地方議員になって半年、「みんなのお金だから、みんなで使い途を決める」の超難問にぶち当たる

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こんにちは。藤井だいすけです。2019年の4月に初当選してから半年余り、富山県議会議員として活動してきましたが、まずは皆さんにお詫びを申し上げなければなりません。それは、noteを定期的に更新する、と約束しながら、2019年10月を最後に更新できなかったこと。本当に申し訳ありません。

当初は、自分の活動や感じたことをそのまま素直に書けばいい、潜入取材の気分でやればいいんだ、と思っていたのですが、ある時点からピタリと書けなくなってしまいました。それは、税金の仕組みや行財政のルールについて、私が全然わかっていないことに気づいてしまったから。もっといえば、「みんなから集めたお金だから、みんなで使い途を決める」という、小学校の教科書にあるような民主主義のルールが、恐ろしいほどの超難問であることを思い知らされてしまったからです。

みんなから集めたお金のうち、未来に使えるお金はたった5%~10%

そもそも“みんな”とは誰のことを指すのでしょうか。

私個人を考えてみると、日本国民であり富山県民であり富山市民です。確かに国税も県民税も市民税も払っていますが、自分が受けている行政のサービスが、自分の支払ったどの税金から賄われているのかについて、ほとんど意識することはありませんでした。しかし、県議会議員として本会議での一般質問や予算特別委員会での発言の機会をいただく中で、認知症高齢者の問題や少子化対策、中小企業への働き方改革支援などの論点を考えていくときに、それらの問題を解決するための財源(=みんなのお金)がどこにあるのか、わからなくなっていくのです。先ほど挙げた論点は、国の問題でもあり、県の、市の問題でもあります。どこまでが国で、どこまでが県で、市で賄うのか。このルールを知らないことには、ただの理想論を振りかざすだけの議員にすぎないのです。今の私は、正直、その状態です。くやしいけれど。

また、富山県の予算は約8000億円あるとされていますが、その中で県の裁量で決められるのは一般財源の約5500億円。この「みんなから集めたお金」(未来からの借金も含む)を「みんなで使い途を決める」ために県議会があり、県知事といえども議会の承認なしでは基本的にはお金を使うことはできません。しかし5500億のうち、義務的経費と呼ばれる、借金返済や社会保障費、公務員の人件費など、事実上使い途が決まっているものが約50%~60%あります。さらに、義務的経費に加え、過去の政策決定を推進するためのお金を含めた経常的経費になると90%~95%を占め、未来のために使える真っ新な予算(これを政策的経費と言います)は5%~10%だけしか残っていません。未来のためのお金を増やすには、過去の政策決定で決まったことをやめなければいけませんが、すでに議会で承認されたことを否決することは難しい。これが既得権益となっていくのです。

人口減少と少子高齢化のダブルが襲ってくる未来の日本に対処するには、今のやり方のままでよいわけがない

日本人口の歴史的推移

しかし、人口減少と少子高齢化がダブルで襲ってくる未来に適応するには、これまでの延長線上のやり方ではダメ。しかし、そのために使える予算が、全体の5%~10%しかないというのは、本当に厳しい。貴重な「みんなのお金」だけに、失敗はできない。判断も慎重になる分、スピードが遅い。そんな状況の中、変化を促すためには、小さな成功事例をコツコツと積み重ねていくしか方法がないのです。

一方、「自分で稼いだお金だから、自分で使い途を決める」というのが資本主義的な考え方のベースで、私がこれまで生きてきた民間企業の世界は、基本的にその延長線上。市場を国内に限定する必要もなければ、企業が顧客を選ぶこと(ターゲティング)することも自由に決められる。それが行き過ぎると「競争に勝つことがすべて。負けても自己責任」といった新自由主義的な考え方になってしまうわけですが、グローバルで戦う企業はそういった厳しい競争環境の中で成長しているのも事実。経営判断のスピードを上げ、失敗を恐れず、常に新しい技術革新とともに変化し続ける企業が、生き残っていくのだと思います。現状の行財政の判断と、真逆だといえます。

私としては、「みんなのお金だから、みんなで使い途を決める」という行財政の基本ルールは守りつつ、“失敗を恐れず、新しい技術革新とともに変化を促す”ような小さな政策的プロジェクトをいくつも立ち上げていくのが重要ではないかとの考えに至りました。例えば「ユマニチュードによる認知症ケアの推進」「中小企業のクラウド化による生産性向上」「児童も障がい者も高齢者も丸ごと受け入れる地域共生型相談支援」などのアイデアがあります。

しかし、私ひとりでは、実行力のないただのアイデアにすぎません。

地域で困っている当事者、それを支える家族や地域住民はもちろん、行政の職員、医療看護介護の専門職、民間企業、NPO法人、教育関係者などなど、“みんな”の力を結集して課題に立ち向かうチームを作っていきたいと思っています。それこそが、新しい富山県の未来を創ることと、新しい民主主義・行財政のあり方の提唱につながると信じて。

藤井だいすけ

藤井大輔/富山県議会議員(富山第一選挙区)1973年(昭和48年)1月19日生まれ。46歳。
新庄幼稚園、新庄小学校、新庄中学校で育つ。富山中部高校、大阪大学経済学部を経て、95年に株式会社リクルートへ就職。
2004年フリーマガジン『R25』を創刊し編集長となる。40歳を機に東京から富山に戻り、現在は新庄で高齢者福祉事業を行う株式会社アポケアとやま専務取締役。社会福祉士の国家資格を持ち、新庄地域包括支援センターの職員も務める。
大学生の息子と小学生の娘の父。