メディアの交代を目撃してるのかもしれない

随分昔だが、テレビが「マスメディア」として一定の地位を確立したのは、「浅間山荘事件」がきっかけだったという番組をみた。
曰く、新聞は翌日にならないと事件の全貌が見えないのに対し、テレビの生中継はとても衝撃的だったこと、リアルタイム性が受けたのだといっていた。

浅間山荘事件から45年。かつては「生中継」のときはブツブツ切れていた画面もスムーズになった。特に90年代から一般化してきたネットの成長はすさまじく、今は時差さえ乗り越えれば、遠くヨーロッパでやっている音楽番組が世界中にネット生中継されて、見ることができる。
ネットの発達によって私たちが得たのは「自分で情報を選んで見ることが出来る」自由だ。

WOWOWやスカパーなどのBS,CS放送が出てきたとき、「これでテレビで何も面白いのがやっている時間がないという状態が解消できる」と期待して、肩すかしを食らった人は結構いると思う。
どこを契約していようと、どれだけチャンネル数契約をしていようと、どういうわけか、好みの番組がやってないときはやっていない。
音楽チャンネルだって好みの曲を流しているとは限らないし、映画チャンネルも同様。もっと特化している宝塚チャンネル(スカイステージ)だって、必ずしも自分の好きなトップの過去作品だけが流れているわけではない。

ネットの発達によって私たちが得た自由は「放送局が選択していない何か」を見る自由だ。私はノルウェーのバンド(a-ha)のファンだから、ノルウェーの番組をよく見る。ノーベル平和賞受賞コンサートは、日本で放映される場合はテレ東で放映されるが、必ずしも放映されるわけではない。これには、テレ東の選択が働く。しかし、ノーベル平和賞受賞コンサートの模様は、ノルウェーの放送局がネット配信しているから、早起きさえすれば、「生中継で」見ることができる。

先日、ジャニーズを退所した元SMAPの3人(稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾)が72時間ホンネテレビというのをネット配信番組で行った。
かなり反響を呼んだが、キー局のワイドショーではあまり触れられなかった。
また、同様に彼らがでたGQ Japanの表彰式も、関東キー局のワイドショーでは彼らの存在を出来うる限り小さくしているのが丸わかりだった。
ネット上では、GQ Japanの売り切れ続出の声が相次いだにもかかわらず。

私は(a-haのボーカル Morten Harketの)ファンサイトをやっている関係上、iPhoneのニュース設定をノルウェーのニュースが流れるようにしている。
そうすると、その時点で日本で報道されていないニュースもあったりして、自分がファンサイトに載せる記事を選択するように、日本で報道されているニュースも「選択」されていることを日々実感している。それは、ファンサイトをやってるからこそ、より強く感じることがあるんだろうな…と思っていたのだけれど、元SMAP関連ニュースについての、「テレビでは扱わない・出来る限りスルーする」姿勢は、ネットをディープに利用していない層にも、「ニュースは恣意的に選ばれている」ことを見せてしまった。それどころか、72時間ホンネテレビは「再放送」ではいが、期間限定でハイライトシーンをビデオ配信していていつでも見ることができる。GQ  Japanの表彰式の様子も、GQ Japanのサイトのビデオで見えてしまう。
以前なら、新聞とテレビが無視すれば「存在をなかったことに」出来たことでも、逆に「明らかに無視している」ことが明確になるばかりで、テレビの「ありのままをリアルタイムに写す」という機能が、「ありのままの裏側まで映し出す」状態になってしまった。

ワイドショーなどで、ラジオや記者会見の様子を「好き勝手に」切り取られていたことについても、ネットで本人が発言する以上、全文が見えるようになった。それは炎上する可能性もあるけど、同時に「捏造されない」自由を手に入れたとも言える。勿論、ネットだって、火のないところに放火して「火の亡いところに煙は立たないからね」とうそぶく輩はいる。でも、それは恐らく、テレビや週刊誌で「捏造だけ」が報道されるより、ずっとマシだと思う。

本来、テレビが視聴率を気にするのは「広告収入」のための視聴率をあげるためだ。でも、最近は同じメンバーばかりが登場することで「ゴリ推し」と揶揄されることもある。そして、あまりにもどこかの事務所ばかり気にして、本当にあったことをなかったことにする姿勢で、浅間山荘事件のときに得た「起きていることをそのまま流すことによる信頼」を一気に今、失っていると思う。「WOWOWやスカパーがあっても、見たい番組がないは解決しない」と前述したけれど、少なくともその二つと、ネットのコンテンツを組み合わせると、好きなものが好きな時に見られたりするのだから、いじめのように恣意的に無視する報道を見たい人はどんどん減っていくだろう。その結果、視聴率はどんどん下がっていく可能性が大だ。勿論、広告収入も減るだろう。つまり、視聴率のために特定の団体に媚びた結果が、広告収入の減収になるという皮肉。

テレビが元SMAPを無視すればするほど、信頼を失っていくというのは、今までも行われてきたメディアによる虐めの因果応報っぽくてスカッとする。同時に、これはテレビにとっての「浅間山荘事件」がネットに起きている気がする。つまり、私たちはテレビからネットへのメディアの本格的な転換のきっかけとなる事件を目撃しているのではないかと思う。

そうそう、宝塚のCS番組スカイステージは、当初、舞台を放映することで、客が減るのではないかと思ったそうだ。しかし、過去作を放送することで昔のファンを呼び戻すことに成功し、その人達が新しい人にも興味を持ってくれることで、客は増えたのだとか。宝塚では、卒業した人によるOG公演も行われ、それで結構な集客をしている。そうやって、親子、あるいは親子孫の三代での客層を獲得している。ジャニーズは、その特長からよく宝塚と比較されるけど、こういった部分については宝塚を見習ってみたらどうだろう。卒業したい人は快く送り出し、でも、自分のところのイベントにも出来る限り出演してもらうとかして。締め付けるより、よっぽど良い結果が得られると思うんだけどな。



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