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現行上演のない浄瑠璃を読む

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人形浄瑠璃文楽での現行上演がなく、テキストでのみ残っている浄瑠璃を読んだ記録。
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#近松半二

桜御殿五十三駅(さくらごてんごじゅうさんつぎ) [現行上演のない浄瑠璃を読む #5]

初演=明和8年[1771]12月 大坂竹本座 作者=近松半二、栄善平、寺田兵蔵、松田ばく、三好松洛 近松半二作品のうち『妹背山婦女庭訓』の次に発表されたもので、足利義政公の時代を舞台にした華やかな時代物。 将軍兄弟の放埓、御殿にはびこる佞臣、金閣寺へ招かれるはずだった宗純法親王(一休禅師)の失踪、明智によって管領にまで取り立てられた鷹匠・太郎治の大出世、足利家に滅ぼされた赤松満祐の残党など、多くの要素が絡み合いながら物語が展開してゆく。 本作では、物語の本当の目的が、か

現行上演がない浄瑠璃を読む [近松半二篇]

最近、文楽で現行上演がない浄瑠璃を、翻刻で読んでいる。 いままでも、通し上演がなく、一部の段を見取りで上演している演目を、現行にない段を含めて全段読むというのをやっていた。その目的は、見取りにしたために意味不明になっている部分を補い、観劇をより楽しむためというものだった。 いま、まったくもって現行上演がない作品を読んでいるのは、実際の観劇のための実用からは少し離れ、江戸時代の人はどういう芝居を楽しんでいたのかという、もっと大きく漠然としたことをを知りたくなったからだ。そし