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vol.2福島にゆかりのある本の読み聞かせ「ふくしまからのメッセージ」


東日本大震災から13年が経って、あの時支援をしてくださり、復興を応援してくださった方たちへ感謝を込めて、2024年1月からアクアイグニス仙台では全国御礼物産フェアがスタートしています。

このイベントでの私小松のミッションは「お客様」と「本」をつなぐこと。

施設内の温泉「藤塚の湯」にはライブラリーカフェという湯あがり処があり、1つ目は、対象県にゆかりのある本を、ミニ図書館の役割を果たす湯あがり処に2、3冊寄贈すること。

2つ目は、そこから1・2冊の本を選んで、イベント期間中の日曜日に読み語りをすること。

vol.2福島県 本の貢献活動について

vol.2福島県の読み語りのチラシです。無事終了いたしました。

福島県ゆかりの本を選び込む作業は手間と時間はかかりますが、私にとっても学びの時間です。

「子供も聞くことができる本」
「福島にゆかりのある本」

この2点を条件に、福島県立図書館に依頼。
リストにとりまとめて共有していただきました。
(福島県推薦の本は記事の最後に記載しておきます)

情報を元に、本に一通り目を通し、その中から数冊、アクアイグニス仙台の蔵書となる本を選びます。

今回ライブラリーカフェにお迎えした本は

・『あっくんとデコやしき』八百板 洋子/文,垂石 眞子/絵 
福音館書店
福島県三春町に実在する「デコ屋敷」が舞台。妹が生まれてから手伝いばかりさせられるあっくんが、お父さんの働くデコ屋敷にお弁当を届ける。イライラ気味のあっくんが出来事を通してちょっと成長するお話。

・『たかのびょういんのでんちゃん』 菅野 博子/文・絵,高野 己保/原案  岩崎書店
福島第一原発から22キロにある高野病院。おおきな地震、津波、そして突然の停電。発病院をすくったのは30年前にやってきたディーゼル発電機のでんちゃんでした。残された患者、病院スタッフとともに一生懸命みんなの命を救ったお話。

・『ふくしまからのメッセージ』わすれなぐさ/文 みみながうさぎ/絵
第一印刷

これら3冊です。
実は「ふくしまからのメッセージ」は今回リストに含まれていませんでした。

2月18日(日) 震災のあったあの日からまもなく13年が経つ日、福島県浪江町請戸の苕野(くさの)神社が再建されました。ご縁あってその日に請戸の神社におりました。このことについては別記事があるのでよかったらご覧ください→苕野(くさの)神社再建の日(福島県双葉郡浪江町)

帰りに神社から車で10分くらい離れた場所にある道の駅なみえに立ち寄ると1冊の本が積み上げられていました。

「ふくしまからのメッセージ」

津波や原発の被害が重なり、風評被害や偏見に心を痛めながら、福島にある伝統文化を残し、豊かな実りを取り戻したいと願う作者の気持ちが、スーッと私の中に入ってきました。

是非この本の読み語りをしたい

すぐさま出版社の第一印刷さんに電話で連絡を取り、読み語りの承認をいただきました。その時担当者の方が「自費出版をされた作家のわすれなぐささんにも直接伝えてあげてください」と言って繋いでくださいました。

電話で想いを直接伝えると、よかったら読み語りの日に行ってみたいと嬉しい返答をくださり、なんと!トークショーが実現することになったのです。

「ふくしまからのメッセージ」の著者 わすれなぐさ こと大塚淳子さん

そして3月3日トークショー当日を迎えました。

大塚さん、今日はよろしくお願いします
震災の時、どんな状況でしたか

2011年3月当時、私は仕事の関係で埼玉県所沢に住んでいたんですが、私の実家が福島県の浪江町のすぐおとなりの双葉町にあります。
双葉町には東京電力の原発があって、私がちょうど生まれた頃に、東京電力の原発の建設が始まっています。

震災があったとき、両親らと一度だけ連絡が取れたんですが、それから4日間くらい全く連絡が取れなくなってしまいハラハラドキドキしながら過ごしていました。時間はかかりましたが無事確認が取れて、その後福島に避難しました。私もそれから3年後Uターンで福島に戻り一緒に暮らしています。

作家をするために?

いえ、震災から10年経って本を出しました。現在は福島で環境省の職員をしており、ホープツーリズムといって、週末は仕事の傍ら、福島を訪れる外国人の通訳ボランティアをしています。

「わすれなぐさ」というペンネームはなぜつけられたのですか。

実は2つ理由があって、1つは震災から13年経って、今後風評というより、記憶すらだんだん彼方にいってしまうのではないか。忘れられてしまうかもしれない。福島のことを忘れないでねという思いです。

もう1つの理由は、わすれなぐさという小さな一年草の花が実際にあって、小さい種だけど、強く、繁殖力があって広がっていくんです。わすれなぐさの花のように、外にどんどん踏み出していけるように。福島で育った子どもたちは外に出ると心無いことをいろいろ言われることもありました。そんなことに負けないで強く育ってほしいという気持ちが名前に込められています。

