ラストラブシーン2


メロエロエロメロメロメロエの最終話

この物語りの最初はこちらからhttps://note.mu/fuedasaori/n/n69506fd2e3cc


一、ハマる

2016年の年越しを、奇跡的なスタートで切ってしまった。


昔からファンだったサッカー選手の井川さんと出会い、まさかのまさか出会った日にうちに来て、体の関係になってしまったのだ。

しかも井川さんには奥さんがいることを分かっていたのに・・・・

理性よりも衝動だけで突っ走ってしまった。


でも、ぜんぜんそのときは後悔してなかった。


奥さんからの電話をスルーして、井川さんは脱いだ服を着始めた。

出会ってすぐにエッチしちゃって、こんなに幸せなことはないんだけど、それでも男の人のエッチが終わった後の行動は切なくなる。


あたしの寂しそうな表情を井川さんはすぐに見抜いた。

「どうしたの?すっごい寂しそうな顔してる。楽しくなかった?」

またお得意の頭をぽんぽんと優しく撫でる。

「え、、楽しかったです。すっごい嬉しかったです。。寂しそうな顔してます?」

ちょっと無理矢理笑ってみた。

「うん。すごーい寂しそうな顔してるよ。」

「ば、ばれてますか・・・・」

「千春ちゃん、またここに来ても良い?」

「え・・・」

「ダメ・・・?」

「いや、ダメじゃないですけど・・・」

「じゃ、またくるね。今度はもっとゆっくり会おう。」

そう言うと、井川さんが優しくキスをしてきた。



二、逢いびき


それから、井川さんがたまにあたしの家のアパートにくるようになった。

あたしは井川さんからラインがくるたび、舞い上がって部屋をキレイしたり、井川さんが大好きなビールを用意するようになった。

勿論これが絶対に人には言ってはいけない恋ってことも分かってた。


だけど秘密だからこそ誰かに言いたくてたまらなかった。


井川さんはいつも21時くらいに家に来て24時くらいに帰る。

あたしは井川さんと過ごす3時間をいつも待ち望んでいた。


時にはエッチだけじゃなくて、一緒にDVDを観たり、一緒に料理をしたり、恋人みたいだったから幸せでたまらなかった。


最初はすごい楽しかった。 ずっと憧れていた井川さんと二人でいられるんだもの。


でも7回目の夜に急に切なさが襲ってきた。


いつものように井川さんがうちに来て、軽くお酒を呑んで、そのあとにエッチをする。 そして携帯の時計を気にする。

今までと変わらないそれに急に耐えられなくなってしまったんだ。


最初から結婚してることなんて分かってた。

だから、そんなことを気にしない女子にならなきゃって思った。


でも、やっぱりそうじゃない。 会えば会うほど、エッチをすればするほどもっと井川さんと一緒にいたいって思ってしまう自分がいた。


いつもみたいに井川さんが「そろそろ帰るね。またくるよ。」って優しく頭をぽんぽんと撫でた。

「やだ。。。」

初めてそう言ってしまった。

「千春・・・?」

「帰らないで・・・」

こんなこと言ったら嫌われてしまうんじゃないかって思ったけど、言わずにはいられなかった。


「奥さんのこと好き?」

「ん?好きだよ。」

「あたしのこと好き?」

「好きだよ。」

「どっちのほうが好き?」

なんてバカな質問をしてしまったんだろう。


井川さんは少し困った顔をして頭をかいた。

「二人とも好きだけど、好きの種類が違うんだと思う。だからどっちがってのは難しいなぁ。」

そんな答えを言われることも何となく分かってた。 それなのにどうしてあたしは・・・・

「ごめんなさい、変なことを聞いて・・・」

「千春がオレと一緒にいて辛いなら、無理しなくていいよ。」

「違う、そーゆー意味じゃないの!!もっと一緒にいたいから。。」

「そっか。。 千春のこと大好きだし、これからもずっと一緒にいたいって思うけど。。」

「うん。それも分かってる。分かってるつもりでいたの。ただ、たまに井川さんが帰っちゃったあとにすごい寂しくなっちゃって・・・。」

いつの間にかあたしは泣いていた。

多分、ずっと溜め込んでいた感情を吐き出してしまったから。

