見出し画像

国家のウソを暴く新聞

映画COMから転載
「ペンタゴン・ペーパーズ」は、巨匠スティーブン・スピルバーグ監督のもとで、メリル・ストリープとトム・ハンクスという2大オスカー俳優が初共演を果たした社会派ドラマ。ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に疑問や反戦の気運が高まっていた1971年、政府がひた隠す真実を明らかにすべく奔走した人物たちの姿を描いた。
リチャード・ニクソン大統領政権下の71年、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をニューヨーク・タイムズがスクープし、政府の欺瞞が明らかにされる。
ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙は、亡き夫に代わり発行人・社主に就任していた女性キャサリン・グラハムのもと、編集主幹のベン・ブラッドリーらが文書の入手に奔走。なんとか文書を手に入れることに成功するが、ニクソン政権は記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止めを要求。新たに記事を掲載すれば、ワシントン・ポストも同じ目にあうことが危惧された。
記事の掲載を巡り会社の経営陣とブラッドリーら記者たちの意見は対立し、キャサリンは経営か報道の自由かの間で難しい判断を迫られる。第90回アカデミー賞で作品賞と主演女優賞にノミネートされた。
2017年製作/116分/G/アメリカ 原題:The Post 配給:東宝東和

終戦記念日に当たり、映画「ペンタゴン・ペーパーズ」をネット配信で観た。公開当初に映画館では観たが、戦争における報道の責任を考えていて、もう一度観たくなった。

クライマックスは、ポストの社主キャサリン・グラハムが、タイムスが掲載を止められた文書の掲載を決断するところだ。
女性に新聞経営ができるのかと懐疑的な重役たちは、会社がつぶれるとグラハムを脅す。
編集局長のブラッドリーは掲載することを強く迫るが、刑務所行きも覚悟という不安も伝える。
ここでグラハムがブラッドリーに聞くのは「これを報道すると、ベトナムで戦っている兵士に犠牲は出るか」。ブラッドリーが絶対にないと答えて、グラハムがOKを出す。

記事掲載をニクソン大統領によって止められたタイムス。それならばライバル関係にあっても、ポストが報道の自由を守るために、後に続く。

私の涙腺が緩むのは、全米の新聞が今度はポストに続くことだ。ブラッドリーがその新聞を見せながら「私たちはもう一人じゃない」とグラハムに言う。

米国の底力は、こうした報道機関の逞しさにある。その源泉は米国憲法修正第1条だ。1791年、日本では江戸時代に制定されたものだ。

連邦議会は、国教を樹立し、若しくは信教上の自由な行為を禁止する法律を制定してはならない。また、言論若しくは出版の自由、又は人民が平穏に集会し、また苦痛の救済を求めるため政府に請願する権利を侵す法律を制定してはならない。

権力はウソをつくことがある。そのウソが国民の生命や人権を脅かしているいるならば、新聞はウソを暴け。それこそが民主主義を守ることだし、人々の平和なくらしを守ることだ。この憲法はしっかりとそれを教えている。

ただ、米国の新聞でさえ、自国が攻撃された「9・11テロ」のときは、テロリストに報復せよという一色になり、権力とともにイラク戦争を推進してしまったのだ。新聞の役割と責任がいかに重いものか、終戦記念日に当たり、心に刻む。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?