見出し画像

マンガのサブスクサービスは始まるのであろうか

画像2


全社横断サブスク読み放題漫画サービス出てきませんね

世の中、サブスクリプション型のサービスがどんどん出てきていますが。
漫画業界にこの波は押し寄せるんだろうか、という、

担当個人の勝手な考察(ビジネスモデルを構築している人でもなければ、アプリ内の編成にも携わっているわけでもなし、読者側の1ユーザーとしての感想)

を覚え書きとして残しておくエントリです。

先に書いておくと、漫画雑誌をサブスクモデルで購読できるサービスや特定アプリ内である程度の読み放題になるようなプランは既にあるのですが、Spotify的な、漫画での全社横断定額読み放題サービスについて、というお話になります。 

最近やっとネトフリに加入して、「こいつぁ凄ぇなぁ……」と堪能しているのですが、「そういや漫画のサブスク始まんないな」と、なんかこう突然ふわっと書きたくなったお話です。

ちょっと、Wikipediaの「サブスクリプション」の項目へのリンクを貼っておきますね。


サブスクリションっていう言葉は元々は、

雑誌の「予約購読」「定期購読」「会費」の意味がある

との事だそうで。
「買い切り(所有)」ではなく、定額を支払う事で一定期間「利用」するというサービス形態ですね。

担当個人が現在サブスクの形で加入しているコンテンツ系のサービスは、
・Amazon Prime
・Netflix
・XBOX ゲームパス(PC)
・LINE MUSIC(LINEの手先なので)
・コミックDAYS(もっとプレミアム)
・少年ジャンプ+/定期購読
の6つかな?
映像、音楽、ゲーム、雑誌の各サービスになります。
正直人間の時間は有限なので、これだけあれこれ網羅しながら各コンテンツをチェックしようと思うとコストパフォーマンス悪いんじゃないのか?
と並べて書いてみて改めて感じたのですが、しかしやはりサブスクは便利なんですよね。

先に結論を書くと、漫画ジャンルで総合プラットフォーム(?)でのサブスクは難しいと思う

ユーザーにコンテンツを提供する形の変遷で一番分かりやすいのは音楽業界じゃないかな、と思っています。

・レコード(&カセット)
・CD(&カセット)→CD(&MD)
・CD(&MP3)
・MP3(データ)配信
・データをサブスクで利用する形

という感じで、サービス形態の変化というよりも時代の変遷みたいなところを感じます。
レコード→CD→データ、という各移行期にはいろんな葛藤や戦いがあったはずなんですが、「ユーザーが便利だ」と感じる提供方式やテクノロジーが出てくると、利用者はどうしてもそっちに流れてしまいます。

二昔前くらいは、「アルバムをCDで購入してもらう」というところが音楽業界(アーティスト)の収益の大きな軸だったように感じますが、現在はアルバムをパッケージとして1つ丸っと買うという人はかなり少なくなっているんじゃないかと思います。

そもそもYou Tubeやサブスクサービスで気になった曲をスッと聞けてしまうので、「アルバム」という概念が若い世代の方にはもう分からないんじゃ……?? とも思います。

音楽業界は「MP3(データ化)」&「MP3プレーヤー」というテクノロジーの変化が起きて、その後「サブスク型サービス」という黒船が襲来してきたため、
「自分達(業界)が望んだ形で流通形態が変化したわけではない」
という部分がかなりあると思います。
今まで通りの流通形態を望んでも、そこにお客さんがいないならどうしようもない。

