってしまうね。

店を出てタクシーで渋谷O-nestへ。原宿ってあんなにタクシーが多いのに全然捕まらない。やっと捕まえたと思えば運転手の態度がいい加減で心の中で舌打ちをした。観光の街だからではなくて、自分が女性だから舐めているのだとしたら甚だ嫌すぎる。でもこういう人に出会すと逆に丁寧でいたくなる。心が狭くてかわいそうですねと言いたい代わりに態度で示そうとしている。

会場前で相互フォローの人と落ち合い、中へ入る。来週インタビューを予定しているMomのワンマンに。ソールド公演だったので招待してもらえてありがたい限り。相互フォローの人、現役大学生で、卒論を書き進めながらチバユウスケの追悼noteを書いたと言っていた。フォロワーがかなり多い方なのでこちらが萎縮していたけれど、実際話すと腰が低く丁寧で、普通の音楽好き大学生って感じで良かった。

Momのライブはほんの序盤しか見られなかったけど、バンド編成なのも相俟って心地良いグルーヴが生まれていたと思う。「雑稿 pt.1」のポップかつぶっきらぼうな感じが新譜の中では好きだったので2曲目で聴けて良かった。あと客層が本当に全然わからんオブザイヤーといった感じだった。邦楽ロック好きっぽいのもいるしヘッズもいるしクラブ界隈のギャルも洋楽おじさんもいる。穏やかに僕は壊れていく。

40分ほどの観覧で名残惜しいと思いながらも足早に会場を出る。井の頭線の急行に飛び乗り下北沢へ。ペリカンファンクラブ公式が珍しく出演時間をSNSに載せていてくれたので助かった。ちょうど10分前に会場のシャングリラに着く。あまりチケットが捌けていなかったのか結構人がまばらで、これならいけそうとフロア前方へ。久しぶりの最前列、それも下北沢の地で。

ライブはセルフタイトルから「Chilico」で始まり、まあ最近よくやってるよなと思っていたら、そのままセルフタイトルの曲順通りに「プラモデル」へ雪崩れ込み、驚いたなんてものでは言い表せないほど興奮した。もうしばらくやらないだろうと踏んでいた曲のひとつだったからだ。耳を劈く轟音のフィードバック・ノイズ、〈あの人をバラバラにしろ〉とリヴァーブのかかったマイク越しに危険な香りを立ち込めたフレーズを歌い上げてシャウトするエンドウ、破れんばかりに激しく打ちつけるシンバル。シューゲイザーというジャンルを初めて認知したのがこの曲だった。2015年、12月の千葉ルック、今日と同じ最前列中央、エンドウアンリと手が届くぐらいの位置だった。

エンドウが着用していた白いワイシャツ然り、何度でもあの頃に時間を戻してくれる存在だと思う。遠くへ来てしまったことの焦燥感に苛まれていたけれど、確かに今は彼の元に近づいているのだ。いや、それがもし届ききらなくても、彼が与えてくれたいくつもの景色のことを思い返せば、それだけで生きている甲斐があるというものだ。ペリカンファンクラブに喜怒哀楽と全ての青春を捧げてこれたことを誇りに思っている。ソロ・プロジェクトになり、バンド時代にファンだった大勢が姿を見せなくなって、キャパシティが小さい箱での公演が続いても、変わらず完全燃焼のステージングを見せてくれることも含めて、彼にはペリカンファンクラブとしての活動をどうか続けてほしい。終演後にセトリくださいとスタッフに声をかけたけれど、それはNGだったみたいだった。仮にもメジャーレーベル所属だからか。

物販に立ち寄り、ex.セプテンバーミーの岸波さんと話す。この前の横浜でネイル褒めてくれましたよね、と言うと思い出してくれた。実は地元が一緒で、高校生の頃バーミーの御三方を立川で友人と追いかけたことがあるんですと言うと、ずいぶんびっくりした顔をされていた。まあそうだよな。ちなみに上述した千葉ルックでのライブはバーミーも出演していたので、その頃から岸波さんとエンドウの交流は生まれていたということだろう。点と点が繋がって、こうしてエンドウのサポート役としてデザインを担当されている岸波さんと再会できたことは個人的な歓びのひとつだ。

出待ちをしようか悩んだけれど、あまりに界隈のバンドマンが多く、どうせエンドウは外には出ずにそのまま箱打ちする流れだろうとファン同士で話して会場を後に。パノパナの岩渕、背が高く眉が太いのでわかりやすすぎる。しばらく出待ちなんてしていないけど、エンドウはステージの上から自分を見てまだ覚えていてくれているだろうか。帰宅して、明日彼氏が泊まりに来るので洗濯を手早く済ませ、舞茸とほうれん草と卵を乗せたオープンサンドを作って一番搾りで流し込んだ。全然手の凝ったものではないけれど、久々の自炊というのもあって大変美味しかった。ハモニカ横丁で飲んでいる彼氏のLINEに付き合い、1時すぎに寝た。