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【石川梨華バースデーイベント2023~ただいま♡~】僕のガチ恋も戻ってきそうになりました

 去る1月21日の土曜日、「石川梨華バースデーイベント2023~ただいま♡~」が、東京FMホールで催されました。僕はもちろん申し込みをして夜の部に当選し、D列19番という良席に座って、梨華ちゃんと最高に楽しいひとときを過ごしました。

 当日は9時ごろに起床し、歯を磨いて髭をていねいに剃りました。そして鼻毛を念入りにカットしました。1日使い捨てのコンタクトを入れて頭髪に長いことドライヤーを当て、鏡を見つめて「よし、今日はかわいい!」と自分を褒めました。おじさんだって女の子ですから、好きな人に会うときには身だしなみを整えておしゃれをしたいのです。服装は、ピンク色のロングTシャツを着て、紺色のダッフルコートを羽織りました。ユニクロのジーパンを穿いて、誕生日に友人からもらったピンク色のスニーカーを履きました。ピンク色を2箇所に配したのは、梨華ちゃんのイメージカラーを意識してのことでもあります。

 それから読書などをして心穏やかに過ごし、14時くらいに家を出ました。日課のウォーキングを兼ねて、大宮駅まで30分ほど歩きます。梨華ちゃんは雨女だと言われているけれど、その日の空はとてもよく晴れていました。僕は冬の太陽の優しい光を浴びながら気持ちよく歩きました。

大宮駅に着きました

 バースデーイベント会場の東京FMホールは、都内の半蔵門駅の近くにあります。じんわりと汗をかきつつ大宮駅に到着した僕は、埼京線の各駅停車に乗ってゆっくりと池袋駅へ向かいます。30分ちょっと電車に揺られて池袋駅に着くと、地下鉄有楽町線に乗り換え、永田町駅まで行きます。それからふたたび乗り換え、半蔵門線でひと駅のところに半蔵門駅はありました。

地下鉄の半蔵門駅

 開場時間の17時15分までにはまだ少し時間がありました。僕は駅近くのこぢんまりとした名もなき公園に立ち寄ってベンチに腰を下ろし、一息つきました。

名前のない小さな公園

 けっこうな歩数を歩いたことによってやや喉が渇いていた僕は、ペットボトルに入れて持ってきていた水道水をごくごくと飲みます。日は暮れつつあって風は冷たかったし、水道水も冷えていました。身体が内からも外からも冷やされ、僕は「ふみゅう。寒いお…」と小声で呟きました。その公園には僕以外だれもおらず、気のせいか心も寒かったです。ふと腕時計を見ると17時15分を指していました。開場時間です。僕はゆっくりとベンチから立ち上がり、東京FMホールに向かって歩き出します。

 公園から3分ほど歩くと、東京FMホールの入っているビルに着きました。オタクたちの人混みを縫って中に入り、階段で2階に上がります。するとテーブルが設置されており、その上には小さな検温の機械が2台置いてあります。僕はそこに手のひらをかざしました。「ピー!」という音とともに「LO」という文字が表示されました。どうやら体温が低すぎるようです。係の人に「手首ではかってください」と指示され、今度は手首をセンサーにかざします。再び「ピー!」という音が鳴りました。さらに4回ほど検温を試みたけれど、全て「LO」でした。とうとう係の人は諦めて「もう大丈夫ですよ」と言ってくれました。体温が低すぎる分には問題ないみたいです。たぶん寒風の吹きすさぶ公園に30分くらい滞在したから、身体が冷えきっていたのでしょう。僕は「ははは…すみません…」と苦笑いを浮かべながら、消毒液のボトルをプッシュして手指の消毒をしました。

 先に進むとグッズ売場があったので、そこに並んで梨華ちゃんの生写真を購入しました。わけあってお財布の中身がすこぶるさみしいので、2L生写真の4枚セットを1つだけ。本当はアクリルスタンドキーホルダーも他の写真も欲しかったから、胸がしくしくと痛みました。