これはTVが普及した後の映画業界とかラジオ業界とか、ストリーミングサービスが普及した後のTV業界とか、似たような構造なんじゃないかと思います。

漫画業界も流通形態は変化しつつあるけど

個人的にビックリしたのは、こちらの記事なんですけど。

上の記事から画像を引用します。

画像1

紙のコミックスと電子コミックの比率。
思ったよりも、かなり大きく逆転してるんですよね。

そして、紙コミック誌の市場規模。
ちょっと衝撃的な縮小具合です。

電子書籍が出てきた当初、昔からある大手出版社さんの間では、
「本は紙でしょう……。電子……?定着します??」
みたいな空気がかなり強かったと思うんです。
でも今では大手さんも漫画アプリを出し、雑誌も電子で読めるようにし、単行本もほとんどのものが電子でも買えます。
担当自身ももちろん紙の本の方が好きなんですが、今では漫画の単行本もほぼ電子で購入(収納の問題)。
ジャンプだけは紙で買っていたんですが、この秋からジャンプも電子の定期購読に切り替えてしまいました。(ジャンプの定期購読は自分がサービス加入した時期のバックナンバーが全部読めて重宝しています)

ここ最近の音楽、映像、漫画、ゲームなど、コンテンツ業界での流運形態の変化は、ネットインフラが整備された事でモリモリ進んでいると思います。
これは「コンテンツのデータ化」が可能になったために「複製」が容易になった事と、ネットのインフラが整備された事で「パッケージの流通コスト」が限りなく下がった事によります。多分。知らんけど。

以前は試し読みをしてもらおうと思うと、「試し読み用の小冊子を一定部数作って(パッケージの複製コスト)」「全国の書店さん(など)に配本(流通コスト)」という物理的な手間が二段階かかったのですが。
この仕組みだと、複製と頒布に関るコスト以上に売り上げを積めるか、という損益分岐点の見極めが非常にシビアになります。(というかほとんど無理。なので、こういう試し読みはかなり少なかったと思います)
今は、「パッケージの電子データをコピー(今だとサーバに置いておくだけ)」→「ユーザーがアクセス or ダウンロード」という、頒布にかかるコストが激下がりしています。
この変化により、「1巻を無料で読んでもらう」、「○話まで無料」、という「基本無料」思想に近い形態で認知を上げる事が可能になりました。
この辺りの流れは、2009年に出た「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」という本で読めるので興味のある人はどうぞ。
2009年にこの内容って緩い予言に近い気がするんですが、先見性のある人はみんなこの未来をこの時期から見ていたのかもしれませんね。

 
しかし、漫画業界に「電子書籍」「マンガアプリ」という黒船はやってきたものの、業界の売り上げはここに来てやや伸びている傾向。
音楽業界との違いは、「何だかんだ漫画業界は現在儲かっている事」だと思います。

従来型の流通形態(CD&アルバム)が限界に達し、代替え手段を確保しきれなかった音楽業界。
紙での流通に陰りが見え始めたものの、電子書籍、アプリで無料試し読みを絡めながら話課金という今までと違う形も取り入れた漫画業界。
という感じの印象です。

サブスクサービスに向いているものって何だろう?(個人的所感)

こっからやっと本題。
自分が利用している音楽、動画サービスと漫画を比べてみて、何が違うんだろう? と考えてみたんですが。

「ながら消費できるか」

という部分が大きな違いなんじゃないかと思いました。
(ゲームはちょっと別の話)

映画だって本腰入れて見ていないと分からなくなるのは勿論ですが、でも家事をしながらとか、何ならちょっとスマホを弄りながら「流しておける」と思います。
音楽はこの辺りが顕著で、割と何をしながらでもBGMとして流しておけます。
サブスクに加入する時の心情って、
「月額これだけ払ってサービスに加入して、自分にとってそのお値段分得だろうか?」
という感じだと思うんです。
何かをしながら流しておきやすい音楽はここのハードルが低いんじゃないかと。
通勤など移動時、勉強しながら、家事をしながら、寝る時だって。
このお値段でほぼ全てのアーティストの楽曲が好きに聞ける。
アルバム1枚3000円で流通していた事を考えると、月に1000円前後で加入できる音楽配信サービスは非常に魅力的です(少なくとも担当個人にとっては)。

