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連載【癌で死ぬか死刑が先か・7】犯罪の相棒

※ お読みになる方へ : 事件の詳細が書かれており、不快な思いをされる場合がございます。ご注意ください。

 その当時の留置場では、運動時間にタバコを2本まで吸えたし、取り調べの時もタバコは吸い放題やし、コーヒーも飲ませてくれて…
オマワリさんの方も面倒みがよくタバコを吸わせる為に、わざわざ取り調べと言うていで、留置場から出してくれた。
流石に刑事ドラマの様にカツ丼が出る事はないが、昔は、特にヤクザ者なんかは、(上の方)色々と便宜を得ていたと言う話をム所の中では、よく聞いた。

 これが拘置所に行ったら、タバコも吸えませんし、今は壁に背凭れるだけで、巡回してくる。
所長が鬼の首でも取ったかのごとく、怒鳴ってくる。
腰が痛くなるので、壁に背を凭れて、何が駄目なのか?
今も塀の中は人権は無いに等しいが、苦ほどではない。
俺は今回は裁判で求刑1年の執行猶予3年で出れたけど、執行猶予が切れた頃に、又、パクられてしまった。
その時は、求刑1年の実刑10ヵ月でした。(※この事件はVol.6に書いた5万前後しか盗んでないのに100万取られた云々で自分で110番した話)
その時に初めての刑務所です。
まだ30歳前後でした。右も左も判らない刑務所での生活の中でションベン刑と言う短い刑でしたが、3ヶ月の仮釈で出て、金沢市の保護会で1ヶ月ぐらいを生活して、同じ保護会に居た人から、仕事を紹介してもらった。

 仕事に在りつけたのはいいが、そこのオーナーはどうみてもカタギには見えない。
しかし、仕事の内容を聞くと、デリヘルの電話番で、これなら足が不自由な俺でも出来ると思い、午前10時から午後の17:00までのアルバイトから始まり時給は850円。
それが知らぬ間に午前10:00から深夜のAM3:00までとなり、時給から日給に変わり1日8千円!
どう考えても時給計算の方が多く貰えるのだが、、、8千円に決められてしまった。

 その内に、他の店を新しく出したいからと、そこの社長になってくれと言われ、要はただの名義借しの雇われ社長で、違法なピンクチラシを市内の公衆電話に貼って客を得ようとしてた訳で、俺はこの仕事には、裏があるぞ…と思ってましたが、やはり裏があり、その時点で俺は、保護会を出てるし、寝る場所は、デリヘルで働いている女の子が待機しているマンションだったり、アパートだったので、辞める訳も行かず…

 そのまま、ずるずるとオーナーの手口にはめられてしまい、始めたわいいが、4ヶ月もしない内に、ピンクチラシを貼る貼り子がちょくちょく警察に捕まり、それが繰り返されると、貼り子もビビっちゃって、市内じゃなく市外で貼るようになり…
そうすると、そこを縄張りにしているヤクザから電話で、クレームが来るので話合いの場を作ったりで、その内、警察署から、トバシに使っているケータイ3台を1件ずつ店の名前にしていたのだが、全てのケータイに、切っても切っても警察から電話が鳴り…
これじゃー仕事にもならなくなり、その当時の俺の日給は一万円だったんだけど、働いている女の子が半ドンだけでも客が付かないと保証で5千円を渡さなければならない、その金を俺が払うので、流石に厳しくなり、オーナーと喧嘩をして、行く場所もないのに、辞めてしまった。

 もっと俺が社会の仕組を知っていて、生活保護の制度を分かっていれば、俺の人生も、犯罪に手を染めずに済んだかも知れないが…
後で知るが、その最後のセーフティーも役所側がなるべく受けさせない為に、水際作戦をしていた。
もっとも、酷い時代とは、この頃は知る所以もなかった、、、
その話はまた、これからの人生でのでき事で酷い目に合っているので、後で述べたいと思う。

 こうして、一人で行くあてもなく、店の貼り子をしていたYに電話して、「今、なにやってんの?」
「社長どうしたのですか?」
「どうもこうもないよ。オーナーと喧嘩して辞めて行く所がないのやけど、どうや、これから一緒にぶらり旅に行かね?」
「いいですよ」と淋しさから、この元ヤクザで、どうしようもない奴とこれから起こる犯罪の相棒になるとは思わなかった。。。と向かって行く。

 土地勘が金沢はもとより富山にも詳しくて、目的地は全て、このハゲ散らかしている元ヤクザのYに任せて、これからやる犯罪もこのYが決めるという。
俺はこの寒い冬をなんとか、間違っている犯罪と知りながらも、生きる為に仕方無いと己を正当化してしまって、倫理も理性もオーバーヒートしてしまったようだ。

