遠足の朝に泣きたくなる気持ち。

遠足の朝。

今日は、いつもよりも30分ほど登園時間が早い。

妻は早起きしてせっせとお弁当を作り、僕は慌ただしく娘たちの着替えを手伝っていた。

昨日から遠足を楽しみにしていた長女は、パンを2、3口かじっただけで早々と朝食を放棄し、昨日もらったばかりのオモチャで遊びたいとグズっている。

「今日は遠足で早く行かなきゃいけないから、帰ってきてから遊ぼう!」と、なんとかなだめて登園するも、ギリギリの到着になってしまった。



みんながすでに準備万端だったので焦って支度を促すも、ちっとも動こうとしない長女。

僕がパパッと準備をして、次女をクラスに送りとどけようとすると、突然長女が「私も行く」と言って泣き出した。

いつもは真っ直ぐ友達のところに向かって遊び始めるのに、急に泣き出したので、僕はけっこう驚いた。

落ち着かせるために抱きかかえると、深く顔をうずめた首元のあたりにじんわりと温かい涙が広がっていくのを感じる。

「もうすぐ遠足に出発だから、妹のクラスには行かなくていいよ」と言うと、今度は「足が痛いー!」と泣き出した。

そんなはずはない、さっきまで元気に跳ね回ってたのだから。



たぶん長女は妹のクラスに行きたかったわけでも、足が痛かったわけでもなかったのだと思う。

ただ、心の準備ができてなかったのだ。

遠足という一大イベントに楽しみと同じくらいの不安を抱えていたのに、朝から親がバタバタしていたせいもあって、そわそわした気持ちのまま登園させられてしまったのだろう。

言葉にはしていなかったけど、いつもと違う態度が、その気持ちを如実に物語っていた。

長女には心の準備にかける時間が必要だったのだ。

その気持ちは手に取るようにわかる。

彼女は僕にそっくりだから。



涙で濡れた襟元に冷たさを感じながら、僕は長女を見送った。

保育園の布団にシーツをかけながら、園庭に並んでいる長女を遠目に見ていると、まだ少し不安そうな顔をしたまま、小さな手で友達の手をぎゅっと握りしめていた。

僕は家に帰ってきてパソコンを開いたが、なかなか仕事が手につかない。

いつも以上に慌ただしい朝を迎えてしまったことへの後悔と、遠足に出発する前の不安だった記憶が、頭と心を行ったり来たりしている。



今頃、娘は大好物をたっぷり詰めてもらったお弁当を、友達と一緒に食べている頃だろうか。

笑顔で帰ってきてほしいけど、その顔見たら泣いちゃうな、きっと。


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阿部光平

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