動画に関しては、「映画1本2時間張り付いて見る事ができない(固定で長い時間を確保できない)自分には消費しきれないサービスなんじゃないか?」とずっと感じていたんですが。
いざ入ってみると、とても便利でした(自分にとってはTVの衰退も大きい)。
こちらもながら消費も可能でコンテンツの選択肢も多く、動画1つに対する単価(映画1回分、円盤1枚分)と比較すると、非常にお得に思えました。
あと、Netflixは滅茶苦茶UIが優秀。
漫画系のサービスは絶対この作りとロジックを取り入れるべき。
(これ系の運営会社が漫画系に参入してくるパターンももしかしたらあるかもですね)
レンタルサービスと比較しても、返却に行く手間がないのはとても良いですね……。

漫画は、かなり能動的にコンテンツに向かい合わないと消費できないんですよね。
もしかすると若年層が漫画にあまり入って来なくなっている(気がする。体感)のは、これも理由なのかも……?? 

漫画サブスクが難しそうな理由(箇条書き)

●まずページをめくる
自分で行う作業が必ず入る。
これは電子でも一緒。
ここが一番、「ながら消費」に向いていないと思う点。

●自分で文字を読む
じゃあ音声流れるようにすれば? とか、自動ページ送りにすれば? みたいな発想もあるかと思いますが、そうすると動画サービスに近くなると思います。
しかし動画の販売単価と比べると、漫画1話、漫画1巻の価格でそこまでのコストをかけられるか……??
無理に動画っぽくするなら動画でいいのでは? とか。

●興味のないIPに手を伸ばしやすいか
動画や音楽は、「あんまり普段は触れないタイプのものだけど流してみようかな」という敷居が低い気がします(これまた少なくとも担当個人は)。
興味のない漫画を読んでみるか、ってハードルが高いんですよね(ながらで読めないから)。
逆にそこを色んなバナーや施策、無料試し読みで裾野を広げているのが現在の電子系の漫画サービスなんですが、それで回ってるんだからそこ以上に無理に手間をかけて広げなくて良い、という状態だと思います。
勿論いち早くそのサービス形態を整備できたところは次世代の覇権を握るチャンスがある気がしますし、なんならやろうとしてるとは思うんですが、「業界が儲かっている」と変化が起きにくいんだと思います。

●業界が儲かっている
上で書いてますけど、これも凄く大きいと思います。
今のままだと業界やっていけないぞ、という「黒船」が外から来ないと、でっかい構造改革って難しいと思うんです。
何故なら、各ヒット作の権利を持っているのは色んな出版社さんで、その各出版社さんがサブスクサービスの仕組みを承諾しないとサブスク配信できません。
「ONE PIECE」読めない、「東京卍リベンジャーズ」読めない、あんまり知らない作品が並んでいるけど読み放題だよ。
だと、やっぱりお客さんが取れないんですよね。

音楽業界は、各レーベルが一致団結せざるを得ない(または各々で承諾せざるを得ない)程の黒船来襲という状況だったんじゃないかな、と思います。
(音楽系のサブスクの分配比率とか諸々の仕組みを全然知らないのでどなたか解説して欲しい)


そんな、色んな理由が複合的に絡まって、「漫画のサブスクサービスは難しいんじゃないかなぁ……」と、思っています。

ゲームのサブスクは?

でも、ゲームのながら消費は難しくない? と思いながら読んでいたアナタ。
鋭い。

2021年1月時点で、マイクロソフトのゲームパスは登録者数が1800万人を突破しています。(今年の10月には、登録者数の増加ペースが鈍化、というニュースも出ていますが。でも凄い数だと思います)

ゲームは逆に単価が高めで、色々ゲームを試してみるというコスト的なハードルが高いために、定額で色々遊べるというサービス形態は魅力的に思えました。
ただ、これはそもそもマイクロソフトという巨大資本が札束で殴りに来ている戦法に思えるので、各ゲーム会社がサブスクモデルで追随する事ができるかというと、体力的にかなり難しい気がします。
多分、マイクロソフトは儲けようとしているんじゃなくてシェアを取りにきてるんじゃないか。