 そして僕は入口に立っている係員に、入場するための3点セットを提示しました。座席番号の書かれたメール、ファンクラブの期限証、マイナンバーカードです。顔を確認する必要があり、マスクを下げるように言われ、素顔をさらしました。まるでパンツを下ろしているようで恥ずかしかったです。

 厳しい審査を通過して無事に入場した僕は、とりあえずトイレに行きました。イベントの途中で尿意に襲われたら困ってしまうからです。おしっこを終えて廊下を歩いていると、ヒッシー会長の姿が目に入りました。ヒッシー会長は、梨華ちゃんオタ界隈の長老的な存在です。笑顔を浮かべ、オタク仲間たちと談笑しています。とても元気そうで良かったです。梨華ちゃんのためにも、ヒッシー会長にはできるだけ長生きをしてほしいなと思いました。

 僕は自分ではぜんぜん覚えてないんだけど、昔は「僕以外の梨華ちゃんオタは全員ぶっころしてやる!」と息巻いていたそうです。確かに僕は推し被り敵視が激しかったけれど、そこまで暴力的な発言はしてなかったように思います。でも友人のきっく~が先日、確信を持ってそう言っていたので、きっとそうなのでしょう。すみませんでした。今ではぜんぜん「ぶっころしてやる!」なんて思っていないから安心してください。むしろ梨華ちゃんオタのみんなには、健康に長生きしてほしいです。みなさんとともに梨華ちゃんを支えていきたいです。僕も高血圧や不整脈があるし、腎臓も弱っているので、健康には十分気をつけて生きていきたいと思います。最近は禁酒とウォーキングをがんばっています。

 僕の席は、D列の19番。4列目の右のほうで、かなり良い席です。梨華ちゃんの表情をつぶさに視認することができそうです。1年ぶりに梨華ちゃんに会っても取り乱してしまわないよう、自分の席でゆっくり息をして心を整えていたら、オタ友のきっく~に「ふっちさん、精神統一しているところすみません!」と話しかけられたのでビックリしました。「あなたは梨華ちゃん現場にもいるんかーい! 神出鬼没だなあ!」と思いました。きっく~は中澤裕子オタで、最近はLoveCherishという地下アイドルを情熱的に応援しています。きっく~は心を整えていた僕に気をつかったのか、挨拶だけしてすぐにどこかに行ってしまいました。

 客席にはまだ空席が目立っていたけれど、時計の針が18時をさすと、ほとんど遅れることなくイベントが始まりました。1月19日に38歳になったばかりの梨華ちゃんが、さっそうとステージに姿を現しました。梨華ちゃんは白いふわふわのシャツと、グレーのロングスカートを身につけており、とてもほっそりとしています。そして洒落にならないほど可愛くて美人でした。僕が熱に浮かされたように梨華ちゃんを見つめていると、最初のコーナーが始まりました。インスタグラムにも投稿されなかった梨華ちゃんの秘蔵写真が、次々と巨大なスクリーンに映し出されていきます。

太っていた頃の梨華ちゃん

 梨華ちゃんは、イベントに参加した我々だけに、最高に太っていたときの写真を見せてくれました。梨華ちゃんは、上に掲げた写真と同じくらい太っていました。2人目の息子を出産したあとしばらく、その体型だったようです。僕はそのぽっちゃりした梨華ちゃんと、目の前のほっそりした梨華ちゃんを交互に見やりながら思いました。「この状態から現在にいたるまでには相当努力したんだろうな。禁酒したのは間違いなさそうだ。酒を飲んでいたらあんなには痩せない。僕も梨華ちゃんを見習って禁酒をがんばろう。そして梨華ちゃんとともにほっそりし、ともに健康に生きていこう」と。

 そのあと、梨華ちゃんが息子2人と一緒に写っている写真がスクリーンに映し出されたんだけど、梨華ちゃんは2児の母とは到底思えない可愛さだったので笑いました。「こんなのどう考えたって息子たち、マザコンになるのは避けられないでしょ!」と思いました。

