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旧司法試験 民事訴訟法 平成9年度 第2問


問 題

甲は、乙の不法行為により2000万円の損害が発生したと主張し、そのうち500万円の支払いを求める訴えを提起した。乙は、甲の主張を争い、請求棄却の判決を求めた。
裁判所は、因果関係が認められないことの理由で、甲の請求を棄却した。甲は、この判決確定後に残額1500万円の支払いを求める訴えを提起した。この場合における訴訟法上の問題点を論ぜよ。

関連条文

民訴法
114条(1編 総則 5章 訴訟手続 5節 裁判):既判力の範囲
246条(2編 第一審の訴訟手続 5章 判決):判決事項(処分権主義)
民法
1条2項(1編 総則 1章 通則):基本原則(信義則)

一言で何の問題か

明示的一部請求棄却後の残部請求の可否

つまづき、見落としポイント

被 二重起訴の禁止(訴訟物・当事者の同一) 
原 処分権主義
被 一部請求の可否(不意打ち防止)、一部請求棄却後の残部請求                 

答案の筋

実体法上債権の一部行使が認められているから、訴訟上も債権の分割行使を認めるべきである。また、試験訴訟を認める必要があるから、残部請求を認める必要もある。もっとも、被告に対する不意打ちを防ぐため、一部請求であることの明示がされた場合のみ、訴訟物の分割を認めるべきであり、訴権の濫用については信義則の規定によって対処すべきである。
本件では、全部棄却がなされた前訴は因果関係が認められないという理由でなされており、不法行為に基づく損害賠償請求権の要件自体が否定されている。すなわち、債権全額についての判断として請求が棄却されている。
このため、残部についても同様に存在しないと考えるのが自然であり、甲の後訴請求は認められない。

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