 一人では怖くても、共犯のYが殆ど全てをしてくれるとの事で、その気になっていた。
ホームセンターで回りが木造のナイフ(一見、ドスに見えるもの)やロープを万引した。
ナイフを共犯のYに渡した。とにかく、お互いお腹が空いたので居酒屋で酒を飲みながら、食べ物を注文する。
もちろん、お金は無い。
Yからタタキ(強盗)をすると、富山まで来たはいいが、客も居ない店って在るのか?と思いながら、居酒屋を逃げた。

 そこから車で約10分ぐらいのスナックの店を見付け、中に入ると、ママさんが一人。
まずは、酒を注文して、カラオケを唄いながら、様子を窺う。
役割は車の中で決めていた。Yがナイフを持って、脅す役。
Yが行動したら俺はそれに合わせて、俺も行動する事をYから念を押された。必ず動いてくれと。
共犯のYもタタキは初めてらしい。
とにかく、Yが行動したので、俺は、凶器一つ持ってなかったが、たまたま、カウンターの上に果物ナイフが在り、カウンターを飛び越える時に、つい、手に持ってしまった。
ママさんは叫んでいて、俺がロープで体を縛る役割だったが、縛り方を知らない事に今更ながら気付いてしまった、、、
固結びや蝶ちょ結びぐらいは知ってるが、こんなので、人をちゃんと縛れるのか?と疑問になって、このプランは直ぐ撤回した。

 女性1人に大の男が2人やし大丈夫やろ?と思い込んでたのが間違いだった。共犯から逃がれたママさんが俺に「助けてー」と抱きついてきたのだ!
ロープで縛らなかった事が、ママさんの頭の中で、強盗犯人の俺に懇願すれば、Yより優しいと思ったのか?
それとも、強盗犯として一番、なめられてはいけない立場の俺がなめられたのか?
抱き付かれ、怯えた俺の横をすり抜けて、店の外に逃げてしまった、、、
あー、、、大失敗‼︎
俺は直ぐ、ママさんを追い掛けて、手を掴んだが、このママさん、俺より力が強くて、いや必死なので火事場のクソ強か!?
共犯のYも外に出てきたが手伝わないで店の中を物色してたのと指紋を消していたらしい。
共犯のYに俺のも消したよな!!?と訊いたら「あっ〜バッチリや〜」と!
これが、パクられた後に知ったが、Yは自分の指紋しか拭いてなかったらしい!(苦笑)

 とにかく、ママさんはコンビニに逃げ込んだので、その内に警察や、検問を引かれるだろうと思い車で逃げ、県外に行く積りが…
このYが富山のフィリピンパブに、ツケがあるから払いに行きたいとぬかす。俺が呆れて、Yに「あのさぁー今さっき、タタキした訳やろ!その富山に戻って、パクられる確率が高くなるんやでぇ!!」と言っても、言う事を聞かない。
もう俺は「好きにせぇー!!」と一緒に富山市の街に行き2時間ぐらい共犯とフィリピンパブに行くことになる。

 俺個人的には、フィリピンパブはモテない男が行く店、要は日本人女性に相手にされない男らの行く店と思っていた。
Yも、頭は禿散らかしてるし、女にモテるタイプとは違う。
今、近場でタタキしてきたのに、この脳天気さんは、ほどほど呆れる。
フィリピンパブを出てからは、二人でラブホテルに宿った。
もちろん、同じベットでは寝てない。俺がソファーでハゲはベットだ。

 翌日の朝、コンビニで朝飯と、新聞を買って、昨日の俺達の事件が載っていないか調べたら、デカデカとモンタージュ付きで出ていた!!
そのモンタージュの俺の顔はまだ、ニット帽も被ってるし、顔もそんなに似てない!
だが、、、共犯のYの顔は、モンタージュそのもので、ハゲ散らかしている所が、特に、インパクトありありで、、、今更ながら、Yのハゲを隠さず、タタキをしたのは、誤算だ!
いや、てめえーの指紋しか拭いてこないハゲと一緒にヤマを踏んだ時点で誤算だった…

このYとの誤算の日々には別のエピソードがある…
このYがK刑務所に務めている時に父親が亡くなったらしく、それで家を売って、母親が200万円をYに送ったらしい。
勿論、このバカ息子と縁切りの金も込みだろう。
出所後、このYは富山市の街中のホテルで連宿して毎日のようにフィリピンパブに行っていたらしく、誰もが分かる様に、毎日毎日がその調子ならば、皆さん分かりますよね。
はい、金なんて直ぐに無くなります。200万円の金なんて直ぐです。
そこで共犯のYが考えたのが、ホテルの部屋から、留守中に100万円が盗まれたとホテル側にクレームを言ったのです。
そんなの皆さん分かりますよね!!?
はい、ホテル側は警察に連絡してます。
その時に対応した警察官からのYのモンタージュの顔で一発で身元がバレてたと聞きます。
ですので、パクられるのにも、早かったです。