 梨華ちゃんの可愛らしい写真をみんなで眺めて萌えるコーナーが終わると、次は梨華ちゃんへの質問コーナーが始まりました。僕はこのあたりで、またぞろ小便がしたくなってきました。「開演前にちゃんとトイレ行ったのに、どうして尿意が来るんだよ!」と僕は心の中で、腎臓に対して激しく怒りました。不摂生により弱り切っている腎臓の「ふみゅう…」という声が聞こえたような気がしました。

 僕はそれ以降、ずっと尿意に耐えていたので、イベントの内容の半分くらいはよく覚えていません。ですから、この記事における記述に事実との相違があっても許してください。頻尿おじさんはつらいよ。これ以上腎臓が悪くならないように気をつけたいと思います。かかりつけ医からは「あなたね、このまま行くと人工透析をすることになりかねないよ」と言われています。人生において何をしたくないって、人工透析だけはやりたくないですから、がんばって節制します。

 梨華ちゃんへの質問は、質問の印刷された紙がボックスから取り出されて読まれる、という形で行われたんだけど、同じ人が2回読まれたりしていました。「たぶん少ない数の人がたくさん質問を送ったんだろうな」と思いました。今となっては、熱心な梨華ちゃんオタの数は限られていますから。ちなみに僕は質問を1つも送っていません。梨華ちゃんのことは、少しも絡むことなく、できるだけ遠くから見守っていたかったからです。握手もしたくないし、写真も撮りたくない。コミュニケーションも取りたくない。ただ会場の客席から梨華ちゃんを見つめ、見つめ終わったら席を立って会場を去る、それだけしかしたくない。そう思っていました。

 梨華ちゃんはオタクからの質問に答えつつ、何度か「石川梨華が戻ってきた!」と自信ありげに言いました。僕もそれには同意しました。梨華ちゃんの可愛さもテンションも、だんだん戻ってきています。そして恐ろしいことに、僕の梨華ちゃんに対するガチ恋もひたひたと戻ってきつつありました。僕は心のなかで、ガチ恋に対して「お前は戻って来なくていいんだよ!」と告げました。ガチ恋は一瞬ひるんで足を止めましたが、すぐに一歩また一歩とこちらに近づいてくるのでした。

 梨華ちゃんへの質問コーナーが終わると、ライブの時間が始まりました。1曲目は伝説の名曲、『理解して!>女の子』でした。「普段から『おじさんだって女の子なんだよ?』と主張している僕に対する私信だ!」と思いました。おじさんだって女の子なんだから、理解されたいのですよ。梨華ちゃんは可愛らしく歌を唄いながらゆっくりとステージ上を移動し、僕の真正面に立ちました。そして梨華ちゃんと目が合いました。あるいは合ったような気がしました。僕は嬉しさと愛しさで胸の中がいっぱいになり、涙が出そうになりました。

 僕の気のせいかもしれないけど、梨華ちゃんはライブ中に、以前よりもオタクの顔をしっかり見るようになっていました。「梨華ちゃんはオタクのことをすごく信頼しているし、心を許している。僕は梨華ちゃんのその信頼に応えられるような、立派なオタクにならねばならない。もうインターネットで、リカニーのこととか書かないようにしないといけないな」と思いました。

 2曲目には、モーニング娘。の隠れた名曲、『いいことある記念の瞬間』が歌われました。梨華ちゃんは「みんなと一緒にフリができる曲を選んだの」と言って、曲が始まる前にフリコピ講座を開いてくれました。僕はフリコピをやったことがほとんどないため、梨華ちゃんに丁寧に教えられてもほとんど覚えられませんでした。なので僕は梨華ちゃんと一緒に踊ることを断念し、梨華ちゃんを見つめることに専念することにしました。周りのオタクたちはみんな慣れたようすで上手にフリコピをしていたけれど、僕は地蔵のように固まったまま梨華ちゃんを凝視しました。舞台の上で軽やかに踊る梨華ちゃんは現役のアイドルみたいに可愛らしかったし、とてもキラキラと輝いていました。

