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谷口彰悟〜サムライソウル〜


谷口彰悟 闘えショーゴ 熱いハートを 燃やせよショーゴ





僕は、ふとした時にこのチャントをよく口ずさんでいる。



スタジアムに行くと様々なチャントが耳を突き抜ける。

キャッチーなものから胸が熱くなるようなものまで、種類は様々だ。



そんな川崎フロンターレで、ホーム等々力で、毎回のように歌われているチャントが谷口彰悟の個人チャント。



何故毎回歌われるのか。



理由は簡単。ここ数年、彼はほぼ毎試合ゲームに出ていたからである。



デビューイヤーとなった2014年は30試合に出場。左SBでデビューした多摩川クラシコがつい最近のように感じる。


なんと、そこから2022年まで毎年リーグ戦30試合以上に出場。


2015年には「リーグ戦フルタイム出場」という驚異的な記録を樹立した。




そう。僕たちは等々力に行けば、高確率でGゾーンから響く谷口彰悟のチャントを聴けるのである。



歌い慣れたそのチャントは、誇らしく、燦々と輝いているかのように、等々力をこだまする。



そんなチャントを、僕は気付いたら家で口ずさんでいる。



それくらい、フロンターレにとって、僕にとって、谷口彰悟は「身近な」存在であった。





スペイン戦前の報道


我が軍から谷口彰悟と山根視来が参戦していたカタールW杯、運命のスペイン戦直前、にわかに信じられないニュースが入ってきた。




「谷口彰悟、カタール移籍へ」



2回、いや、3回、もっとかもしれない。


僕は何度もそのニュースを読み返した。


出てきた感想はただ一つ。



「そんなわけねーだろ。」


であった。



それ以上でもそれ以下でもなかった。



谷口彰悟がフロンターレから出ていくはずがない。



そう確信していた。



この想いは、ただのサポーターの甘い幻想なんかじゃない。


キャプテンとして奮闘した2022年の谷口彰悟の振る舞いや、行動からそうであると確信していたものだった。




2022年最終戦、味の素スタジアム。

3-2で勝利するも、優勝争いをしていたマリノスが勝利したため2位が確定。

我々サポーターの元にやってきた谷口彰悟は、涙を流しながらトラメガ越しに想いを伝えた。




僕は、谷口彰悟の涙を久々に見た。



悔し涙は、2017年の元旦吹田以来だろうか。



この涙が来季への原動力に繋がるんだろう。
そうやってこのクラブは大きくなってきた。
キャプテンの涙を、来季こそは笑顔に。



そんな想いであった。





あれから僅か1ヶ月半。今日、谷口彰悟の退団が決定した。




報道から暫く経ったから、流石に受け入れる準備は出来ていた。



しかし、こうして実際に事実に直面するとまだ信じられない、信じたくないという想いが沸々と湧いてくるのを感じる。



何だろう。この感じ。




ずっと近くに居ると思っていた大切な存在が、スッと自分の手元を離れるような感覚。



失恋とも、ちょっと違う。




人生で経験したことないような、不思議な感覚だ。




もうサポーターをやって長い。シーズンオフは何も経験している。


それでも、この感覚は初めて味わう。



何なんだ。この虚無感。寂しさ。特殊だ。




残念ながら、この感情を表現できる語彙が今僕の手元にはない。



そんな想いで、僕は正式リリースを受け入れた。




そして、少し気重ではあったが、彼のコメントを読んだ。



チャレンジと、抗い



スマホの画面に収まりきらないくらいの長文コメント。


ひょっとしたら僕は眉間に皺を寄せながら読んでいたかもしれない。



何故?何故移籍するんだ?