ボロボロと流れる涙を井川さんが丁寧に手で拭ってくれた。


「今日はもう少しだけいようかな。今日は特別〜」

そう言うと、冷蔵庫にビールを取りに行った。


井川さんが優しいから、結局その優しさに甘えてしまっている。

こんなワガママを言ってしまったあたしをひどく振ってくれたらいいのにって心のどこかで思ってしまう。


その日は、いつもより2時間長くいてくれた。

井川さんが帰るとき、大通りのタクシーがつかまるところで見送りに行く。

ひとけのない道のときはいつも二人で手をつないで、その瞬間は本当に幸せを感じていた。

ああ、もう少しで大通りに出てしまう。

今日もこれで終わり。

つないでた手を自然と井川さんが離す。


「千春。。」

「ん?」

「またね。」

「うん。今日は遅くまでありがとう。」


さっきまでの感情をこらえて笑顔で井川さんを見送った。


大丈夫。 もう少しだけ一緒にいたいから、もう少しだけ頑張ろう。




三、大丈夫だよ、大人だもん


井川さんと会った次の日の夜だった。

井川さんからいつもと違うラインが送られてきた。


あたしはすぐに分かった。 それが奥さんからのラインだってことを。


「千春さま 井川の妻です。主人の携帯を見たところ、千春さんの存在を知ったのでご連絡させていただきました。うちの主人にあなたとの関係を聞いたところで、否定されましたが私は信じてません。うちの家庭を壊すようなことをするのはやめてください。これ以上、うちの主人と会わないでください。二度と連絡をとらないでください。主人にも同じことを伝えたところ、あなたともう連絡もとらないし、会わないと約束しました。一方的な連絡になりますが今後一切、関わらないください。 妻」


このラインを読んだとき思ったよりも冷静な自分がいた。

きっとどこかでいつかバレてしまうって分かっていたから。

多分昨日の帰りが遅くなったのが怪しまれてしまったのかな・・・


しばらくそのラインの文章を眺めていた。

本当にこんなんで終わりなのかって思った。

こんな終わりかたはしたくなかった。。



本当に井川さんはあたしと連絡しないって約束したのかな。

もう会えないのかな。


一方的なラインの文章に対して、返信をする気なんてなかった。

勿論、奥さんからしたらあたしが悪者なのか分かってる。。

人に言えない恋をしている時点でおかしいことなんて分かってる。


だけど、好きになっちゃったらどうしようもなかった。

次で最後、次で最後って思っていても、やっぱりもう少し一緒にいたいって思っちゃう。 やっぱり一番になりたいって思っちゃう。

奥さんからきたラインをぼーっと見つめたまま、昨日いた井川さんの部屋で倒れ込むように眠りについた。


今日は5時からバイトだ。 井川さんと出会ったあのバーで。

バイト行かなきゃ。。。家にいても泣いてばっかだ。。


いつもより化粧も格好も手をぬいた状態でお店に急いだ。

いつもより元気なふりでお店で働いた。

井川さんのことを考えないように。。。


今日も23時にお店をあがった。

いつもよりやる気をだして働きすぎたせいか、お店を出たら一気に疲れが出た。


するとお店を出たところに井川さんが立っていた。

「え・・・・」

あたしは立ち尽くしたままでいた。

「家行ったらいなかったから、こっちかなって思って待ってた。」


「連絡くれれば・・・」

「いや、嫁さんに携帯壊れちゃって・・・・ っていうか、ごめん。昨日あいつからラインきたと思うけど、ばれちゃって・・・・」


「いえ・・・ いつかこうなってもおかしくなかったから。」

「ちょっと歩きながら話さない?」

「うん。。。」


初めて出会った日みたいに、目黒側沿いを二人でゆっくり歩く。

あの日はドキドキが止まらなかったのを今でも覚えている。


井川さんが少しやんちゃな顔をして話しだした。

「ラインちゃんと消してたんだけど、この前酔っぱらって帰ったときに消すの忘れちゃって・・・・で、千春と会ってるのがバレて。。 一応、否定はしたんだけど、嫁さんがキレちゃってオレの携帯であのライン打って送っちゃったんだよね。」

