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ニュージーランドの幸福予算

ニュージーランドの幸福予算とは

2019年5月末、ニュージーランド政府は、幸せをコンセプトにした予算「ウェルビーイング・バジェット(幸福予算)」を発表しました。ウェルビーイングという言葉は多様な意味合いを持ちますが、シンプルに訳せば「幸せ」です。
「フィジカル・メンタル・社会的に良い状態にあること」とされています。
ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相は、「経済的な幸福だけではなく、社会的な幸福にも取り組む必要がある」と述べ、国の財政運営への新しいアプローチとして策定しました。

具体的な予算の内訳をみてみます。
(※)「AMP(アンプ)」記事より抜粋

【メンタルヘルス支援】
「メンタルヘルス支援」では、24歳以下の若者を中心とした、すべてのニュージーランド人の精神的健康のサポートをします。予算には4億3500万ドルが充てられ、2023~2024年までに32万5,000人に支援が行き届くようにするほか、自殺予防支援には4,000万ドルが配当されます。

【子どもの幸せサポート】
ユニセフによると、ニュージーランドの児童約27%が、栄養価の高い食べ物を摂ることができず、健康的ではない劣悪な住環境での生活を余儀なくされているといいます。政府によると、毎年およそ30万人の子どもを含む約100万人のニュージーランド人が家庭内暴力や性的暴力に遭っています。
ウェルビーイング・バジェットでは、3億2,000万ドルをかけて、家庭内暴力・性暴力の対処を含む、子どもの貧困の削減と福祉の向上を目指します。さらに、貧困家庭の子ども3,000人の保護と自立を支援し、貧困のサイクルを断ち切るべく積極的に介入します。

【マオリ族と南太平洋諸国の生活向上】
先住民族のマオリ族と南太平洋諸国は、2030年までに総人口の約10%以上を占めることが予測されています。しかし彼らは教育や福祉などあらゆる面で取り残されており、その他のニュージーランド人との格差が大きく、自殺率も高く、大きな心理的ストレスを抱えていることも分かっています。
政府は1億9800万ドルを投資。健康・教育・スキル支援、雇用機会の提供などに費やします。そして彼らの文化・価値観を尊重し、生活向上のサポートをします。

【イノベーティブな国家創出】
デジタルテクノロジー社会を生き抜くため、ニュージーランドは最先端の技術を持つイノベーティブな国家創りを目指します。国民のデジタルスキル取得を促し、予算ではスタートアップや新規ベンチャーに3億ドルを投資します。また、低酸素社会への移行に必要な技術開発に1億600万ドルを充てます。

【サスティナブルな経済への移行】
持続可能な低炭素経済へ移行するため、それに関連する企業・団体、地域社会、プロジェクトをサポートします。オークランドとウェリントンを結ぶ、歴史的な長距離鉄道KiwiRailの再開発に10億ドルを投資します。

「初めてはっきりと幸福に重点を置いた国家予算に驚かされました。人類全体が直面している課題、不平等の増加、大衆主義の増加、急激な環境悪化など。今後、全体的な幸福を創出し維持するという点において決定的に重要な役割を果たしていくでしょう。」とヴィクトリア大学のアンナ・マシソン博士がコメントしています。

経済的責任とやさしさ

ニュージーランドのアーダーン首相は「今日の予算は、経済的責任とやさしさの双方を兼ね備えることができるということを示しています。」と述べています。
アーダーン首相の率直で真を突くメッセージが、胸に響きます。

事故にあった、過剰労働で精神的にまいってしまった、会社が倒産した、親が離婚した、などの要因で、「貧困」に陥る可能性は、日本でも増えています。
私自身も、14歳のときに両親が離婚しました。
そのときは祖母の支援があり、家を確保することは出来ました。専業主婦だった母はパートに出ました。
弟は小学生。私は中学生。まだまだ学費にもお金がかかる時期でしたが、祖母の支援を受けて、私は自分が望む私立の高校、大学へ進学することができました。弟も同様です。
わたしたち家族は、祖母の支援があったので、「貧困」には転落しませんでしたが、そうなってもおかしくない状況でした。それまでは、お金の心配や将来の心配もしたことがなかった私でしたが、突然訪れた環境の変化に、「不安」という海に溺れそうになったのを覚えています。

これからの時代は「個人」がその「個性」を発揮して、社会を動かしていく時代です。
そのパワーを発揮するには、まずは「生活」が安定していることが大切です。その人に合った教育、必要なものが買えるお金、安心して暮らせる家。
わたしの場合は、振り返ると、それらが失われなかったので、いまの精神活動や社会活動が出来ているのかもしれません。

多様性が調和する社会へ

最近、肌で感じるのが「大企業の金余り」です。
安倍政権は政権を奪還してから6年間、企業に対して、法人税の減税や優遇措置を実施してきました。

※)財務省「法人課税に関する基本的な資料」より抜粋

法人課税をより広く負担を分かち合う構造へと改革し、「稼ぐ力」のある企業等の税負担を軽減することで、企業に対して、収益力拡大に向けた前向きな投資や、継続的・積極的な賃上げが可能な体質への転換を促すため、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げる」という方針の下で法人税改革が進められました。
この成長志向の法人税改革は、平成27年度改正から始まり、改革2年目である平成28年度改正で、目標とされていた「法人実効税率20%台」を実現しました。

一方、消費税は上げ続けているにも関わらず、20年間のデフレを脱却することが出来ていません。大企業の減税措置で、足りなくなった様々な財源を「消費税」という形で一般市民に負担させている、とも言えます。
大企業は内部留保(※1)が過去最高になっていますが、投資すべき先がなく、「カネ余り」という現象になっています。
(※)内部留保: 企業が生み出した利益から税金や配当、役員報酬などの社外流出分を差し引いたお金で、社内に蓄積されたもの。

つまりお金は大企業に集まっていますが、それを生かすことができていません。
一方で、お金が無いことによる、貧困層の拡大、教育を受けたいけれど受けられない子どもたち、最低限の医療・福祉が受けられない年配の人たちが増加しています。
これは個人の「自己責任」ではありません。国の貧しい政策の結果です。

上記の「カネ余り」によるお金を、こうゆう人たちに回したら、すべての人の個性が輝き、多様な人たちが、調和している社会が出現するはずです。
誰もが「存在」しているだけで、輝ける世界。
日本が「多様性の調和」を示すことによって、真の安定した世界の顕現が可能になると思います。ニュージーランドが「幸福予算」で、その世界を創造したように。

ありがとうございます。

今日の名言:ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相

経済的な幸福だけではなく、社会的な幸福にも取り組む必要がある。

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