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台風19号で食べてもらえなくなった長野りんごー1億4000個

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10月12日に日本列島を襲った台風19号によって決壊した千曲川沿いに広がる、長野のりんご名産地「赤沼」で被災したりんご約1億4000個ーー。 このノートは、出荷できなくなったり… もっと読む
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第5話 : 「りんごの苗木を守れ」ー僕らの存在意義

第5話 : 「りんごの苗木を守れ」ー僕らの存在意義

濁流は、2日ほどにわたって農園のりんご畑の約9割を覆っていた。

水が引いてようやく姿を現した畑は、もはやこれまでとは違う風景になっていた。

3日前までは、まっすぐに伸びた樹に濃い緑の葉っぱ、そして赤や黄色のりんごがたわわに実っていた。収穫を間近にひかえた、シナノスイートやシナノゴールドという品種だ。

この畑は2年ほど前から、新方式の畑を作るために少しずつ改植をしてきた。

うまくやれば同じ面

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第4話 : 「手伝いに行くよ!!」

第4話 : 「手伝いに行くよ!!」

ー10月15日。
13日未明の千曲川の決壊で浸水していた農園からはようやく水が引き、泥だらけの事務所と倉庫の撤去作業がはじまった。

作業のためにかけつけてくれたスタッフは、長靴、上下のカッパ、ゴム手袋にマスクのフル装備。

一面泥だらけの現場では、座るところもなければトイレもない。
...あたり一帯はどこの家もトイレも泥だらけで水も出ない状況だが、それは地域のコンビニやスーパー、お店でも同じなの

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第3話 : 「みんなは無事か?」

第3話 : 「みんなは無事か?」

13日未明、千曲川が決壊したという知らせが入った。

決壊ポイントは農園からほど近いところにあり、農園のある赤沼も浸水が進んでいた。
農園はすでに、事務所や倉庫、そして畑も水没しているという情報が入ってきていた。

スタッフはみんな無事だろうか...?
農園の近くにあった高齢者福祉施設が孤立し、自衛隊の救助を待っているという情報もある。

あの地域は高齢の住民も多い。
避難準備や移動が自由にできな

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第2話 : 「今年のりんごは出来が良さそうだ」

第2話 : 「今年のりんごは出来が良さそうだ」

春。冬のあいだ眠っていたりんごの枝に葉っぱが芽吹き、白い花が咲いたら、りんご農家の忙しい時期がはじまる。

夜明け前。朝の4時ころになると、ここ赤沼地域では赤いSS車(農薬散布のための農業機械)があちこちで動き始め、住民の活動時間までに散布を終わらせようとせっせと働く。

薬散にはルールがあって、
日中の時間には撒かないこと、
地域の農家ができるだけ同じ日に撒くことになっている。

散布作業が終わ

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第1話: 13日未明、農園地域の情報が入る

第1話: 13日未明、農園地域の情報が入る

13日の未明、千曲川氾濫のニュース。

フルプロ農園がある赤沼地域は、長野市が誇るりんごの名産地であると同時に、台風19号で千曲川が決壊した穂保地区の隣に位置していた。

明け方には、事務所(といっても、代表・徳永の代々続くりんご農家の1階部分に間借りしていたため、建物自体はこの地域にありふれた日本家屋である)と、玄関横にある倉庫が全て水没したとの情報が入った。

倉庫には、台風前日の11日金曜に

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台風19号被害復旧のための「長野りんご食べた気持ち募金」〜プロローグ〜

台風19号被害復旧のための「長野りんご食べた気持ち募金」〜プロローグ〜

写真:
長野市の千曲川沿いに広がるりんごの名産地・アップルラインに位置するフルプロ農園のりんご畑。水没した北陸新幹線の車両基地はこの畑のすぐ近くに有る。

12日深夜、台風19号の影響で長野県の千曲川が氾濫。

決壊したポイントは、長野市のりんごの名産地・そしてフルプロ農園が位置する赤沼のすぐそばでした。

千曲川から流れ出た濁流により、赤沼地域は4m30cmもの高さまで浸水。フルプロ農園のりんご

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