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IPO初値騰落率を2017年から2022年まで調べてみた

皆さんこんにちは。藤原です。今回は初値騰落率について書こうと思います。しばしお付き合いください。

1年ほど前、2022年2月にこのような記事を書きました。

簡単に言うと、今回の記事はこれの2023年度版です。

初値騰落率について

IPO銘柄ごとに初値騰落率はかならず1つ存在します。2017年から2022年の全IPOについてその初値騰落率を集計してみました。念のためそれぞれの計算式は次の通りです。

単純平均値

初値騰落率の単純平均値$${=\dfrac{\sum\limits_{i=1}^np_i}{n} }$$
$${p_i}$$はその年$${i}$$番目のIPO銘柄の初値騰落率、$${n}$$はIPO件数(以下同じ)

対時価総額の加重平均値

初値騰落率の対初値時価総額加重平均値$${=\dfrac{\sum\limits_{i=1}^np_i{\cdot}M_i}{\sum\limits_{i=1}^nM_i} }$$
$${M_i}$$はその年$${i}$$番目のIPO銘柄の初値時価総額

対資金吸収額の加重平均値

初値騰落率の対資金吸収額加重平均値$${=\dfrac{\sum\limits_{i=1}^np_i{\cdot}F_i}{\sum\limits_{i=1}^nF_i} }$$
$${F_i}$$はその年$${i}$$番目のIPO銘柄の資金吸収額

初値騰落率の各種平均値のグラフ

上記件算式で求めた各種値を以下に示します。

IPO年度別 初値騰落率の各種平均値[%]

基本的に初値騰落率は単純平均値、対初値時価総額加重平均値、対資金吸収額加重平均値の順に小さくなっている傾向が見られます。

ただし、2020年と2022年だけ例外で、対初値時価総額加重平均値が単純平均を上回っています。これは恐らくですが、ある特定の領域にブームがあるときに起こるのではないかと思います。2020年はAIだったのではと拝察します。知らんけど。

初値騰落率と資金吸収額の関係

さて、初値騰落率が上に突き抜けてしまっている(プライシングを低く見積もりすぎたケース)というは、特に資金吸収額が小さいIPOで多発していると思われるので、この点についてグラフ化してみます。

2021年(青)と2022年(オレンジ)の全IPO銘柄について、横軸に初値騰落率を取り、縦軸に資金吸収額を取って散布図を書くと以下のようになります。

初値騰落率(横軸[%])と資金吸収額(縦軸[M円])の関係

初値騰落率が150%を超えるのは、20億円にも満たない小さな資金吸収額の案件がほぼたたき出しています。逆に資金吸収額が50億円を超えたあたりから初値騰落率が50%を超えるケースが一気に少なくなります。

こう見ると、資金吸収額が小さすぎて需給バランスを満たせていないIPO案件が単純平均値を押し上げているのが良く分かると思います。逆に資金吸収額が大きい案件はそれほどプライシングを外していませんから、対資金吸収額の加重平均値が全体としての実態をよく表していると思います。

単純平均値には罠があります。平均というのはわかりやすくてみんな大好きですが、単純平均は髪の毛を燃やしながら足を氷に浸けたら全体的にぽかぽかして気持ち良いと言ってるようなもので、それくらい疑わしい値だというのはビジネスパーソンとして意識しておきたいです。

データ参照元について

この記事の集計元となった個別IPOのデータについては、公認会計士プラットフォーム事業の株式会社ワイズアライアンス様が販売されているデータをフル活用させていただきました。

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