 梨華ちゃんは2曲目を歌い終わると、「こうやって石川梨華が戻って来られたのは、応援してくれるみんながいるおかげです」という趣旨のことを言い、目に涙をにじませていました。僕は心のなかで「梨華ちゃん泣かないで! 永遠に好きだよ!」と叫びました。梨華ちゃんが涙をこらえながら笑顔で歌った3曲目は、梨華ちゃんの代表曲である『ザ☆ピ~ス!』でした。その曲の音楽が流れているあいだ、梨華ちゃんの比類なきアイドル力によって、東京FMホールにはとても暖かいピースフルな空気が満ち満ちていました。

 『ザ☆ピ~ス!』を歌い終えた梨華ちゃんは、「わたし、最後にどうしても言いたいことがあるの」と言って、少し間をとります。そして舞台の中央で力のかぎり「ハッピー!」と叫び、満面の笑みで両手を広げました。僕も「ハッピー!」と心のなかで絶叫しました。梨華ちゃんは客席のオタクたちの顔をよく見つめながら手を振り、舞台から去ろうとします。そして舞台から姿を消す直前に、「グッチャー!」と言ってオタクを歓喜させました。そのときの梨華ちゃんの声はきわめて力づよく、我々の心の奥深くまで響きわたりました。僕は「チャーミー石川が戻ってきた!」と思って感動しました。

 そしてイベントは終了し、しばらくオタクたちの温かい拍手が鳴りつづけました。「梨華ちゃんは去年のバースデーイベントをきっかけにインスタグラムを始めたから、今年はツイッターを始めるかもしれない…」と不安に思っていたけれど、最後まで「わたしツイッター始めます」という宣言はなかったのでホッと胸をなで下ろしました。梨華ちゃんがツイッターを始めたら、気まずいので僕はツイッターをやめてマストドンに移住します。

 ちなみに僕は、梨華ちゃんのインスタグラムを見たことが一度もありません。梨華ちゃんの妻や母親としての一面を見るのがつらいからです。梨華ちゃんが「私のインスタグラム見てる人~?」と会場のオタクに尋ねたとき、9割くらいの人が笑顔で手を上げていたので、やや気まずかったです。僕は梨華ちゃんオタ失格なのかもしれません。

 オタクたちの拍手も止んで、客席に照明が灯ると、人が密集しないように少数ずつ退場を促されました。会場の出口のところにはスタッフが立っており、梨華ちゃんからのプレゼントが全員に手渡されました。それは名刺くらいの大きさのカードであり、梨華ちゃんの可愛らしい姿が印刷されています。梨華ちゃんが言うには、スマホケースに入れて使用するものらしいです。僕はスマホケースを持っておらず、いつも裸一貫でスマホを使っているので、生写真たちと一緒に大事にアルバムにしまうことになりそうです。

 東京FMホールを出ると、すっかり夜になっていました。僕はなんだか胸がいっぱいで、「なんも言えねえ!」という状態になっていました。道重さゆみさんのオタクはよくツイッターで「ちゃゆうううううう!」と呟いているけど、たぶん僕はその状態に限りなく近かったと思います。

梨華ちゃんの2L生写真と、スマホケースに入れるやつ

 東京FMホールから家に帰ってきて自室に入った僕は、さっそく梨華ちゃんの生写真をショルダーバッグから取り出します。そしてため息をつきながら見つめます。38歳になった梨華ちゃんが可愛すぎて、どうしたらいいか全く分かりません。僕は、どうしたらいいのか皆目分からないまま、夜ごはんを食べ、お風呂に入り、やがて寝る時間になりました。

 「なんだか寂しいから、梨華ちゃんの生写真と一緒に寝ようかな」と考えたけれど、やめておきました。そんなことをしたら、戻ってきつつあるガチ恋が致命的に肥大化してしまいそうだったからです。僕はもう二度と梨華ちゃんに本格的にガチ恋をするわけにはいかないのです。僕も梨華ちゃんも、誰も幸せにならないからです。

 僕は梨華ちゃんの生写真を、ベッドから少し離れたところに裏向きに置いて、布団の中にもぐりこみました。目を閉じても、しばらくは梨華ちゃんの笑顔がまぶたの裏側に浮かんでいましたが、それはだんだんと薄れていき、僕はいつの間にか眠りに落ちました。

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