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間質性膀胱炎のグリコサミノグリカン補充療法 ヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸の併用で効果大

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群(以下、間質性膀胱炎)の治療法の一つとして知られているのが、ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸の膀胱内点滴です。膀胱の粘膜を保護しているグリコサミノグリカンの修復・再生を目的としています。これまでの研究で、ヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸を併用することで治療効果が上がることがわかってきました。

膀胱粘膜を保護するグリコサミノグリカンを修復

学術顧問の望月です。今回の記事では、2024年に『Pain Ther』に掲載された「Glycosaminoglycan Replacement Therapy with Intravesical Instillations of Combined Hyaluronic Acid and Chondroitin Sulfate in Patients with Recurrent Cystitis, Post-radiation Cystitis and Bladder Pain Syndrome: A Narrative Review」をご紹介します。長いタイトルですが、過去の研究をもとに、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群などに対するグリコサミノグリカン補充療法の有効性が検証されています。

膀胱痛症候群は、2019年まで非ハンナ型というタイプに分類されていた間質性膀胱炎の一つです。診療ガイドライン改訂の経緯については、以前の記事でご紹介しています。よろしければ、以下のリンクをご参照ください。

間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の痛みは、膀胱粘膜にあるグリコサミノグリカンがなんらかの原因で障害された結果、粘膜の透過性が増して尿が膀胱粘膜の神経を刺激するようになって生じます。これまでの記事でも解説してきたとおり、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の治療法の一つは、グリコサミノグリカンの修復を目的としたヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸の膀胱内点滴です。この治療は、再発性尿路感染症や放射線治療後の膀胱炎でも採用されています。

レビューでは、再発性尿路感染症や放射線治療後の膀胱炎に対するグリコサミノグリカン補充療法の有効性についても評価されていますが、今回の記事では、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の項目に限定して概要を簡単にご紹介していきます。

グリコサミノグリカン補充療法で使用する薬剤単独の効果は、5つのメタ分析と2つのランダム化比較試験で検証されています。膀胱内療法を考慮して抽出された4つのメタ分析では、単独で効果が高いのはヒアルロン酸、レニフェラトキシン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ボツリヌス毒素であることが示されています。試験の条件などで結果が異なる可能性がある点に注意が必要ですが、複数の薬剤を個別に組み合わせることが、特定の患者にとって有効な治療方法になるかもしれないと指摘されています。

レビューの主題であるヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸の膀胱内注入に関する研究は8件ありました。症状に関するアンケート調査や泌尿器学的な項目の評価では、ヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸の併用は、主観的および客観的に有意な改善をもたらしています。ヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸の併用が、そのほかの薬剤を投与する膀胱内療法と比較して劣っているということは、少なくともありませんでした。

72人を対象とした研究で薬剤併用の有効性を確認

著者らは、2016 年にPyo氏とCho氏によって発表されたメタ分析を最も価値のある報告と評価しています。このメタ分析は、ヒアルロン酸単独またはコンドロイチン硫酸との併用による膀胱内治療の有効性に関する研究が同時に検討されたもので、合計390人の患者さんを対象とした10件の研究が含まれています。

メタ解析の結果、膀胱内注射によって痛みの重症度、症状の重症度(健康問題スコア、間質性膀胱炎症状指数、間質性膀胱炎問題指数)、膀胱容量、排尿量が改善することが明らかになりました。この研究では、ヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸の単独投与と併用治療の間に有意差は見られませんでしたが、その後実施された2つのランダム化比較試験において、単独投与と併用治療の間における有効性の違いが明らかになっています。

Ozkidik氏らが行った研究では、ヒアルロン酸単独、コンドロイチン硫酸単独、それらの組み合わせによる膀胱内治療の有効性と寛容性が検証されました。この研究には、10人の男性を含む72人の患者さんが登録されています。

72人の患者さんが受けたのは、120 mgのヒアルロン酸または80 mgのコンドロイチン硫酸、または60 mgのヒアルロン酸と40 mgのコンドロイチン硫酸を膀胱内に注入する治療です。膀胱内注入は、最初の6 週間は7 日ごとに、その後の6ヵ月間は2 週間ごとに、さらにその後は24ヵ月の追跡期間が完了するまで毎月くり返されました。

評価項目は、排尿日記をもとにした排尿機能パラメータをはじめ、痛みの程度、膀胱の状態スコア、尿意切迫感・頻尿、間質性膀胱炎症状指数、間質性膀胱炎問題指数、生活の質などです。結果を分析した結果、すべてのグループにおいて治療後に全項目の大幅な改善が認められました。さらにグループ間の比較を行ったところ、併用療法の有効性が最も高いことが明らかになったのです。

結論となりますが、著者らは「ヒアルロン酸とコンドロイチン硫酸溶液の膀胱内点滴は、間質性膀胱炎・膀胱痛症候群の治療に有効である」としています。一方で、課題についても言及しています。具体的には、ランダム化試験の数が少ないことや、これらの研究に含まれる患者の集団が少ないことです。エビデンスが蓄積されていけば、安全性も含めてよりすぐれた治療法として評価されていくものと思われます。

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