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最終回【癌で死ぬか死刑が先か】こんにちわ、さようなら

今まで『癌で死ぬか死刑が先か』をお読みいただき、誠にありがとうございます。本日、松井さんの奥さまからお電話をいただきましたが、昨夜19時頃、松井さんは名古屋刑務所にてお亡くなりになりました。
ちょうど昨日「来週面会に行くから生きてて! 」と速達で郵便を出したばかりで、初めて会う松井さんに、私は何て言おうかと考えてました。
「こんにちわ」と「さようなら」、そして松井さんとnoteを連載出来た事の御礼を伝えたかったけど、最初で最後の対面は叶いませんでした。
松井さんのご冥福をお祈りしつつ、松井さんとのやり取りを少しご紹介し、彼がnoteに公開してと、書き残した詩や川柳など、ご紹介したいと思います。                           サユリ

先週8日の金曜日、松井さんから最後の手紙が届きました。それは私が名古屋刑務所に行って、本当に面会出来る?という確認の返事でした。食事がとれなくなり、体調が良くないと書いてたので、心配してましたが間に合いませんでした。
手書きの原稿はトータル200ページを超えました。一度に7枚まで刑務所から発送出来ますが、松井さんは乗ってると2通送ってくる時も。原稿は意味分からない箇所が度々あり、こちらから質問したり、たまにケンカしたり(笑 。noteの画面は全てプリントし松井さんに見てもらってました。最初100人読んでくれたよ! なんて2人で大喜びしてましたが、有り難い事に3万7000ビューを超えました。カバーフォトにした封筒達はnoteの原稿を送ってきた封筒です。たまに山田だったりも。
原稿とは別に、手紙も沢山いただきました。最初は「ほんにかえるプロジェクト」のプリズンライターズへ松井さんが原稿を投稿し、私が感想を書いた事から文通が始まりました。松井さんは、毎日看守の方が届いた手紙を受刑者に配る際、自分への手紙がありますようにと、祈るような気持ちで待ってると書いてました。多分寂しかったんだと思います。その文通の中で「自分の夢は自分の半生を本に書く事だった」「どんだけー!?」と、ちょっと恥ずかしそうに書いてきたので、本は無理だけど、noteに公開してみようよ! と持ちかけ、連載がスタートしました。
この新聞の切り抜き達は、松井さんが手で新聞を切り抜きし、大事に持っていたものを、私に御礼として、何回かに分けて送ってくれました。(夏には乾麺を送ってくれた事も!)もう既に松井さんが鉛筆で回答を書いた「数独」は、消しゴムで消してやってみて!と。読売新聞の「人生案内」はかなりの量で、これを読んでいると色んな考え方があるんだなと分かってきたとも。英語も新聞の切り抜きから、独学で勉強し、単語はかなり難しい物もスペル間違う事なく、使ってました。
『海と罪人』
海よ教えてください。何故海は毎日見続けても海の顔が違うのですか…
穏やかな海でもいつ見ても同じ顔じゃないのですか?なぜ荒海でも違う顔で怒ったりするのですか?
なぜ海は広くて底が深いところは闇で暗い顔をするのですか?
海よ海よ…わたしの本当の顔を教えてくれませんか?…
わたしは毎日違う顔でもいいのですか?…
穏やかな顔、時には笑って、時には泣いて…怒ったり荒れ狂ってもいいですか…
あなたに闇があるように、わたしも暗い闇を持ち続けてもいいですか…
わたしは罪人…海よ怒っているのでしたら…私を荒狂う波でさらってください…
どんな顔で怒るのだろう…わたしを暗い闇へと…
そして無に成ったわたしを光り輝く天へと疾き放してくれませんか…
海よ教えてください…海よ海よ…
松井広志(作)

手紙の中に書かれていた川柳から…
躊躇い(ためらい)を切り拓いたら吾木香(われもこう)
花火の夜、一瞬一瞬が走馬灯
生きている、一心不乱に寂しい夜
悉く群衆にゆう一貫一揆
雪化粧 この世の潔斉 生死越え
朝飯に卯の花咲いた 獄恋花
煉獄に魂逝くが 逝くでなし
空っ風も遠州浜で羽搏けり
母子草妬む心に蝉時雨
罪悪に凍え乍らも神楽信
権力に太刀打ち乍ら潤滑油
獄中で呵々大笑い 夢現
法廷は善悪出来ぬ泥濘や
松井広志(作)

…「ね! サユリさん、サユリさんは俺が自分の事を書ける人って言ってくれたけど、書けてんのかな?  学生時1回も作文なんて書いてないしね。自分の夢も将来もなにも考えてない子供やったし!」…と、整理してた手紙の文面が目に入りました。松井さんは十分書けましたよね。
松井さんの奥さまから、松井さんの伝言で「noteは掲載続けて欲しい」との事でしたので、このままページは残しておこうと思います。
皆さま最後までお読みいただきまして、ありがとうございました。

「ほんにかえるプロジェクト」プリズンライターズの原稿料(切手)を
松井さんに送った際のお年玉袋。
noteの投稿へサポートいただいた方のご寄付もお渡ししました。
松井さんはとても喜んでおられました。
皆さま ありがとうございました。


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