激戦の富山県知事選2020、投票率はどこまで上がる?その影響は? 考察その②

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4年前は過去最低の35%。今回は確実に上昇するはずだが……

藤井だいすけ@富山県議会議員です。
10月8日に告示された富山県知事選挙も、いよいよ最後の1週間となりました。候補者は、新田八朗氏(62歳)、川渕映子氏(71歳)、石井隆一氏(74歳)の3名(※ポスター番号順)。地元新聞では「横一線」「新田氏ややリード」等の見出しが躍り、現職の石井氏と新人新田氏が激しいデッドヒートを繰り広げており、川渕氏は苦戦との報道。これだけ盛り上がれば、投票率は過去最低だった前回(35.34%)より確実に上がると思われますが、今回はその投票率について考察してみたいと思います。

※各候補の政策比較については、考察その①をご覧ください。

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富山県知事選挙の投票率、過去6回分(平成8年~平成28年)の推移を見てみると、平成8年に60%台を超えた以外は40%前後となっており、現職の石井氏が初めて立候補した平成16年でも37.27%と低調な数字でした。これは、自民と共産の公認or推薦の一騎打ちが続き、有権者の関心を惹きつけられなかったことが要因とされます。今回は51年ぶりの保守分裂選挙となったわけですが、その51年前の投票率は驚異の77.56%! 時代背景的に戦後の高度成長期(昭和44年)で政治への関心が高かったとはいえ、平成28年との差が40%以上もあるのは驚きです。

投票参加モデルの公式から、今回の投票率を予測してみると……

さてアメリカの政治学者であるライカーとオードシュックによる投票参加モデルをご存じでしょうか。1968年とやや古い理論ではありますが、彼らは投票行動をR=P×B-C+Dと定式化しました。
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R=P×B+D-C

R(reward) :投票に参加することで、有権者個人が得られる効用
P(possibility) :自分の投票行動が、選挙結果に影響を与える確率の予測
B(benefit) :最も好ましい有権者が当選した際の利益-最も好ましくない有権者が当選した際の利益
D(democracy/duty) :自分の投票がデモクラシー維持に寄与するという信念、あるいは市民としての義務感
C(cost) :投票に関して生じるコスト
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ライカーとオードシュックは、Rがゼロより大きい場合に有権者は投票に行き、小さい場合は投票を棄権すると考えたのです。
※参考 https://www.theheadline.jp/articles/132

急に公式を出されても、よくわかりませんよね(笑)。この式を今回の県知事選挙に、藤井なりの解釈で当てはめてみると……

(公式1)政党もしくは候補者間の差が大きければ、投票への参加可能性は高くなる
→これは、いかにデットヒートの選挙であっても、政党や政策が明確に異なっているかどうかが投票率に関係する、と解釈できます。今回の石井氏と新田氏は「自民党同士」で「大きな政策の争点はない」とされています(ここでの「大きな政策の争点」とは、原子力発電や米軍基地問題などを指します)。もちろん各候補の支持者は大きな違いがあると思っているでしょうが、一般有権者を想定すると、公式1では投票率が上がる事由はないと考えます。

(公式2)有権者が自分の一票の価値を重く見るほど投票への参加可能性は高くなる
→接戦になることで、自分の一票の価値は上がるように感じる(錯覚する)有権者が増えることと、各陣営がこれまで以上に多くの人を選挙運動に巻き込んだことで「自分事化」した有権者が増えたと想定されるので、公式2では投票率が上がると考えられます。

(公式3)投票のコストが高いほど投票への参加可能性は低くなる
→コストの中にリスクも加えると、新型コロナウイルスの影響は少なくありません。期日前投票率が10月18日時点で11.39%と、昨年の参院選の6.56%と比較してもかなり高くなっていますが、これは「コロナ対策で密を避けたい」のと「接戦で意思表示を早くしたい」の相乗効果と考えられます。新型コロナはコスト/リスクとして参加を押し下げる方向が強いので、現時点の期日前投票率が高いからと言って、そのまま最終投票率がリニアに上がるとは、私には思えません。よって公式3では投票率は上げ要因と下げ要因が相殺と見ます。
ちなみにコストを左右する天候については、投開票日がいまのところ晴れ予報(10月18日現在)なので、こちらも下げ要因にはならないと思います。

(公式4)有権者の義務感が強いほど投票への参加可能性は高くなる
→世代として60代以上は投票を「義務」と考え、40代以下は「個人の自由」と考える傾向が強いようです。前回(平成28年)県知事選のの世代別の投票率を見ても、60歳~74歳で45%前後となっているのに対し、35~49歳は30%前後と15ポイントの差があります。さらに今回の選挙運動に熱心な方は、60・70代の団塊世代が中心と考えられますので、「義務感高」×「自分事化高」×「人口ボリューム多」により、この世代で15~20ポイント程度上昇する可能性があります。よって公式4では投票率は上がると考えます。

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これまで投票率が高かった60・70代の投票率が、より高まると予想。となれば……

まとめると、(公式1)変わらず(公式2)やや上げ(公式3)変わらず(公式4)上げの予想となり、私としては前回よりもズバリ12~15ポイントアップの47%~50%と予想します。ずいぶん予想範囲が広くないか、というご指摘は、甘んじて受けます(笑)

今回は若い世代(子育て世代)よりも、これまでも高かった60・70代の投票率が、より高まると考えられます。ちなみに、この世代の支持が強いのは、新田氏。新聞報道が「新田氏リード」と書くのも頷けます。

しかし、それでいいのでしょうか。富山県の将来の問題が自分の身にふりかぶってくるのは、60・70代よりも、30・40代なのです。その若い世代が選挙には無関心で、全共闘世代が最後の花を咲かせるかのように熱心な選挙運動を展開している――この構図を変えない限りは、富山は変わらないのではないか、と思っています。

みんな(特に30・40代)、選挙に行きましょう!! 

僕の予想する投票率よりも、はるかに上回ることを期待して、富山県知事選の考察を終わりたいと思います。拙文をご高覧いただき、ありがとうございました。