正直、そんな想いでリンクを開いた。

そして、あるコメントで僕の手が止まる。



残りの自分のサッカー人生の中で、チャレンジをしなかったことの後悔はしたくないと考えました。

このコメントを見た時、胸をグッと締め付けられるような思いに駆られた。


「期待の若手」「次世代のフロンターレを担う存在」だった谷口彰悟も、気づけば30歳を超えていた。




川崎フロンターレのキャプテンこそ、彼に取って一番輝ける場所だと思っていた。



最終節の涙は、来季に向けた覚悟の涙だと思っていた。




心のどこかで「勝手に」中村憲剛のように、川崎フロンターレ一筋で引退するんだろうと、そう思っていた。




いや、違う。違うのかもしれない。




ひょっとしたら、もがいて、苦しんで、悩んでいたのかもしれない。




あの中村憲剛でさえ40歳で現役を退いた。



そんな「終わりがある」世界に身を置く彼は、僕らには想像もつかない悩みと、抗いがあったのだろう。


谷口彰悟の残したコメントを見た時に、シンプルにそう感じた。





「まだまだこんなもんじゃねぇ。ここからなんだよ。ここからが本番なんだよ。今ここはやっとスタートラインなんだ。終わってたまるか。安定してたまるか。」



彼が出したコメントの裏には、そんな熱い、泥臭い想いが感じ取れた。



はっきり言って、このまま彼が40歳近くまで現役を続けたら、引退した後クラブはほぼ間違いなくポストを用意するだろう。そんなこと、僕でも分かる。



でも、彼は今日そんなクラブを出ていく決断をした。



彼がコメントで残した「チャレンジ」という言葉。



そう考えると、この言葉の重みが変わってくる。




ものすごいリスクを背負って、でも、ここから頂に登り詰めたくて、彼はこのクラブを去る。





いや、違う。僕が今まで見てきた谷口彰悟はそうじゃなかった。






完璧に見えて、エリートに見えて、怖いもの無しに見えて、実はすごく人間味に溢れてて、チームや仲間のためなら平気で自分のエゴなんて捨てられる。そんな男だったはずだ。





僕が見てきた谷口彰悟は、その見た目とは正反対に泥臭くて、勝利のため、仲間のためならどんな仕事でも厭わず、自分の意思なんて平気で捨てられてしまう。




それでいて、自身の犠牲の上に作られたスポットライトに当たる仲間を誰よりも速く、全力で祝福する。




そんな男だった。だから僕は、クラブから「残ってくれ。キャプテンだろ?」と言われれば、その懇願を無視できないと思っていた。






でも現実は、違った。




彼は「チャレンジ」を選んだ。



拘りのあるボランチを捨て、一時期は代表からも遠ざかり、フロンターレの勝利に全てを尽くしてきた男は、遂に首を横に振った。




ボロボロになっても試合に出続けた。プロ入り9シーズン、リーグ戦で30試合以上出なかった年はない。




その美しい容姿とは裏腹に。とにかく、ガムシャラに。




谷口彰悟は、ひたすら闘い続けた。





そんな男のこの決断、生半可な思いなわけが無い。




物凄いリスクを承知の上での覚悟と、彼自身の中に沸き立った抗いだ。






参ったな。





もしかしたら、この移籍は川崎フロンターレサポーターが初めて観る「彼のエゴ」なのかもしれない。





そんなの、ずるいだろ。




ここまでフロンターレのために多くを犠牲にして闘ってきた男の覚悟だ。





応援するに決まってるだろ。





ショーゴ、ごめん。僕たち、もう知ってる。
谷口彰悟が世界中のどこでも十分活躍できる選手だって、もう知ってる。



だから、推す。この移籍を、僕は全力で推す。
正直全然消化出来てないけど、でも、推す。





「川崎フロンターレ代表」として、行ってこい!谷口彰悟!!











そんな想いでこのnoteを今書き綴った。
ここまで約3,000文字。こんなにまとまりの無い、執筆感の無い3,000文字は初めてだ。


まだまだ、僕は来季川崎フロンターレに谷口彰悟居ないという事実と戦うことになると思う。でも、応援する。僕は応援する。



毎試合のようにスタジアムに響いていた、谷口彰悟の原曲は「サムライソウル」という歌。


あのな、男っていうのはな
サムライなんちゃうのん
戦ったり 凄そうな事企んだりして



このフレーズ、谷口彰悟からのメッセージのように感じる。サムライか。そうだな。サムライだ。


9シーズン、ひたすらに戦い続けてくれた。フロンターレのために、ただひたすらに。


そのひたすらが掴んだ、W杯。嬉しかった。感慨深かった。



そして31歳での海外移籍。



すげぇよ。サムライだよ。




「川崎フロンターレでは30歳からでも成長できる。上手くなれる。」と、よく中村憲剛が言っていた。


中村憲剛、小林悠、家長昭博、レアンドロダミアン。


たしかにフロンターレでこれまでリーグMVPを獲ってきた選手はみんな30代での受賞だ。



そして今日、31歳のキャプテンが退団する。海外移籍を目指して、チームを去る。




飽くなき向上心で、チャレンジをする。上手くなろうとトライする。



だから、30歳を超えても成長が出来る。スポットライトが当たる。



なんだ。中村憲剛が僕らに教えてくれたことじゃんか。


なんだ。川崎フロンターレじゃんか。俺たちが見てきた川崎フロンターレじゃないか。




さぁ行ってこい彰悟。その力を、どこまでも見せつけてやれ!!


谷口彰悟 闘え彰悟 熱いハートを 燃やせよ彰悟







ちょっとしんみりしちゃうから、懐かしいやつもこの際。ね。笑





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