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ライトノベル市場半減への提言

中学生の読書量は微増、高校生はほぼ横ばいであるにもかかわらず、文庫ラノベ市場は2012年の284億円をピークに、2021年には123億円と半減以下になった。

「若者の読書離れ」というウソ、飯田一史

ライトノベル市場が半減した。
コロナ禍もありマンガの需要が増えたにも関わらず、同じエンタメジャンルに属するライトノベル(ラノベ)は半減したという。
この衝撃的な事実をどう捉えるべきだろう。

ここには数字のトリックというべきものもある。
つまり、この調査は「文庫」に限っているということだ。
事実として、ライトノベルの主要市場は単行本によりはじめている。ライトノベルは大判・単行本で売られることが主流になりはじめた。ライトノベルというジャンルを開拓し、現在も市場を牽引するKADOKAWAで『電撃の新文芸』というレーベルが出たことも記憶に新しい。

2010年代を通じて、株式会社ヒナプロジェクトが運営する日本最大級のウェブ小説投稿・閲覧サイト「小説家になろう」発の単行本ラノベ(判型が大きいソフトカバー仕様単行本で、文庫本コーナーではない場所に置かれるもの)という「大人向け」の市場が開拓されたことが関係している。

目先の「売れる」に囚われてライトノベルが大人向けになった結果が、若年層の支持を半減させるという危機的な状況をもたらしたと言っても過言ではない。
もちろん仕方のない部分もあるのだろう。出版市場自体が縮減の傾向は変わらないし、人口減少もある。書籍の販売という特質上、薄利多売だから単価を高くしたほうが安定的に儲かる(専門書系の出版社が儲かるのと同じ理屈だ)。

しかしこの状態が続けば、ライトノベルの未来は限りなく暗い。
書籍というものは死なない。何千年と残るものもある。
だけども、もしライトノベル市場がかつての読者にへばりついて彼らと同じように歳をとってしまうならば、彼らが死んだ未来にライトノベルを購入してくれる存在がいなくなる。

たとえ短期的に儲からないとしても未来の読者を獲得するために動くのがライトノベル業界の責務なのではないか。

私としては、GA文庫やガガガ文庫が公式として小説投稿サイトを開設してほしいと思う。なぜか?

・出版市場自体がシュリンクしている現在において文庫ラノベを増やすのは、現実的とはいえない。高単価のライトノベルを売り続けるのも問題ではない。むしろそうしないとラノベ出版社が危うい
・しかしながら、若くて経済力の弱い読者を育てる必要がある。
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それならば、小説投稿サイトという自由な表現の場に若い作者と若い読者を引きこめばいい。お金のない中高生をライトノベル読者に引きこむことができる。彼らが大人になった時には彼らが高単価のラノベを買ってくれる読者になってくれる。

 収益は広告収入で賄えばいい。自社で投稿サイトを運営すれば優秀な作者を出版社が囲い込んだり、”確実に”売れる作品を見極めて商業出版することも可能だろう(※)。実際、KADOKAWAの「カクヨム」は若い読者の囲い込みに成功しているように思う。若い作者部門の賞もカクヨムで創設していたはずだ。
 特に小学館やSBクリエイティブはラノベ市場でシェアと信頼もある。今からでも参入は遅くないはずだ。出版社が運営するというお墨付きは、商業出版を目指す筆者においてはデビューの未来を予感させてくれるだろう。

いろいろと語ったが、言いたいことはこうだ。
①高単価のラノベを売り続けることは、読者の高齢化&若い読者の喪失につながる
②その状況は仕方のない部分もあるが、若い読者を増やしていきたい
③だからこそ読者の経済的負担の少ない、投稿サイトを出版社が開設してはどうか

この記事は出版業界未経験の人間が書いています。ライトノベルの一読者の戯言と思ってください。間違いなどがあればご指摘いただけると幸いです。

※驚くべきことに編集者よりも読者視点の方が売れる作品の観点を持ち得ているようだ。「なろう系は、ウェブ小説サイト上で人気になった作品だけを本にする。つまり読者によるテストマーケティングが先に済んでおり、ウェブ上での競争に勝った作品だけを書籍の企画として通す。そちらのほうが本読みのプロ、「目利き」であるはずの編集者が企画のジャッジをしている書き下ろしの文庫ラノベよりも、ヒットの打率が高かったのである(大半の作家や編集者は、どうがんばっても一般的な読者とは感覚がズレており、実際の読者が支持した作品を本にしたほうがよく売れる、ということだ)」飯田一史