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一枚の写真

私がまだ娘の頃 母が差し出した一枚の写真

「これ、お母ちゃんのお母さん!」


オルガンに寄りかかるようにたたずんでいる

黒髪を後ろに束ねた袴姿の女の人 

オルガンの前に数人の男の子と女の子


「小学校の先生をしてたんよ。ほら!ここにお母ちゃんが入ってる」と

指さす縞の袴が少し膨らんでいるのが見えた 

「この時 8か月やった」と…

私は 白黒のセピア色した写真を 見つめた


「村長さんの奥さんは 学校の先生をしている」というので

行儀見習いの卒業生を数人 預かっていたらしい

和歌山県の 萩の山奥の村

ところが、

スペイン風邪が こんなところにも流行ったようで

村中、もちろん家族みんなも かかったそうな


高熱を出して寝込む家族とあずかっている子たち

決して、死なせてはならない!

が、自分もスペイン風邪にかかってしまった

高熱が出ているのに

あずかっている子たちの看病をして

「お母ちゃんのお母さんは 死んだ! んよ」


母が明治四十三年生まれだから

どれだけ前のことか…?


それがコロナという名で 現れた

私は アレルギー持ちだった

中学二年生の時 ツベルクリン反応が陰性なので

BCGを打ったとき 副反応が出た

中学一年生のとき そうでもなかったのに…

二回目から副反応は出た

学校から保健所に連れていかれ

中学三年生から BCGも打っていない

だから 私はいまでも「陰性」のままなのだ

インフルエンザも二回目に副反応が出て

打った先生がびっくりされ 慌てて処置をされた


それ以来打つのを止めている

もう二十年以上前になる

でも、インフルエンザも 一回もかかっていない


人の多い処に 出かけないからなのか?


主治医に相談すると

「案内状が来たら市に相談して」と言われる

市に相談したら「主治医はどのように?任意ですから…国に相談して」と

国に相談したら「任意ですから…すぐ、受けずにしばらく様子を見て!」と

主治医は「そんなら、しばらく様子見よか…?」になった。


ワクチンは遅れている

オリンピック前までに!と 国も国民も 急いでいる

なのに

私は どうしたものか?と 

家に閉じこもり 悩んでいるのだ


母が見せてくれたセピア色した一枚の写真

その袴姿の女性を 今でも はっきり思い出せる

そう、私の祖母! 

私の祖母は どう思っているのだろうか…?





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