「そんな感じかとは思ったけど・・・」

「で、実は他にもまぁ遊んでる子がいて、そっちのほうもバレちゃってさ。で、結局昨日の夜に携帯壊されちゃったの、笑」


すごいフツーに井川さんは話していたけど、あたしの中ですごいひっかかった。分かってはいたけど、他の女の子とも遊んでたんだね。。あたしだけじゃなかったんだねって。

「今日、携帯直す暇なかったから。でも千春と会って話したくて会いにきた。」

「うん。。。」

「オレと一緒になる?」

「え?」


井川さんが言葉に足が止まった。この人は何を言ってるんだろうって思って。

「どーゆー意味?」

「言葉のままだよ。実は嫁さんともずっと上手くいってなくて・・・でも、離婚とかめんどくさいって思ってたから考えてなかった。 けど、今回喧嘩してあいつの本音とか聞いてたらやっぱりオレたち無理なのかなって思っちゃって。。。 離婚しようかなってちょっと思ってる。すごい時間かかるかもしれないけど待っててくれるなら。。」

「・・・・・。」


思いがけない井川さんの言葉に戸惑った。

そんな簡単なものなのだろうか。 あたしが知らないだけで、奥さんとそんなに上手くいってなかったのか。 それとも単に勢いで言っているだけ?

何も答えられずにいた。 

だって・・・・


「井川さん、、その言葉信じてもいいの? だって、井川さん他にも女性いるんでしょ?」

「それはちょっと遊んでた程度だよ。千春ほど頻繁に会ってた子なんていない。昔ちょっと連絡取ってた女にまで、あいつ連絡しちゃって・・・・別れるってなると、嫁さんにはまだ何も話してないからこんな話をしたらもっと大変かと思うけど・・・。」

嬉しいはずなのに・・・


「あたし、井川さんのこと大好きで一番になりたいって思ってる。今だってもっと一緒にいたいよ。だけどこんなことしておいて言う資格なんてないけど、奥さんのこと考えると・・・本当にいいのかな。」


「しばらくはすごい時間かかるし大変だと思う。それでも待っててくれるなら。。今はそんな言い方しかできないけど。。」

「井川さん、あたしみたいな女の何がいいの?だって、奥さんは元モデルさんだからとってもキレイだろうし今はヨガの講師やってるって、この前雑誌で見たよ。。。あたしなんてお金ないし、バーでバイトしているだけの夢もない人だよ?」

「きっと全く違うタイプだからな。嫁さんと一緒にいると疲れちゃうんだよ。何でも完璧にしようとするところとか。体裁とか。千春と一緒にいると何も考えなくていい。ほっとする。こんな子と毎日一緒にいたいって思ってた。」


そんな話をしているとあっという間にアパートの入り口までついてしまった。


「今日はうちあがっていかないよね?」

「あがる」

「え、、いいの?大丈夫なの?」

「わかんないけど、まだ千春と離れたくないから。」


井川さんがあたしを選んでいることは本当なのだろうか。

心から喜べないのはあたしが井川さんを信じられてないからだろうか。


アパートのドアを開けて二人で靴を脱ぐと、台所でいつもようにぎゅって抱き合った。


ああ、結局あたしはまだ井川さんから離れられない。

この先、本当に井川さんとどうなるか分からない。


きっとたくさん人に傷つけることになる。


それでも、あたしは今、井川さんを諦めることがないくらい好きで好きでたまらなかった。


どんな罰を受けてもいい。 


それが井川さんを好きでいる代償なら。


井川さんと抱き合ったまま、このまま地球が滅亡しちゃえばいいのになんてそんなくだらないことを考えていた。



ー終わりー



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