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絶対、絶対、絶対に許せない気持ち。

「絶対、絶対、絶対に許さない!」

今朝、長女がものすごい剣幕でまくし立ててきた。

手には、数日前に彼女が描いた絵が握られている。

それを見て、僕は「取り返しのつかないことをした…」と思った。


この時期、出版業界は年末進行と呼ばれる過密スケジュールで仕事が進むので、とても忙しい。

その上、忘年会なども始まってくるので、最近は夜に家を空ける日が続いていた。

娘が手に握っていたのは、数日前に『アナと雪の女王2』を観て描いてくれたアナの絵。

僕は「おぉ、いいじゃん!ありがとう!大事にするね!」と受け取った後で、出かける支度をするためにポンと本棚の上に置いておいた。

そのまま数日が経って、今朝に至る。


「大事にするって言ったのに、ここに置きっぱなしじゃん!絶対、絶対、絶対、許さない!」

ものすごい剣幕でまくし立てる長女は、両目に薄っすらと涙を浮かべていた。

僕がいつも彼女に言っている「自分がされて嫌なことを人にしちゃダメ」という言葉は一瞬にして灰燼に帰す。

「仲良くするってことは、約束を守るってことでしょ!」と怒る娘。

それも僕がいつも彼女に言ってることだ。


「ごめんね…」という言葉に続いて、その場しのぎの言い訳が口をついて出そうになるのをグッと押し込める。

娘にとって、年末進行やら忘年会やらは関係ない。

ただ自分がプレゼントした絵を、父親が放置していたということだけが真実だ。


謝って謝っても、一向にこちらの顔すら見ようとしない娘。

まるで自分を相手にしているようで、言葉に窮する。

彼女の頑固さは、きっと父親譲りだと思う。


結局、仲直りの糸口が見つからないまま、娘は「今日は、おっとうと一緒に保育園行かない」と言って家を出て行った。

自分が娘の立場だったら、そりゃあ怒るよなと思いながら、こうして今の気持ちを文字にしている。


娘が描いたアナの絵は、僕にとって、もらったときよりもずっと大事なものになった。

ちゃんと謝って、そのことを娘に伝えようと思う。

絵は、いつも使っている手帳に挟んだ。

それを持って、今日も僕は本のページを作る。

今日ばかりは、とっとと仕事を終わらせて早く娘に会いたい。

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