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 例えば、諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いている
のを見たとする。見るとそれは菫の花だと解る。何だ、菫の花か
と思った瞬間に諸君はもう花の形も色も見るのも止めるでしょう。

 諸君は心の中でお喋りをしたのです。菫の花という言葉が、
諸君の心のうちに這入って来れば、諸君はもう眼を閉じるのです。
それほど黙って物を見るということは難しいのです。

 言葉の邪魔の這入らぬ花の美しい感じをそのまま持ち続け、
花を黙って見続けていれば、花は諸君にかつて見た事もなかった
様な美しさを、それこそ限りなく明かすでしょう。
                小林 秀雄「美を求める心」


まず必要なのは、何が起きているのか、虚心坦懐に「見る」
ということなのかもしれません。

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