そもそもタタキをし…共犯のYが富山の警察に宣戦した上に、富山市のホテルに滞在してたし。
タタキ後のモンタージュの似顔絵は、まさしく、富山県警に喧嘩を売ったのです。
道理で富山市に、共犯のYが行きたかったのが、パクられて、やっと分かりました。
ですので、もうこのハゲと組んだ時点で誤算でした。
ですが、それ以上にこの寒い冬の金沢を、行く当てもなく飛び出したのがそもそもの誤算でした。

 5分先でさえ考えられない短絡性はガキの頃から何一つ変わってない。
その場で瞬間湯沸かし器になったり、パニックになったりして、逃げだしたり、飛び出したりして、何も何も先々の事を一切考えない。
この脳天気な性格には程々困った。生きる術もなく呆れる程に拙い、、、
だから、行きあたりばったりの人生。
共犯のYには呆れたが、そんなYと行動した俺自身にも呆れる。

 俺達がパクられたのは居酒屋で、警邏(けいら)の車が、俺達の車の後を追っていたらしい。その日は雨で、気付かなかった。。。
居酒屋に入って二人して、ビールやつまみを頼んで、ちょびちょび飲み始めて、20分~30分いや10分~20分だな…客が2人入って来た。
背広姿の男性が2人。
カウンターはLの字になっており、俺達の居る逆のL字のカウンターの席に座った。
俺はこの2人になにか感じるものがあった。
まだポリとまでは判らんかったが、様子がおかしい。

 先ず思ったのが、2人ともウーロン茶ってところが気に入らねー!
それに、2人とも殆ど喋らない。
百歩譲って上司と部下として、気安く飲めないにしても、居酒屋に本気で飲みに来ているタイプとは違う。
ツマミも頼んでないし、、気になり出してしょうがなかった。
そんな時に共犯のYが外に出て電話しに行った。なかなか戻って来ない。
何か胸騒ぎがした、、、

 その時・・入り口から、4~5人の男が雪崩込んで来て、
俺に「松井広志だな!!」と訪ねてきた。
今更ジローやが、やっぱり、例のの2人はサツやった!
まぁ、俺も、これで良かったと思う。
共犯のYには程々に呆れてたし、疲れてもいた。
なんが呆れて、疲れていたかって?
俺らは逃走中の身でありながら、ヤマを踏んだ富山から出ることを拒み、
且つ俺がコンビニで買って来た、食料や飲み物を2人でパチンコ屋に行って俺は勝ってたけど、Yは負けてたらしく、俺が車に戻って、コンビニで買った物を食べようとしたら全て無くなっている始末(苦笑)
まだ、せめて、半分でも残してくれてれば、俺も、まぁーいいかってなったと思うが流石にYのこの態度には呆れたし、謝りもしないで、しれっとしている所が余計に腹立つ!
まぁ、食べられてしまった物は仕方無いと諦めた。

 とにかく空腹を感じ、車を出して、ガソリンを先ず入れ様と考えた。
Yに半分出してくれと言うと、もう一銭も無いとほざく、、、心の中で舌打ちし、こいつはアホか!!車のガソリン代も残さんで、どうこの冬の富山から、行動するねん(怒)
車で寝る事も出来んかったら凍死やぞ!こら!と言うだけ無駄か、、、
こいつはサルや…いやサル以下のカッパや!!
こいつ俺の金で何とかなると思ってたなーこざかしい奴め!
仕方無くガソリンを三千円分入れて、コンビニで、弁当とか飲み物を共犯のYの分も買って車に戻った。
Yに渡し、食べやーって言って、弁当を渡したら、このカッパが弁当の中身を見て、「ショボー」と一言!!
この一言にオレはキレた!!
俺は、このクソ、カッパに「お前いい加減にしとけよーこら!!てめぇーの金か!!俺の弁当も見ろ!お前と同じや~
お~っ!!お前がそんなことを言える立場か!!ガソリン代もねー!弁当も俺が金出してんねんぞ!それも、お前パチンコの駐車場の車の中で俺が買ってきた食べ物を俺に何一言もいわず、勝手に食べてよー!
それでも、お前は、同じヤマを踏んだ共犯か?別に俺はお前に弁当を買う義理もねーんだよ!それを、俺だって、もっとデラックスの弁当を買いたいのを我慢して、同じ弁当にしてるんやぞ!感謝こそされど、文句を言われる筋合はねー!嫌なら食べるな!」と…
これにはYも、グーの音も出なかったらしく、大人しく食べていた。

その他etcあるけど、この一連だけで、俺は疲れていた。
同じ犯罪者にしても、このカッパ(Y)は仲間意識とか同じ危機感を共有しているにも、拘わらず、まったく連帯感の欠らも一つも無い。
これじゃー元ヤクザの組から破門されて、ボコボコにされんのも分かるわ、、、
俺、、、なんでまたよりによって、こんなのと行動したのやろか。。。。。いくら、己が選んだ人とは言え、自業自得とは言え、何か俺には普通の人とは違う何かの欠落が在るんじゃないか?
いや罪を犯している時点でもう欠落しているんやが、、、
もっと何かう~ん、、、何だろう、精神的な何かとか、、、?

Vol.8につづく


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