【大学院受験】大学院進学を考えている大学生に贈る「東大大学院」受験のリアル(後半)

以下の記事の続きです。後半では大学院受験を志すと決まった後、受験勉強に取り組み始めた大学3年生~大学4年生の様子をお伝えします。

大学3年生

情報集めに奔走、志望先の決定

前回の記事でお伝えしましたが、大学2年生の終わり際に大学院進学を心に決めた自分はまず大学院入試について調べ始めました。まずは受ける専攻を選ばなければいけないので、その選定をしていたわけです。

当然、どんな専攻でも受けられるわけではありません。例えば工学系の専攻を受けるとなったら工学分野の知識が必要になることもありますし、理学系でも自分の専門外の知識が要求されるかもしれません。

そこで、自分にとっての条件をまず明確にしました。

  • 受ける大学は国立(東大や東工大)の大学院

  • 物理か、工学系の研究ができること

  • 英語、数学、物理(+面接など)のみで受験できること

  • 物理の試験難易度は問わない

  • 英語、数学はあまりに難しいと苦しい

自分が強みを出せるのは確実に「物理」という科目1本だったので、それを基準にしました。もちろん、入学後の研究内容なども大事ですが前提として「どこが受けられるか?」という選定の仕方は大事です。

東京大学の大学院で選択肢に上がったのは以下のような専門でした。

  • 工学系研究科 物理工学専攻

  • 理学系研究科 物理学専攻

  • 新領域創成科学研究科
    (化学などの問題もあるが、選択問題なので回避できる)

一応、東工大や東北大についても調べてはいましたが、一度「東大の大学院を目指す」と心に決めた以上はあまり真剣に検討しているわけではありませんでした。「やっぱり俺は東大を受ける」と決心を固めるために調べたとも言えます。

あとはどれを第一志望にするか……という話になりますが、ここはやはりいろいろな軸があると思います。そこは人それぞれだと思いますが、よく評価軸は……

  • やりたい研究をやっている研究室

  • 研究室訪問をしてみて雰囲気が良かった研究室

  • 学科のサポート(就職や博士進学)が手厚いところ

  • 学科全体の雰囲気(理学と工学だと結構違う感じ)

こんな感じで、かなり個人の好みで分かれるところなのかなという気がします。自分の場合は上に挙げたもののどれが一番ということでもなかったので全体を総合して決めることにしました。

そうして情報を集めること数週間、決まった志望順位は

  1. 東京大学 工学系研究科 物理工学専攻 (物工)

  2. 東京大学 理学系研究科 物理学専攻  (理物)

  3. 自分の大学の同じ専攻を外部院試で受験

といった感じになりました。3つ受けるのはかえって対策が疎かになってよくないのではないかな、と自分で思ったので2つだけ受験する方針になりました。それも、基本的には対策は第一志望の「物工」に絞り、同じ科目で受けれるので理物も一緒に受けるという程度の感じです。

B4向けの入試説明会に参加、対策を練り始める

志望が決まってすぐに、試験対策を考え始めました。それが3年生の4月末とかで、私はすぐに物工のHPから入試に関する情報を集めて整理しました。

物工、理物の受験科目の概要なんかは以下の記事でガッツリ説明しているのでぜひご覧ください。受ける予定のない人も、大学院とは無縁の人でも「そんな試験なんだなー」と分かってもらえると思います。

さて、ここでもしかしたら自分にとって分岐点になったかもしれない出来事が1つあります。それが「入試説明会」です。

普通、入試説明会というのはその年度に受験するB4(学部4年生)向けに、4月や5月(場合によっては6月)あたりに開催されるものです。そこで私は、志望先(物理工学専攻)の事務に問い合わせのメールを送りました。

実際に送信したメール(黒塗りの部分は個人情報など)

一応、4年生向けということになっていたので確認のメールをして問い合わせたのですが参加自体には全く問題ないということで、ありがたく入試説明会に参加させて貰えることになりました。

もしB2,B3で大学院受験の志望先が決まっているor悩んでいる人は、こうやってB4向けに行われているものに潜り込んでいくのもかなり良いんじゃないかなと個人的には思います。入試説明会では先生方(教授・准教授)や大学院の方々と話す機会も得られるので、ほしい情報がいくらでもゴロゴロ転がっていますし。

