今日

溺れてしまう前に

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今日の数学、視聴覚室で映画らしいよ

黒いカーテンで閉めきられた視聴覚室で観る映画が好きだった。学期末に授業時間を余らせて、2クラスくらい合同で観るやつ。あの時間は学生にとって必要な時間だな、と思う。必要で、特別なのだけれど、きっと大人になったら忘れていってしまう。それで良いし、それが良いのだと思う。でもやっぱり学校の先生がセレクトする映画はちょっと変わってて、よく分からなかった。よく分からなかったけど、なんだか目が離せなくて、隣でマフラーを枕にして眠っている友達の寝顔をムービーに残しつつ夢中で観ていた。ついさっ

    • 18歳、一人旅をする

      18歳、1人で旅をした。反対する親をどうにか説得して、1年前の夏の日、京都という地へ向かった。朝、重たいスーツケースを抱え家を出た。気が狂いそうなほど蝉が鳴いていた。近所のバス停に着いた瞬間、なんだか凄く自由を感じた。走ったらすぐ家がある距離なのに、翌日にはまたここに帰ってくるというのに、私はその瞬間、世界で1番自由になれた気がした。多分その自由は、「今まで出られなかった狭い世界」から抜け出せた、そういう類の自由だったのだろう。 新幹線で食べる駅弁は、家で食べるご飯の数倍美

      • なれること、慣れること

        初めて行く喫茶店でくつろげる人は、才能があると思う。4限の講義が終わった後、友達との待ち合わせまで時間があったので、大学近くの喫茶店で時間を潰すことにした。いつも行っている喫茶店の前まで来たのに、「たまには探検でもするか」と、踵を返して再び歩き始めた。理由はないけど、なんだか、そうした方がいい気がした。 地下にある喫茶店に入った。想像していたより随分と狭くて、人がたくさんいた。マスターに「1人です」と指でジェスチャーすると、カウンター席に通された。テーブル席は3つ、全て埋ま

        • あれから

          目黒川の桜が満開だと、人づてに聞いた。もしも今、桜を見て綺麗だと思えたら、私はきっと“大丈夫”なんだと思う。桜を一緒に見る約束はしていなかったけれど、夏の花火は一緒に見る約束をしていたせいで、冬は北へ旅行する約束をしていたせいで、これからやってくるどの季節にも君の影がチラつくことが確定している。君を好きじゃなくても、チラついてしまうと思う。これは仕方のないことだよ。約束の賞味期限なんて無いから。 あれから、ちゃんと生活している。ちゃんと、ではないかも。それなりに生きている。

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        今日の数学、視聴覚室で映画らしいよ

          もう二度と会えませんように

          もう二度と会えませんように

          ep.0

          4年大事に使っていたヘアアイロンが壊れた。一生隣に居られると思っていた恋人と別れた。大事にしていたものから順番に崩れていく。スイッチを押しても全く動く気配のないヘアアイロンは冷たかったし、次会った時にちゃんと目を見て話し合って状況を改善しようと思っていた恋人の瞳に“好きな人”として私が映ることはもう無かった。突然失ってしまったという事実を、どう受け入れるべきなのか、私は分からない。ただその事実は確かにここに残っている。私の元に残り続けるから、私はいつかそれを受け入れなければい

          頑張り方を忘れてしまって、ずっと焦っている

          頑張り方を忘れてしまって、ずっと焦っている

          もう誰のことも傷つけないでね

          もう誰のことも傷つけないでね

          ボーイ・フレンド①

          キラキラしていた頃の話 誰に読まれなくても良いんだけど、君には読んで欲しい、私が何を思っていたのか、どれだけ君を大切に想っていたのか、ここからどれくらい傷ついたのか、君は何も知らないから、「分かってる」と言っていたけど、全然分かっちゃいないから

          有料
          300

          ボーイ・フレンド①

          ライター

          あなたのライターが羨ましかった。昔も今もこの先も、ずっとあなたに必要とされるライターになってしまいたかった。 やっと光が差したと思った。それはまるで、私があなたを、あなたが私を知るずっと前から、そこにあったかのように穏やかだった。あなたが恋人になってから。いや、私の世界であなたの存在が確かになった頃から、私は随分と変わった気がする。それは、その変化は、本当に色んな面で起きていった。時間と労力を惜しむことが、減った。文通から始まった恋。あなたに宛てて手紙を書くのは、本当に緊張

          ライター

          今度有料で記事出してもいい?300円の。理由はその中にちゃんと明記するから。

          今度有料で記事出してもいい?300円の。理由はその中にちゃんと明記するから。

          悲しかったんだって

          中学時代の親友と会った。吉祥寺の小洒落たイタリアンレストランで、数ヶ月前に迎えた私の誕生日を祝ってもらった。秋に会って以来、3ヶ月ぶりだった。中学時代、生徒会の役員だった彼女は、来月元生徒会で集まるんだと話した。「そういえばもう次は私たちが成人式なんだね」なんて会話から始まり、「あの子は今どこで何しているんだろう」とか、「あの子の苗字が思い出せない」とか、そういう他愛もない話をした。その流れで、「あの頃あなたが仲良かったあの子、最近会ってる?」という話題になるのは、ごく自然な

          悲しかったんだって

          自分のことを信じられないのに他人のこと信じられるわけがない

          自分のことを信じられないのに他人のこと信じられるわけがない

          ずっと漕ぎ続けた船を降りるのは、とても怖かった。 登下校中の電車やバス、病院の待合室、旅行先で何度も繰り返し読みボロボロになった英単語帳と古文単語帳。書き込みしすぎて文字だらけになった参考書。そういうものを見ると、少しだけ自分を認められる気がした。「模試の結果で落ち込むのは、納得するまで努力してから」と決めていた。第1志望は、D判とE判を彷徨い続けていた。模試の結果が返ってくる度、頭を冷やそうと駆け込んだトイレは、いつも誰か先客のすすり泣く声がしていた。それでも絶対に負け

          1月13日

          東京で雪が降ったらしい。Twitterのトレンドに「東京 初雪」の文字が並んでいるのを見つけた。「まだ降っていたりして」なんて、淡い期待を胸に窓を開け、外に頭を突き出した。鬱々としながら机に向かっている間に降って、今はもう止んでしまったようだ。どうやら空の機嫌は少し良くなってしまったらしい。すぐに頭を引っ込めるつもりだったのに、気づけば5分くらい頭を出していた。特に意味はなかった。私の家とお隣の家の間に空いた、人一人分の隙間から覗ける妙に明るくて濁った空は、何だか薄気味悪かっ

          1月13日

          卒業文集

          同級生に見つかりませんように、なんて、ね、まあ1年経ったし誰も読んでいないだろうと思ったので載せてみます、横書きよりもこの感じの方が私は好きなので粗い画像で失礼します

          卒業文集