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出禁にならないように、想像のなかで抱きしめてキスをしました

 12月4日の日曜日のお昼ごろ、僕は家のなかをうろうろしていました。「久しぶりにLapisの小川さくらちゃんに会いたいなあ。アイドル育成型ライブカフェアイドールに行こうかなあ」と考えながら。その日の出勤メンバーはお店のホームページで前もって発表されており、午後3時半から6時半までの3時間、小川さくらちゃんが出勤することは分かっていました。しかしながら、「僕はいま国民年金保険料を滞納しているほどお金がないし、禁酒中でもあるから、行かないほうがいいのではないか」という気持ちがありました。メイドカフェやアイドルカフェに行ってお酒を飲まないでいると、間が持たないし、ソフトドリンクばかり飲んでいると1時間もしたらそわそわしてきて、今すぐ外に飛び出して走り回りたい気持ちになります。

 でも結局はLapisの小川さくらちゃんに会いたい気持ちが上回り、僕は自宅から外に歩み出ました。そして日課のウォーキングを兼ねて大宮駅まで歩きました。大宮駅の東口に30分くらいで着いた僕は、公衆トイレの屋上にある小ぎれいなテラスに行って、ベンチに座って休憩をとりました。その時点で腕時計の針は午後3時15分を指していました。僕は8分ほど休んでから立ち上がり、アイドル育成型ライブカフェアイドールへと向かいました。7分くらい歩いて、お店の入っているビルの前に着くと、朝青龍あさしょうりゅう似の男性スタッフの威勢のいい声が聞こえてきました。腕時計を見ると、ちょうど午後3時半、お店の開店時間です。

 僕はゆっくりと茶色いビルのエレベーターへと進み、2階に上がって降りました。すると入口のところで、2人のお客さんが入店待ちをしていました。アイドールに入るにはまず洗面所で手を洗わねばならないので、入店するのに時間がかかるのです。少し待っていると僕の番が来ました。洗面所で手を洗って踵を返すと、Lapisの大原めいちゃんが笑顔で僕を待ち受けていました。めいちゃんは「久しぶり~!」と言いながら僕の体温をはかり、消毒液を手のひらにかけてくれました。

ライブカフェアイドールのテーブル席

 カウンター席には仲の良い飲み友達ののぶさんがいたけれど、ライブを見やすい場所がよかったので、一人でテーブル席に座りました。するとのぶさんも僕のテーブルに移ってきてくれたので嬉しかったです。僕は高血圧と不整脈により禁酒中であるため、ジンジャエールを頼みました。小川さくらちゃんがジンジャエールを持ってきてくれて、少し胸がときめきました。さくらちゃんは僕の体調をすごく心配してくれたので、僕のお母さんかと思いました。お母さんと同じくらい僕を心配してくれていました。「お母さん!」と呼んでしまいそうになりました。

 大原めいちゃんには「ふちりん痩せたね!」と言われました。1か月ちょいのあいだ、お酒を一滴も飲んでいないからだろうなと思いました。74.5kgから73.5kgまで体重が落ちました。この調子で70kgを切るくらいまで痩せたいところです。めいちゃんは「私も痩せたいから禁酒しようかな」と言っていたけど、めいちゃんくらい若い人が禁酒するのは難しいと思います。健康だから。僕みたいに、不健康すぎて死が目前に迫ってるくらいじゃないと禁酒はまず無理です。それだけアルコールの依存性は強いのです。恐ろしい飲み物です。合法ドラッグだと思います。

 永島美玲ながしまみれいちゃんは口癖の「ぴえん」を連発していました。美玲ちゃんは先日、さいたま観光大使に就任したんだけど、大使として活動してるときに「ぴえん」が出てしまわないか心配です。美玲ちゃんと話をしていると1分に5回は「ぴえん」が出ます。それだけ「ぴえん」が身体に染み付いていたら、さいたま観光大使としてどれだけ気を張っていても、つい「ぴえん」と言ってしまうのでは?と思います。でもこないだ催されたさいたま観光大使のオーディションでは、「わははは!」と豪快に笑ったり「ぴえ~ん!」と泣きさけぶ美玲ちゃんの姿はなく、まるでどこかの上品なお嬢さまみたいだったので、心配には及ばないのかもしれません。さいたま観光大使としての美玲ちゃんしか知らない人がアイドールカフェに遊びに来たら、そのギャップに腰を抜かすかもしれませんね。

 入店して1時間ほど経ったころ、午後4時半くらいに店内ライブが始まりました。Lapisという3人グループによるライブです。黄色担当が小川さくらちゃん、ライトグリーン担当が大原めいちゃん、ピンク担当が永島美玲ちゃんです。僕はさくらちゃん推しなので、主にさくらちゃんを見つめていました。歌って踊っているさくらちゃんはとても可愛らしかったので、胸がときめきました。好きになりそうになりました。

 ライブを見て気持ちが高揚した僕は、約20分のライブが終わった後、さくらちゃんのアイドルメニューを頼みました。チョコラテの表面にアイドルがチョコでお絵かきしてくれる、という素敵なメニューです。僕はアイドールカフェに8年くらい通っているけど、チョコラテは初めて頼みました。いつも酒ばかり飲んでいたので。さくらちゃんは「チョコラテ頼んだの、ふちりんとは思わなかった!」と驚いていました。さくらちゃんは僕にいろいろな話をしながら、チョコラテに「ふちらぶ」という文字を書き、相合傘を描きました。そこにはSという文字とFという文字が書かれました。

小川さくらちゃんのお絵かきしたチョコラテ

 さくらちゃんに「ふちりんはスポーツとかするの?」と訊かれて、「中学生のころ剣道部だったよ。声が小さくて、よく顧問の先生に怒られていたよ」と答えました。剣道部には1年間しか入っていなかったことと、1級の試験を受けたけど見事に落ちたことはあえて言いませんでした。好きな女の子の前で格好をつけたかったので。さくらちゃんがチョコラテのお絵かきを完成させて僕のほうを見てにっこり笑ったとき、僕は衝動的にさくらちゃんを抱きしめてキスをしたくなりました。なりましたが、もちろん実行には移しませんでした。そんなことをしたら出禁になってしまうので。8年間もこの店で「ふちりん」としての良いイメージを作ってきたのに、ここに来て出禁になるようなことはしたくありません。ですから、僕は想像のなかでさくらちゃんを抱きしめてキスするだけにとどめておきました。それでも気持ち悪かったら、すみません。

 僕は、さくらちゃんの描いた文字が消えていくのを寂しく思いながら、チョコラテをゆっくりと飲んでいきました。午後6時ごろに、特典会が始まりました。チェキに落書きをしてもらうための会です。僕はその日はチェキを撮っていなかったものの、夏に撮ってまだ落書きしてもらってないチェキが財布のなかに1枚ありました。それを持って小川さくらちゃんの列に並びました。

夏に撮影し、ずっと財布に入れっぱなしになっていたチェキ

 さくらちゃんに「このチェキいつ撮ったやつ?」と言われ、「夏!」と答えました。「ずっと持ってたんだね。かわいい」と褒められました。「こんな気持ち悪いおじさんをかわいいと言ってくれるなんて、さくらちゃんは優しいな。僕はこれからもかわいいオタクでいよう、さくらちゃんのために」と思いました。さくらちゃんの生誕祭は2月5日にあるので、「その日までは何とか生き延びるよ」と約束をしました。禁酒さえ堅持していれば、生き延びることは可能だと思います。逆に、少しでもお酒を飲めば、2月5日まで生きるのは難しそうです。心筋梗塞か脳卒中で死ぬと思います。

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