この1回の入試説明会で、入試までのスケジュールや志望する分野など、勉強の計画作成が大きく進みました。

大学3年生の時点での戦略

この時点で自分が決めた戦略には以下の3つのざっくりとした軸がありました。

  • 大学3年生のうちに英語(TOEFL-IBT)の試験対策は終わらせる
    ※TOEFL-IBTはTOEICや英検みたいな外部試験なので事前に終わらせられる

  • 過去問を可能な限り多く手に入れて、その対策は大学4年に始める

  • 過去問を始めたときに困らない程度の基礎学力は3年生のうちに習得する

これ以外にも、こまごまとした内容があるのですがそれは単に勉強のスケジュールみたいなものです。基本的には上の3つの軸に沿って、自分に足りないものを3年生のうちに用意することにしました。

英語はTOEFL対策をしていましたが、物理では大学2年生で勉強した内容を復習していました。友達を呼んで、その友達と一緒に統計力学の勉強をやり直したりといった感じです。
後から考えれば、これはかなり良い選択だったように思います。結果的に統計力学なんかのこの時期にやった分野は自分にとってかなり強みになり、気づけば大抵の問題は解けるようになっていました。

結局のところ、大学3年生のうちはこういった勉強を普段の生活の合間に時間を見つけて差し込んでいく日々が続きました。塾講師のバイトもしていましたし、授業なんかもありましたからそちらの合間の時間を使うイメージで生活していました。

そしてこの時期から院試の準備を始めていたのは、以下の大学4年生の時期が非常に忙しい時期であることが分かっていたからでした。

大学4年生(院試まで)

卒業研究の開始、鬼スケジュールの4・5月

自分が4年生で入った研究室は、それなりに人気がある研究室でした。とはいえそれは「楽だから人気」というものでもなく、かなり研究のやる気に満ち溢れている感じの場所でした。

例えば普通の研究室だったら先生からテーマが与えられたり、先輩にいろいろと教えてもらいながらのんびりと卒業研究を始めていくような形だと思いますが、その研究室では配属が決まってから1ヶ月後の5月中旬にはB4自らが立案した研究計画を発表しなければいけませんでした。

その後も毎週のミーティングで進捗を報告しながら、先輩の手厚い(そして厳しめの)指導をうけつつ研究を進めていく……正直に言って、この大学4年生の4月~院試が終わるまでの時期が一番キツかったです。

中学で部活の団体戦レギュラーやりながら(都大会までは行きました)、受験勉強で夜の11時まで塾に通っていたこともありましたし、大学受験も勉強はしましたが、全然キツかったですね。大学4年生のほうが。

とはいえこれは選ぶ研究室に依るところが大きいです。なのでB3の人で、大学院入試を考えている人はちゃんと研究室を選びましょう。
自分の場合はとんでもない負荷と引き換えに、プレゼン力、研究の進め方、バイタリティなど大学院に入ってからも通用する能力を手に入れられました。「やってよかったけど二度とやりたくない」っていう、そんな感じです。

ちなみに、去年出た入試説明会なんかももちろん出ました。出願手続きなんかもちゃんと聞いておかないと事故りますからね。

「入試直前」の6月以降

大学4年生の6月というのは、受ける場所にもよりますが院試の1~2か月前ぐらいです。高校3年生の12月ぐらいの時期と考えるとわかりやすいでしょうか。

自分の場合は、ここら辺から過去問の演習を本格的に取り組み始めました。それまでも過去問はやっていましたが、この時期は目の前の1問1問が解けるか、解けないかが合否に直結する感覚なので試験が近づくごとに精神的にかなり消耗しました(笑)。

そして7月と8月。大学は夏休みに入る時期で、完全に受験生という感じの生活です。正直に言って、たぶん大学受験の直前期と同じかそれ以上に勉強したと思います。

そもそも問題が難しすぎてやってられないレベル(東大だから当たり前だけど)なので、とにかく少しでも多くの問題が解けるようにひたすら知識と計算力を突き詰めていく感じです。
大学受験の場合は、解けなくても時間をかけて考えればたいていのことはわかります。(わからなくても解説を読めばいいし)
しかし大学院受験の場合は、本当に問題の言っている意味が途中で分からなくなったりするわけです。マジで。
そういうわけでいくら時間をかけても解ける問題が増えていかない、みたいな焦燥感もあり、ガンガン精神力が削られていきます。ぶっちゃけ、自分は試験1週間前ぐらいはグロッキーになって完全に鬱状態でした本当に受かるのか? 受からなかったどうするのか? 本当にこれでよかったのか?なんてことを自問自答しながら、そんな嫌な気持ちを勉強することでかき消していました。

大学院入試、当日

大学院入試の当日は、緊張でかなりしんどかったのを覚えています。とはいえその日は「これさえ終われば解放される……!」という気持ちもあって、意外と試験直前よりはマシな精神状態でした。

