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60歳過ぎてもクリエイティブの現場で仕事が途切れないフリーランサー

 数年前はこんなコロナ禍になって、リモートワークが主体になるなんて誰も予想できなかったように、これから先のことは誰も予想できないだろう。

 一つだけ確かなことは、それでもみんな年を重ねていくことだ。今、フリーランスで活躍している人も、いつかは歳をとる。自分が若い頃、考え方や感性が古い人を見て感じたときのように、自分が時代のスピードについていけなくなったとか、若返りしたクライアントや市場から求められなくなったことを痛感する時が来てしまう。なかなか口には出せないが、そんな恐れを胸に抱いているフリーランスは多いのではないか。

 お金のことだけではない。フリーランスを選んだ人たちはずっと現場で働きたい、自分の腕を必要として欲しいと願っているはずで、どこからも声がかからなくなるのはやりきれないだろう。そんな時は絶対に来ないと信じている人はこの先を読む必要はない。その不安を少しでも和らげて欲しいと思い、2019年9に取材し、夕刊フジ「定年起業への挑戦実践編」に寄稿した記事を一部編集してお届けする。

 60歳を過ぎても、クリエイティブの世界でバリバリ活躍しているBがいる。当時61歳で今も現役だ。Bさんは自身がコピーライターでありプランナー、カメラも使いこなし、イベントのPAなどもこなす。奥さんはデザイナーでタッグを組んで仕事をしている。そして還暦を過ぎたBさんに、仕事が途切れることはない。

 Bさんは40代半ばで広告代理店を退職、個人事業主として独立する。自宅を仕事場にし、プロ仕様のパソコン2台、業務用スキャナー、大判出力可能なプリンターなどをそろえるのに300万円ほどかかったという。やはり投資も必要なのだ。しかしその投資は実を結び、フリーランスとなってから現在まで安定的に仕事を確保できている。

 だがクリエイティブの仕事は「若い人がやるもの」というイメージだ。

「確かに広告制作の世界は若くフレッシュな感性が重用される傾向があります。しかし若い人が請けづらい仕事もあります」(Bさん)

 クリエイティブの現場には人生経験が必要な仕事も少なくない。たとえば「社長取材」。Bさんは年に70社から80社の社長にインタビューし、企業パンフレットやウェブサイトを制作する。若いインタビュアーは年の離れた社長から本音を引き出しづらいという。

 また、Bさんが安定的に受注しているのが「株主総会」のコンテンツ制作だ。これも、若い人より年季の入ったベテラン担当者が求められる傾向があり、Bさんが指名される。だって、万一失敗があると、担当者の立場がふっとぶかもしれないからだ。飛び抜けた感性や技術より、安全に運営してくれるBさんが求められる。

 つまり、シニア世代のベテランクリエイターが重宝される仕事もあるのだ。そういった仕事を手堅く請けているBさん。しかし、受注が途切れないためにはどんなことに気をつけているのだろうか?

ネットワークづくりが大切ですね。いざという時に相談できる仲間をたくさん持っておくことです。また、受注した仕事の納期は絶対に守ること仲間に発注した場合はその支払いも絶対に守ることです。当たり前のことですけどね」(Bさん)

 つまり、約束を守ることにつきるということだ。取引先から支払いが遅れた時も、Bさんは仲間への支払いは必ず守る。「そこで苦労したこともありました」と笑う。痛い経験もしたBさんは、受注額が50万円を超える依頼については必ず契約書か業務請負依頼書を交わすようにしているという。やはり、お金にまつわることはしっかり書類で確認しておくと言うことだ。

 Bさんの言葉には参考になる部分が多い。やはり、自分のスキルを客観的に捉えて、請けた仕事をきっちりとこなしていけば、そうかんたんに仕事はなくなったりはしないのである。

 Bさんの話を整理する。

・どんな仕事にも、経験が豊かで安心して任せられる人を重視する領域がある。そこはシニアでも請けられる。

・そんな仕事の場を探して、請けたなら納期厳守で進める。また自分が発注した場合その支払いとその期限も厳守する。

・常にネットワークを広げておく。

・きっちり契約書を交わす。

 当たり前のことのようだが、このすべてをきっちりこなしてきたBさんに、今だ仕事が途切れないことは事実だ。


人によって幸せの基準はいろいろ違うと思いますが、「仕事が楽しい」というのはかなり幸せの中でも大切なところにあると思います。どうしたら仕事が楽しくなるかを毎日考えてきた小さな会社の代表です。