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【聖書予言】ユダヤ民族が神と交わした「呪いの誓い」の話【恐るべき契約】

リドリー・スコット氏といえば、『エイリアン』『ブレード・ランナー』『グラディエーター』などの大ヒット作を手がけた世界的な映画監督として有名だが、その彼が2014年に公開したのが「出エジプト」をテーマにした『エクソダス 神と王』である。

「出エジプト記」は「創世記」の次に登場する旧約聖書のお話で、ファラオの下で奴隷として苦しんでいたヘブライ人たちがモーセを指導者に立ててエジプトを脱出する様子が描かれている。

同記には、何十万という難民の集団が紅海を渡る際に「海が二つに割れる奇跡」が起こったと記されている(もっとも学者は懐疑的だが)。

この映画のクライマックスでも、昔のハリウッド映画の『十戒』とはまた違った形で、その壮大なシーンが最新のCGを用いて斬新かつリアルに描かれている。
さて、「モーセってこんな剣闘士ばりのカッコいい男だったの?」という疑問はともかく、ユダヤ教徒の間では今も事実上のイスラエル建国の祖として崇められている。

もっとも、モーセは難民集団の単なる政治的リーダーに留まらなかった。彼はイスラエル史上空前の「大預言者」でもあった。

なぜなら、単に神の言葉を人々に伝えただけでなく、その言葉を民が代々守るべき「律法」として書き記し、民を代表して神との「契約」を交わしたからだ。

この箇条書きが、かの「十戒」の石板である。

この契約は「出エジプト」の初期の頃に結ばれたものだ。

だが、実はモーセと民は、その「出エジプト」から40年もの歳月が流れて、まさに民族の放浪の旅が終わらんとする頃に、神ともう一つの契約を結んでいた。それがモアブの地で結ばれた「呪いの誓い」だ。

これは、まさにこれから約束の地であるカナンに攻め込むぞ、という直前に神と交わされた契約である。ちなみに、「モアブ」という名のアメリカ製気化爆弾があるが、この故事に倣って命名されたものらしい。

未来のユダヤ人に降りかかる恐るべき呪いとは……?

その地で老モーセは民を集めると、「もしあなたの神、主の御声に聞き従わず、今日わたしが命じるすべての戒めと掟(おきて)を忠実に守らないならば」と前置きした上、次のような「呪い」がことごとく民に降りかかり、「実現するであろう」と予言したのである(以下、太字筆者)。

①「主は、あなたをあなたの立てた王と共に、あなたも先祖も知らない国に行かせられる。(略)主があなたを追いやられるすべての民の間で、あなたは驚き、物笑いの種、嘲りの的となる。」(申命記28:36~37)

②「主は遠く地の果てから一つの国民を、その言葉を聞いたこともない国民を、鷲が飛びかかるようにあなたに差し向けられる。その民は尊大で、老人を顧みず、幼い子を憐れまず、家畜の産むものや土地の実りを食い尽くし、ついにあなたは死に絶える。(略)彼らはすべての町であなたを攻め囲み、あなたが全土に築いて頼みとしてきた高くて堅固な城壁をついには崩してしまう。(略)あなたは敵に包囲され、追いつめられた困窮のゆえに、あなたの神、主が与えられた、あなたの身から生まれた子、息子、娘らの肉をさえ食べるようになる。」(申命記28:49~53)

③「主は地の果てから果てに至るまで、すべての民の間にあなたを散らされる。あなたも先祖も知らなかった、木や石で造られた他の神々に仕えるようになり、これら諸国民の間にあって一息つくことも、足の裏を休めることもできない。主は、その所であなたの心を揺れ動かし、目を衰えさせ気力を失わせられる。あなたの命は危険にさらされ、夜も昼もおびえて、明日の命も信じられなくなる。」(申命記28:64~66)

ことごとく実現してしまったモーセの警告

便宜上、私のほうで番号を振ったが、モーセの時代から約3500年後の未来のわれわれからすると、異常なほど的中していることがよく分かる。

まず①の予言は、アッシリアの侵攻によるBC722年の北王国の滅亡と、新バビロニアの侵攻によるBC586年のユダ王国(南王国)の滅亡として実現した。とくに後者では、ソロモン王が20年の歳月と莫大な費用をつき込んで建てた壮麗な神殿や宮殿が破壊され、大量の人々が奴隷として連行された。イスラエルのゼデキヤ王は、眼前で王子たちを殺された上、両目を潰されて足枷をはめられ、バビロンでさらし者にされたという。

次の②の予言だが、これは上のネブカドネザルのバビロン軍の包囲の様相と合致しているが、もっと的確な事例が後世に起こった。

ポイントとなるのが「鷲」だ。鷲のマークといえば、日本人にとっては大正製薬だが、古代の人々にとってはローマ(軍)のシンボルである。

イスラエルはBC1世紀にローマの属領になったが、人々は圧政に耐えかね、紀元66年に決起した。この戦争の際、ユダヤ側が猛烈に抵抗したため、悲惨な篭城戦になってしまう。

ローマ軍の兵糧攻めによって飢餓に陥った人々は、人肉を食べるところまで追い詰められた。とくにマサダの砦では2年にわたって篭城が行われ、最後には一千人近い人々が集団自決した。ローマ軍は神殿を破壊し、金銀財宝を残らず略奪していった。

さて、第二次ユダヤ戦争とも言われる指導者バル・コクバの乱(132~135年)のあと、ローマ帝国は属州ユダヤを危険視し、ほぼ完全に滅ぼしてしまう。その後に待ち構えていたのが③の予言で描かれた運命だ。

しかも、ユダヤ人は単に離散(ディアスポラ)を余儀なくされただけではなかった。どこへ行っても迫害されたため、各地を点々とせざるをえなかったのである。

しかも、何かと理由をつけて殺された、まさにこの予言通りに。

(ユダヤ人の排斥 1100-1600年)

繰り返すが、これはまだ国を造る前にモーセが言ったことである。

パレスチナには屈強な先住民がいたため、まだ建国できるかどうかも分からなかった。その時点で、将来、ヘブライ人が自分たちの王国を持つこと、その国が異国に攻め込まれて最終的には滅ぶこと、その後は離散を余儀なくされるばかりでなく、常に迫害され、「足の裏を休める」暇もないほど移住を繰り返すこと、等などを、恐ろしいまでの先見の明で言い当てたのである。

ユダヤ人の亡国・迫害の歴史は、恐怖の呪いが現実化したものだったのだろうか。

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