実際の試験問題は、過去問を死ぬほどやったこともあって当初に比べれば相当解けたんじゃないかと思います。やはり努力した時間は裏切らないので、そこは勉強の良いところです。終わった後は解放感に任せて夕方から一人でお酒を少し飲んで帰りました(笑)。

「大学院入試」を振り返って

大学院入試は学部の受験よりも楽だという人がいます。まぁ「学歴ロンダ」なんて言葉があるぐらいなのである側面では正しいのでしょう。

では、大学院入試と学部の入試を比較すると、何が違うのでしょうか。

私個人の感想としては大学入試が「広く浅く」の試験に対して、大学院入試は「狭く深く」の試験であるように思います。とにかく自分の専門分野について、並大抵では得られない知識が要求されます(東大では)。

では大学院入試の問題は簡単なのでしょうか?
倍率に関して言うなら、見た目上は低くても内部生の存在を考えると外部から入るのは決して簡単とは言えない気がします。実際、内部生と外部生を比較するとその倍率の差はだいたい1倍ぐらい(1.5倍 vs 2.5倍とか)あることが多く、ちょっと勉強すれば他所の大学から誰でも入れるレベルのものではないです。

なので、軽率に手を出すのはオススメしません。多少なりとも気合を入れて取り組めるモチベーションや環境が用意できないと、当然ながら落ちます。

ただし、自分の人生を勉強という努力で簡単に変えることができる機会であるのは紛れもない事実です。社会に出てから人生を変えようとすると途轍もない労力を要するので、そういった意味では頑張ってみるチャンスなんだと思います。

入試の後

合格発表

入試が全て終わって、合格発表は9月にありました。自分が受けた東大の専攻の合格発表は、卒業研究を進めなければいけなかったので研究室に行っていました。

あまりにも卒業研究が忙しかったので、その日が合格発表であると思い出したのは帰りの電車に乗る駅でのことでした。

その場でスマホを開き、受験番号を確認。そして専攻のページから合格者一覧の番号を見て──

──自分の番号を確認した時に、思わず駅ホームででへたり込んでしまいました。

力が抜けて、ヨロヨロとベンチに座って2本ぐらい電車を見送ったのを覚えています(笑)。その間に親に電話をかけて、「俺、東大受かったわ」とあまりに淡白な連絡を入れました。

正直、自分が確実に受かると言えるほどの実力はついていませんでしたから合格を知った時には喜びと、ちょっとした非現実感がありました。ただ、その時の喜びは間違いなく自分がやってきた努力に比例する量だけあったのだと思います。

そのあとは卒業研究を頑張って(院試の遅れを取り戻すのは結構しんどかったです)なんとか発表まで漕ぎ着けて晴れて大学を卒業ということになりました。

4/12、東大入学式

東京大学の入学式は毎年4/12、日本武道館で行われます。大学院の入学式は午後、学部生の入学式の後に行われます。スーツを着た両方の新入生で九段下はごった返していてなかなか辿り着けませんでした。

しかし、当たり前なんですが東大の入学式ってでっっかく「令和6年度 東京大学入学式」って書いてあるんですよね。一緒に来てくれた母親はそれでちょっとジーンと来てしまったらしいです。

自分はその帰りに、母親にちょっと美味しい店(牡蠣を食べました)に連れて行ってもらいました。めちゃめちゃ美味しかったです。

ちなみに、実は大学院だともうこの時期って研究が始まっているんですよね。自分は初めのミーティングが4/1からあって、4/2には実験とかスケジュールの打ち合わせをしていました。

大学院に入って思いますが、やはりここはスタート地点です。ここから何を為せるか、どう生きていくかというのもまた大事なんだな、と思います。

けどこの景色を見れるのも、1年前に勉強を諦めなかった自分のおかげだと思えるので、やはり大学院を受けて良かったなと思えています。

おわりに

長文になってしまいましたが、自分の東大受験の記録はこんなところです。もちろん、書けていないことも山ほどあります。

例えば試験が終わったあとは卒業研究が死ぬほど大変でまた凄まじい日々を過ごすことになるのですが、それは大学院受験とはあんま関係ないくだりなので省きました(笑)。

まぁ、もし今大学院を受けるか悩んでいたり、これから受けるけどどうしたらいいか分からないという人の参考になっていたら嬉しいなと思います。
知りたいことなどがあればコメントや、他の記事に書いてあるかもしれないので是非そちらをご覧いただけると幸いです。

それでは、また何処かでお会いしましょう。

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