漫画だってGoogleさんレベルの会社が利益度外視で「月1000円で全ての漫画が読み放題!」、みたいな事を始めたらかなりの加入者を見込めると思いますが、ペイはできないんじゃないか……?? と思います。
焼畑農業ですよね。
札束で業界ごと叩き潰しに来るイメージ。

業界がいよいよ厳しくなってしまって、提供元(版元、出版社)が、「条件的には厳しいけどもうその条件を飲むしかない」という形で承諾をするか。
超体力の企業が、提供元側(版元、出版社)が出してくる条件を全部飲んで利益度外視でシェアを取りに行くか(それでも、このパターンはほぼないと思います。自社展開した方が良いから。そのくらいIPって大事なもの)。
このどっちかだと思うんですけど、漫画業界はまだ難しい気がします。

コミックスを出したい、という気持ちは分かるけど

あと、おまけの話なんですが。
やはり、ゆくゆくは紙のコミックスを出したい、と思われる作家さんは非常に多い訳ですが。
上でも引用しているように、そもそも紙は売れなくなってきています。
「複製」「頒布」のコストを考えると今後は紙のコミックスはどんどんと厳しくなっていくのではないかと感じています。
コレクターズアイテムに近くなっていくんじゃないか。

これからの漫画家さんはコミックスに拘るより、
「電子書籍でいかに売るか」
「連載面でいかに売るか(話売り)」

というところを考えていく方が良いんじゃないかと思っています。
実際コミックスって手間がかなりかかるのに、今はなかなか部数が出ないんですよね……(弊社の単行本まわりのパワーの問題だろ、と言われてしまえばもう反論出来ないんですが……)。
でも、アプリ内の売り上げって、なかなかのものなんですよ。
数字って勝手にオープンにできないんですけど、LINEマンガとしてはもっとここを声高に喧伝して、描き手の皆さんに魅力を伝えていくべきではないだろうか……。
単行本ビジネスは、ジャンプさんとかマガジンさんとか、超大手じゃないとなかなか成立しないビジネスモデルになってきている気がします。

あと作家さんがこれから考えていくべき事は、収益化の方法が色々確立されてきているので、自分自身で稼いでいくような方法を常に模索する事、じゃないかと思います。
「複製」「頒布」コストの低下と、アプリ・ウェブサービスの乱立で、描きたい人間総作家時代に突入している気がします。
入口の間口自体は、二昔前ぐらいの雑誌しかないような時代に比べるとかなり広くなっていると思うんですが。
作る人の人口が増えると、単純に作家1人辺りの収益は下がってしまいます。
以前より入りやすくなった事により、長く続ける事がより難しくなっている気がします。

個人的には、自分が運営しているLINEマンガ インディーズという投稿サービスに広告とかバンバン入れて、You Tubeさんみたいに作家さんが投稿する事で収益化するような形にしていきたいんですが……。

↓ LINEマンガ インディーズへのリンクです。

でもそういう大きなサービスこそ、You Tubeを運営しているGoogleさんレベルじゃないと難しいかもですね……。

LINEマンガ インディーズに投稿すると、
・企画会議ナシ!
・原稿料、話課金(売上)&広告収益の分配
・16週間のトライアル連載だが、トライアルで終了した場合は即権利返却(数字が良い場合は正式な連載に昇格)
という、「フロンティアデビュープログラム」に参加できます。
他サイトさんと並行で投稿で大丈夫ですので、是非ご投稿下さいませ……!!

「フロンティアデビュープログラム」の説明ページへのリンクです。
 画像をクリック!!

画像3

経営、運営する側も、描き手の側も、考えてやっていかないとすぐに時代って変わっちゃうよね、というお話でした。
5年後とか、どんな感じになっているのか本当に全然分かりません……。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?