散歩の天才

死ぬまでは生きていなければならない、ということが、時々とても大変なものに感じられる。この体を維持して、そしてその行動の多くには感情が伴うわけで、それをずっと続けるんですか、死ぬまでずっと……?

生きてみれば意外とあっという間なのかもしれないけど、今はそれが、道のりの遠い不穏なものに思える。その間中、ずっと色んな感情に付きまとわれるんだろうか。解脱でもしない限りはそうだろう。そしてその中には、面白

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親父のキモチ

ー変わらぬ性格と新たな境地

父親が誕生日を迎えた。おめでとうとメールを送ると返ってきた言葉は「ありがとう。ただ、この歳になって誕生日を迎えるということは1日1日、寿命が縮まるということだ」。さすが、わが親父。幾つになっても、一言多いところは変わらない。

ありがとうと言えば、それで済むことなのに、それだけで済まさないところは齢を重ねても変化がない。かつて母に「余計なことは言わないように」とたしな

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2019年の読書記録 April - June

うっかり上げ忘れ。
今季もたくさん読む!

1. 人類と建築の歴史(藤森 照信)

建築、もといその原形としての「住まい」を、原始時代から近現代までの流れを追って見ていく。
マズローの5段階欲求説じゃないけど、人間のいろいろな欲求の中で「安全な空間にいたい欲求」ってすごく大きいと思う。野山に暮らしていた祖先の時代では、家はまず安全であることが第一で、人類の本当にプリミティブな欲求がはっきり現れるよ

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vol.58「彼女の生き様、バッチリ見な!」(『狭き門』ジッド 山内義雄:訳/新潮文庫/1975年刊)

vol.58「彼女の生き様、バッチリ見な!」

みなさんこんにちは。

今週はフランス文学です。
ノーベル賞作家、アンドレ・ジッド。

あの小林秀雄も、書評を書いていました。
漱石もどこかで言及してたような…。
たぶん日本文学とも関係が深い作家です。

ジッドの代表作、『狭き門』。
では、どうぞ…。

本書は「恋愛もの」です。

といっても、
恋愛がテーマのコンテンツなんて、
いくらでもありますが

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模倣ということ

ガッコのセンセの影響力

これまで僕の人生に影響を与えた人の中に、小学校の時の社会の先生と、高校の時の古文の先生がいる。

何人もいた”ガッコのセンセ”の中で「印象に残っている」という程度ではあるのだけど、まあ、この年になってその印象があせないのであるから、やっぱり「影響を与えた」のだろう。

それで、小学校の先生というのは、具体的な発言とか体験が記憶に残っている、とかではなくて、そのひとは「NH

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小林秀雄に凹まされる

いやまあ凹まされるっていうか、そうだよなーと。どうしたもんかなーっと。

というのも小林秀雄のこんな文章を読んだから。

例えば 、諸君が野原を歩いていて一輪の美しい花の咲いているのを見たとする 。見ると 、それはすみれの花だと解る 。何だ 、すみれの花か 、と思った瞬間に 、諸君はもう花の形も色も見るのを止めるでしょう 〜(中略)〜すみれの花だと解るという事は 、花の姿や色の美しい感じを言葉で置

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日常を意識する

1

昨日から中島岳志著「リベラル保守宣言」を読んでいる。

しばしば誤解されている保守について書かれた良書。

一見対立関係とみなされるリベラルと保守が実は親和性があるという観点からこの著者はエドマンドバーク等の保守の大家の言葉を引用して人間を抽象的・無限な存在ではなく、歴史や伝統の積み重ねによって規定された不完全で有限な存在ととらえる。

だからこそ、自由も歴史や制度によって規定された社会的な

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課金アイテム「いちご」をよこせ!

これが我が息子の帰宅早々の態度であります。

父母を冷蔵庫の前に呼び出しては指をしゃぶりながら冷蔵庫の方を向きます。野菜室。それはつまり、いちごがあるところ。

うちのおかげでどこかのイチゴ農家さんは家をたてることができるんじゃないのか。いやそれは冗談だとしても、息子が果物ファンになってから果物を買う機会が飛躍的に伸びている。

道の駅なんかはもう素晴らしい場所だと思うようになった。あんなに美味し

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言語化の功罪

「個の時代だ」、「言語化・発信こそ重要だ」と言われて久しい。そんな中、ふらりと聞いた映画監督の紀里谷さんの言葉をきっかけに、言語化の功罪について考え始めたので、ここに一時的な「言語化」をしたいと思う。

自分で感じとることにしか、意味がない

先日、CX DIVEというイベントに参加してきた。CX DIVEとは、CX、すなわちCustomer Experience(顧客体験)の大切さやCXを高めて

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人が現実に欲望できるのは現実的な可能性である。 『不十分な世界の私―哲学断章―』〔22〕

「…人は可能なものしか真に望まぬものである…」(※1)と、小林秀雄は言う。
「…例えば月の世界に住むことは人間の空想となる事は出来るが、人間の欲望となる事は出来ない。守銭奴は金を蓄める、だから彼は金を欲しがるのである。…」(※2)
 もちろん現在では「月の世界に住むこと」も、単なる空想にとどまらずに、人間にとって全く不可能なことではなくなりはしたけれど、しかしそれが「実際に人の現実的な欲望の対象に

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