この本は、どんなタイミングで出そうと思われたんですか

2021年。震災から10年目に、ちょうど気持ちが昂った時がありまして・・・それは処理水の放出が決まった時です。10年経っても福島では風評にまだ悩んでいる人たちもいる中で、これからどうなってしまうんだろうという不安もあった。なんとかしなくちゃいけない。安心させてあげなくちゃいけないなという思いで、自費出版で本を出しました。

ちょうど甥が生まれた時で、これからの子供たちに安心を残していきたいという思いから踏み切りました。

「赤べこ」厄除けや幸運の牛として親しまれる福島の伝統工芸品。絵本の中にも登場している。

伝えたいことがあったんですね。

絵本の中に子供が出てくるんですが、震災後に生まれた弟の子供がいるんです。その子がモデルになっています。

子供達の多くは震災を知らない世代になった。
気候変動による災害も多く、これからの子供たちは正解のない困難な時代を生き抜いていかなくてはなりません。

正しい情報の選びかたや、知ることの大切さを理解してもらいたいと思いました。

日本だけでなく、世界の人々にも誤解や偏見を持つことなく理解してもらいたいと思って、本には英語訳をつけました。

いわき市で介護施設を運営している友人を介して、フィリピンで介護を勉強して日本で働こうとする方たちにも読んでいただく機会があった。
絵本を通して、福島というふるさとで起きた出来事を正しく理解してほしいと思ってお渡ししました。

すると、わかりやすい内容で日本語の勉強にもなったと言ってもらえました。


最後のページに福島の郷土豊かな文具や名産などが散りばめられた地図が表現されています。

このページを開いたときに、私が10年間、FM福島のラジオ番組で福島の情報を言葉で伝えてきた美しい福島。豊かな福島が展開されているように思いました。

私は苕野神社に行った日、わすれなぐささんの書いた「ふくしまからのメッセージ」という素敵な本と出会い、その本を書いた大塚さんとのトークショーまで実現することができました。

こうして「ふくしまからのメッセージ」は、果たしてほしい役割を担いながら誰かの手元に届いていると確信しました。

たった1冊の本は、私の人生の大切な時間を、また深く豊なものにしてくれました。大塚さん、ありがとうございます。

左が私 右が作家の大塚さん

この本はアクアイグニス仙台の本館温泉棟「藤塚の湯」の湯あがり処で、お客様にゆっくりご覧いただけます。

大塚さんのホームページのTOP画像は、私が心を揺さぶられた、実り豊な福島の地図が描かれています。
こちらの「ふくしまの絵本プロジェクトHP」からご覧ください。

以下、福島県立図書館様よりご紹介いただきました福島に関連する本につきましてリストを載せますので参考にしてください。

福島県立図書館>こどものへや>おすすめの本>絵本はともだち・本はともだち
https://www.library.fcs.ed.jp/?page_id=323
「本はともだち 福島を知る・福島を伝える」

福島県立図書館>本の森への道しるべ>子どもに関すること
https://www.library.fcs.ed.jp/?page_id=345
「郷土ふくしまを知る子どもの本 風土・自然編」「同 歴史・人物編」「震災絵本」

ほか上記ブックリストにふくまれない比較的新しい児童書で福島に関係のあるものをご紹介します。

『あっくんとデコやしき』 八百板 洋子/文,垂石 眞子/絵 福音館書店 2020.3
 デコ屋敷は田村郡三春町の民芸品工房

『黄金の駒』 澤田 聖子/文,澤田 修/絵 石風社 c2018 
 耶麻郡磐梯町の石仏 その中の馬頭観音にまつわる 大蛇と龍のふしぎなお話

『たかのびょういんのでんちゃん』 菅野 博子/文・絵,高野 己保/原案  岩崎書店 2018.1
 高野病院は双葉郡広野町にある病院

『安寿姫草紙(ものがたり)』 三田村 信行/作,romiy/絵 ポプラ社 2017.10
 「安寿と厨子王」はいわき市にゆかりの伝説

『会津のむかしばなし  1 耶麻地方』 歴史春秋出版 2021.7
『会津のむかしばなし  2 両沼地方』 歴史春秋出版 2021.12
『会津のむかしばなし  3 南会津地方』 歴史春秋出版 2022.4
『会津のむかしばなし  4 会津若松市』 歴史春秋出版 2022.9
『会津のむかしばなし  5 会津地方』 歴史春秋出版 2023.4

『あきらめないことにしたの』 堀米 薫/作 新日本出版社 2015.6
 相馬郡飯舘村の農家の話

『大戸の昔ばなし』 小林 兵郎/著,小林 哲郎/編,吉野 秀郎/編 歴史春秋出版 2019.11
 大戸(おおと)は会津若松市大戸

『フクシマ』 内堀 タケシ/写真・文 国土社 2021.2
 原発事故被災地に取材した写真絵本

『災害救助犬じゃがいも11回の挑戦!』 山口 常夫/文 岩崎書店 2019.11
 飯舘村生まれの雑種犬じゃがいもの話

復興に向けて力を注がれている福島の皆様の明るい未来を、改めてご祈念いたします。


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