マガジンのカバー画像

現行上演のない浄瑠璃を読む

13
人形浄瑠璃文楽での現行上演がなく、テキストでのみ残っている浄瑠璃を読んだ記録。
運営しているクリエイター

#古典文学

清和源氏十五段(せいわげんじじゅうごだん) [現行上演のない浄瑠璃を読む #2]

初演=享保12年[1727]2月 大坂豊竹座 作者=並木宗輔・安田蛙文 並木宗輔が立作者となった第1作。 兄・頼朝に遠ざけられ京へ登った義経の流浪の物語。構造は『義経千本桜』と近い。有名キャラが多数登場、義経絡みの有名な逸話も入っているのでオールスター浄瑠璃風になるかと思いきや、いいことが何ひとつなく、暗く寂しげな印象が漂っている。最後には義経と静御前が再会しハッピーエンド風になっているが、そのあとの義経の運命を知っていると、あまりにもつかの間の喜びでしかなく、むしろ陰鬱

北条時頼記(ほうじょうじらいき) [現行上演のない浄瑠璃を読む #1]

前回の記事に書いていた通り、最近、文楽で現行上演がない浄瑠璃を翻刻で読んでいる。 読んだ先から内容を忘れていくため、手元に内容を簡単に書き留めておいたり、twitterでつぶやいたりしている。その中で、所感やその変遷をある程度まとまった文章にしておきたいと思い始めた。できる範囲で、noteの記事にしていこうと思う。先日から並木宗輔作品に着手しているので、まずはそこから。 北条時頼記(ほうじょうじらいき) 初演=享保11年[1726]四月 大坂豊竹座 作者=西沢一風・並木宗輔

現行上演がない浄瑠璃を読む [近松半二篇]

最近、文楽で現行上演がない浄瑠璃を、翻刻で読んでいる。 いままでも、通し上演がなく、一部の段を見取りで上演している演目を、現行にない段を含めて全段読むというのをやっていた。その目的は、見取りにしたために意味不明になっている部分を補い、観劇をより楽しむためというものだった。 いま、まったくもって現行上演がない作品を読んでいるのは、実際の観劇のための実用からは少し離れ、江戸時代の人はどういう芝居を楽しんでいたのかという、もっと大きく漠然としたことをを知りたくなったからだ。そし