見出し画像

第三回ファイザーワクチン接種

 三回目のワクチン接種券が、自治体から届いていた。自分が接種する気になった時点で、オミクロン株の流行は既にピークを過ぎていたように思う。日本社会全体として、ワクチンの供給量は充分足りており、予約を取るのも前二回と比べて格段に容易な状況となっていた。会場も、ワクチンの種別も選ぶ余裕があったため、東京都庁展望台にて、ファイザーワクチンを打つことにした。


 ワクチンの種別としてファイザーを選んだのは、モデルナワクチンの二回目接種後に、副反応として軽度の発熱と左右両腕に正体不明の発疹を経験したからであった。加えて、異なる種類のワクチンを打つことで、より高い免疫効果を得られるという情報があったからであった。
 会場として東京都庁を選んだ最大の理由は、ファイザーとモデルナの両方が用意されていて、選択可能だったからである。接種会場である都庁ツインタワーの、北展望室がファイザーで、南展望室が武田モデルナであった。(RPG風に名付けるとしたら「ファイザーの塔」「モデルナの塔」といった感じか)(日本の伝統的なRPGのコードによると、このような形状のツインタワーには、それぞれの最上階に属性やタイプが異なるボスが待ち受けていて、そのタイプに応じた攻略法が求められるのであった)(片方は脳筋ゴリ押しパワータイプで、もう片方は技や魔法を駆使してくるタイプだ)。
 またこれ以外の理由としては、自分も一度くらいは有名会場で接種してみたいということもあった。子供じみた理由であり、実際に自分は精神年齢の低い人間であった。その低さも、いわゆる中二病、思春期のただ中にある中学二年生の水準ですらなく、むしろ小学二年生に近しいレベルであった。幼稚な動機であった。その幼稚な動機による選り好みを許容出来る程度には、二〇二二年四月の日本社会には余裕があった。
 都の予約サイトは非常に繋がりやすく分かりやすい。四月九日土曜日午後の予約を取ったのが、三日前の四月六日であった。全ての手続きがスムーズに完了した。
 
 四月七日、藤子不二雄Ⓐ、安孫子素雄の逝去が報じられた。死因は、コロナとは関係のないものであった。八八歳。昭和一桁の文化人、著名人の訃報は、珍しいことではなくなった。藤子・F・不二雄、藤本弘の死去が平成初期であることと比較したら、令和年間まで生きた安孫子は、それなりに長命であるとも言えた。パンデミックの有無にかかわらず、時が常に進んでいることを感じさせられた。
 
 都営大江戸線、都庁前駅で降りる。駅の構内にも既に、ワクチン接種会場への案内が掲示されている。休日なので、駅自体の利用者はさほど多くない。



 庁舎に入る。検温と消毒を行った後に、高速エレベーターに乗り、ファイザーの塔の展望階へと向かう。会場の床には動線が表示されており、それに従って歩けば迷うことはない。前二回と全く同様だ。
 ワクチンの種類が変わっても、問診も注射そのものも、前回と変わった所は無かった。全てがスムーズであった。
 接種後の経過観察のために設けられた待機スペースが、丁度窓際の展望席になっていたが、写真撮影は禁止されている。
 エレベーターで地上に降りる。春の夕方の西新宿を、駅の方向に向かって少し散歩する。良い天気だ。
 コクーンタワーを撮影する。


 ヨドバシカメラの店頭にて、最近話題の電動キックボードのレンタルビジネスを目撃する。使用するには免許と、アプリの登録が要るようだ。


 こうして自分は、三回のワクチン接種を、全て新宿区内において行った。この週末だけ禁酒し、ノンアルコールビールで過ごした。ファイザーワクチンのためなのか、今回は副反応は全く見られなかった。
 

詩的散文・物語性の無い散文を創作・公開しています。何か心に残るものがありましたら、サポート頂けると嬉しいです。